表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生負け組のスローライフ  作者: 雪那 由多


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/957

似た者同士、と言うのだろうか 1

 金曜日の朝、早朝と言う時間に飯田さんは三日間に渡り俺の胃袋を刺激する飯テロをしたい放題して東京へと去って行った。

 毎度静かすぎるこの山での生活に飯田さんの作るごはんとのお別れは寂しく思う物だが金曜日はそれなりに俺も忙しい。毎日のルーティンはこの日のみ週末の株の変動を見る為に張り付く予定になっている。

 ほんのりと藍を含みだした空に鶏小屋の扉を開けておく。

 ちょっと今日は早くない?なんてコッコッコッと文句言いながらも小屋から出て雑草をついばみに行くのを見送りながら飼料もたしておく。ここは標高も高く寒いせいかスズメは来ないけど他の鳥はやってくる。

 主に肉食系の奴らが。

 勿論#それら__肉食系__#は地上からもやってくる。ヘビにイタチにイノシシにシカにクマ。クマには勝てる気はしないもそこらへんにいる情報は貰っている。勿論クマ糞を見付けたら猟友会に連絡。皆さんクマ害に困ってもいるし俺も対策の設備投資はちゃんとしている。近寄ってこないようにと俺以外足を踏み入れない裏山にはトラップも一杯仕掛けてある。一応賢く警戒心の強いあいつらは危険を察知して近寄っても来ない。対策として置くだけで効果は抜群だ。

 そんな中簡単に朝食を用意して帰って行った飯田さんのご飯を食べる。まだ薄暗い中食べるのは頭も胃袋も眠っているが体に熱源を与えて思考を起こそうとするもそのままベットまで一直線。

 トイレにも行ったしこれでよく寝れると二度寝をする至福の時間に突入だ。

 そして三時間後。

 目覚ましのアラームの音で二度寝から目を覚ます。

 スマホには飯田さんが無事着いたと言う簡単なメッセージと来週欲しい物は何かあれば言う様にとの毎度の言葉。

 欲しい物は通販で幾らでも手に入るので、なかなか手に入れにくいような物。

 ポテトチップスとか?

 ポテチを通販なんて恥ずかしいじゃん。うちの畑のジャガイモをスライスして揚げて塩を振る。作り放題食べ放題だが

「それじゃないんだ」

 油のぎと付くあの袋を破いて指先を汚し、小さなカスをまき散らしながら指に着いた塩をちゅっと舐めるあのチープな味。いつも大量に買うには買うが、あっという間なのが寂しい。

 とりあえずこの件はしばらく保留にして軽く朝ごはんの残りを温める。

 作り置きのおかずをレンジで温めて予約で焚けたごはんで食べる。

 食後の緑茶を持ってパソコン机のサイドテーブルに置き顔を洗って気合を入れる。

 サイドテーブルには緑茶の他にはポットと急須も設置。

 ほかには菓子パンやおにぎりを並べて準備はできた。

 九時と共に動き出す市場を眺めて手持ちの株の変動を見る。動かすつもりのない株はそのままに、そろそろ見切りを付けようかと思っている株の動向を見る。

 別のパソコンでググりながら情報を収集。ありがたい事に今時SNSで社員のアカウントから情報がダダ漏れだ。注意するのは人間関係の出来てない記事。こういう人間がいる場所は何らかの情報が探り放題でその友人関係からも見つけ出す。勿論こんな一人の社員で株価が変動するわけではないが、そう言う人間を見逃す会社には何らかの問題がある、もしくは生まれようとしている。警戒するには十分すぎる懸案で皆さん無防備すぎですよと合計六台のPCを俺は眺めていた。

 喉が渇けばお茶を飲み、思考が鈍くなれば食事をする。

 エネルギーを補給しながら集中すれば気が付けば市場は終わりの時間になっていた。こわばった体をほぐすように椅子から転げ落ちて床の上でゴロンと転がる。

 カップのお茶もポットのお茶も空っぽで這う体で台所まで移動してウォーターサーバーの水をコップで二杯飲む。そのあと飯田さんがピザ釜で焼いてくれたパウンドケーキを一本ペロリと食べた所でやっと一息ついて水と漬物を持って縁側まで移動。

 漬物のきゅうりをポリポリ食べながらぼんやりと烏骨鶏がうろつく庭を眺める。

 金曜日は朝からずっと同じ姿勢で六つのモニターを監視する不自然な体制に終わった頃は抜け殻のように何もやる気が起きない。

 どうしようか悩んだ株を結果的にはいいタイミングで売れた。個人株主が動かせる程度なんてたかが知れたものだが、俺が売った直後から下落の一途を辿り始めるのを見てギリギリ間に合ったと胸を撫で下ろしたのがほんの一時間前。

 そこにたどり着くまでの決断がとにかく判断難しく、女子社員のSNSの呟きが決定となった。

 今夜経理の彼氏とデートする事になってるのにまた残業、決算前なのわかってるけど残業続きすぎ!

 決算前なら残業は当然かもしれないが、そこまで怒る事じゃないだろう。だとしたら?

 友人関係を辿ればやっぱりポロッと言う友人がいた。

 上層部が不良債権隠してるのが社内でバレて会社が潰れるんじゃないかと言う事を笑っている内容。

 友達やめたほうがいいぞと心の中で突っ込みながら売却を決行。

 悪いが株でしか知らない会社よりもこのど田舎での生活をなりたてる方が俺には大切だ。マシュマロの様なおいし……カワイイ烏骨鶏の餌代がかかってるのだ。害獣対策の電気網の電気代もかかってるのだ。リア充の明日なんて知った事じゃない。

 きゅうりを食べ尽くして水を飲み、五右衛門風呂にゆったりと浸かろうかと薪を取りに行こうとやっと人間らしさを取り戻した俺は立ち上がろうとすれば


ランランラーン、ランランラーン……


 軽快な着信音にスマホを見ればもう五年の付き合いになる人からの電話だった。

 一瞬出ようか迷ったものの、ここにいるのがバレている以上居留守は使えない。むしろ一息つくタイミングを見てからの連絡だから#性質__タチ__#が悪いと繋げば

「綾人ー、久しぶり!

 悪いんだけど、お風呂準備してくれるー?先生今日お泊まりしたいなー」

「高山先生、学校から家が近いんだから家に帰って下さい」

「はうっ!綾人は相変わらずつれないなあ。

 おまえの家からの絶景を眺める五右衛門風呂とフレンチのシェフのご飯!

 これを見逃せる奴がいれば俺に教えろって言うもんだよ」

「そんなもんでつられるのは先生だけだよ」

 呆れて言うも

「まあまあ、とりあえずビールとポテチで良いだろ?」

 忘れた所でポテチの誘惑。

 あの塩気を舌の上に思い出せば落ちるのは一瞬だった。

「塩とコンソメでよろしく」

「了解!まだ学校だから一時間ぐらいしたら行くな」

「山道には気を付けろよ」

 通話終了。

 毎度の事ながら俺の高校三年の担任は相変わらず調子が良く、十二歳年上とは思えない先生は俺の卒業後、良い友人として俺の心配を続けてくれている。

「ったく、俺の面倒より嫁の一人でも見つけてこいよ」

 盛大に祝ってやるのにとぶつぶつ文句を言いながら烏骨鶏達に小屋に早く戻れとみかんの木の下の腐葉土を掘り変えして集めたカナブンの幼虫を餌小屋に撒けば、ものすごい勢いで集まる烏骨鶏の悪食を感心するのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ