変化のない俺の日常 1
リクエストがありましたのでアルファポリス様より転載になります。
アルファポリス様で先行して掲載しておりますがあしからず。
俺、吉野綾人は高校を卒業して四年、気づけば俺は二十二歳になっていた。高校卒業後は進学もせず、就職もせず立派な引きこもり生活を満喫している。
いや、一つだけ訂正をしておく。
引きこもりといえど部屋の中に閉じこもってるわけでもなく、車に乗って買い物にも行くアクティブ系引きこもりだ。
理由は高校卒業する少し前に他界したバアちゃんがいなくなって以来今この家には俺一人しか住んでおらず、自分のことは最低限自分でこなさなくてはいけないからだ。
業界第一位のスーパーの宅配サービスからはエリア外と言われ、新規の個人宅配はお断りという協同組合さんにそっぽむかれてしまった以上自分の食い扶持は自分で調達しなくてはならず、高校の時の原チャリから進化した自動車は中古のSUV系の車種だ。山道雪道悪路を走ってもらわないといけない上に道路に飛び出した雑草や木々の枝が容赦なく車体を傷つけて行く。新車を買う気にならない理由ナンバーワンだ。
そんな俺のルーティンはこうだ。
朝目が覚めたら山水を引き込んだ水場で顔を洗って冷蔵庫へ向かう。
料理が出来なかった頃は大量の冷凍食品やレトルトをまとめ買いしていたが、ゴミを出す事のめんどくささに自炊をする事に目覚めた俺は雨戸を開ければ一面に広がる見渡す限りの農耕地の一角を耕して最低限の新鮮な野菜を自分で調達していた。
土地だけは山も含めて呆れるほど広い俺の家はそれでもSUVの新車さえも買えないくらいに価値がない超田舎のポツンと一軒家。
そんなどこまでも我が家の土地の畑からキュウリとナスをもいでザルに入れて水場に置く。
流れる山水に冷やされてきゅうりは塩だけで十分だし、ナスはザルからあげて半分に切ってフライパンで焼く。
プロパンガスもあるが驚安のディスカウントショップで手に入れた電気コンロを愛用している。
プロパンは無くなったらガス屋さんに電話して買いなおさないと使えないけど電気なら電線が切れない限りお金さえ払えば使いたい放題だ。まあ、一人暮らしの電気料金なんて知れた物だが。
と言うか、いわゆる古民家の我が家は土間に台所があって、わざわざ履き物を履くのがめんどくさいの一言に尽きる。なので土間の台所の一部屋を改造して電気コンロを設置した、それだけだけどね。
そんな台所で炊けたばかりのご飯ときゅうりに味噌をお湯で溶いただけの汁に焼きナスを半分投入。ニヤリと笑みが浮かんでしまう朝食の食卓の光景にテレビをつけてご飯をかき込むように食す。
焼きなすの味噌汁も食す。
切らずに皿に一本の姿のままのきゅうりに塩を振って食す。
焼きナスには生姜醤油でつるんと食す。
変化球で味噌でも食す。
うまいからもう一本追加で食す。
「ごちそうさん」
最後に麦茶をすすりながら庭に降りてトマトをもいで簡単に洗って食後のデザートにする。
デザートと言うからには甘いことが重要。小学生の時にトマトが食べれなかった俺にバアちゃんはトマトに砂糖をかけると言う暴挙に出てくれて、小学生の俺はそれを疑問に思うことなく口にして以来トマトが好きになった。
いや、今では塩でもマヨネーズでも食べれるようになったし、なにもなくても食べることができるようになった。
つまり、丸のままじゅるじゅると手をべたべたにしながら食べるのだった。
成長とはこう言うことだと俺は思う。