2019年10月20日 ソフト化の日だし少女たちもソフトな設定になろう系
2019年10月20日
柔らかな発想で、これまでと違ったことをやってみるという「ソフト化」を広く呼びかける日。それがソフト化の日である。
今日という日には五人少女の日常もまたソフト化するというものなのだ。
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ブラウスとリボンとスカート。身軽な服装を身にまとった少女が長いブロンドの髪を靡かせて、長い廊下を早足に歩いていた。窓の向こうからは掛け声が、そして別の教室からは楽器の音が響き渡っている。
その少女は使われていない部活動準備室の一つの前に立つと、その扉をガラ!と勢いよく開いた。
留音「やっほーっ!みんな!今日も来たぜ~っ!」
真凛「あっ!留音ちゃん☆いらっしゃーいっ」
午後ののどかな日差し指す放課後の事。迎え入れられたブロンドヘアの少女の名は留音。運動部から引っ張りだこの彼女だが、彼女は特定の部活動には所属していない。助っ人として活躍しながらも、なにもない日はここ"まいにちニコニコ活動部"に顔を出しているのだ。
衣玖「ふ、ふんっ、なによっ、部員でもないくせに今日も来てっ!べ、別に私は来て欲しいなんて思ったことないんだからね!」
出迎えたのは真凛と衣玖。ニコニコ活動部の部長と副部長をしている女の子たちである。衣玖は留音が入ってきたのを確認したとき、一瞬だけ嬉しそうな表情を浮かべたが、すぐに視線をそらすなりそう言った。
留音「え~なんだよ~、衣玖は連れねーなー。あたしはみんなに会うの楽しみだったんだけどな~?」
留音は屈託のない笑顔で衣玖に迫り、頭に頬をこすり付けながら衣玖の小さな体を抱き寄せている。それに衣玖は顔を真赤にしながら「やっ、やめれーっ!」と引き離そうとしている。
真凛「あはは☆本当に二人は仲が良いですねぇ~♪」
衣玖「よ、良くないわよ!腐れ縁なだけなんだから!」
留音「素直じゃないんだよなー、あははは」
にぎやかな三人の部室に、更にもう一人の生徒が入ってくる。
西香「ふぅ、今日も疲れましたわ。真凛さん、今日のおやつはなんですの?じゃなかった、なぁに?」
彼女の名前は西香。とても可愛い女の子だ。口調と雰囲気を変えながらそう言うと、みんなから迎え入れられた。
真凛「あっ、西香ちゃんだ♪今日はクッキーを焼いてきたんだぁーっ☆」
西香「やった♡真凛ちゃんのクッキー大好き~っ♡♡」
西香はるんるんに部室へ入り、宝石でも見るかのように真凛の作ったクッキーを見て目を煌めかせている。その前に飲み物も準備しよう、と、部室に備え付けの小さな冷蔵庫に向かった。
留音「あ、西香、今日は午前いなかったじゃん。また撮影だったのかー?」
留音はそのクッキーを頬張りながら尋ねる。
西香「あ、うん。ドラマの撮影がロケで朝のシーンだったの。だから今日は3時起きだったんだぁ」
冷蔵庫から紙パックのミルクティーを取り出すと紙コップに注ぎ出す西香。他に誰かいる?と視線を配ると留音が手を上げたので、彼女の分も用意した。留音は「さんきゅ♪」と受け取る。
衣玖「すごいわね……女優と学生の二足のわらじって大変そうなのに、よく頑張ってるわよね」
西香「そんなことないよぉ。でも……ほら、ロングランのシリーズドラマでしょ?わたくしの……あっ、私の役ってお嬢様だから、みんなからお嬢様だって思われてる事のほうが大変だよぉ」
そんな理由もあって、西香は他の生徒に対してお嬢様口調を崩さない。誰にでも「ですわ」とか「わたくし」なんて口調で喋っていて、他のみんなからは本物のお嬢様として認知されている。なんでも昔、普通に喋ろうとしたらみんなが悲しそうな表情を浮かべたのだという。みんなの夢を崩さないためにお嬢様口調で喋ることにしたのだが、そんな学校生活の中で本当の自分でいられるのはこのニコニコ活動部の中でだけなのだ。
留音「本物の西香はこんなに素朴系なのになぁー」
西香「えへへ、困っちゃうね~。はぁー真凛ちゃんのクッキーおいしいーっ♡」
西香は自分の頬を撫でながら満面の笑みでクッキーを堪能している。
真凛「やった~っ♪また作ってきますね☆」
そうしてみんなで美味しい美味しいと言いながら真凛のクッキーをいくつか食べていると、衣玖が提案する。
衣玖「ねぇ、ところで今日の活動は何をする?一日一ニコは私達のモットーでしょ?」
それに対して真凛が何かを思い出したようだ。ぽんと手を叩いて言った。
真凛「あっ!そういえば今日隣のクラスに転校生が来たんですよ!外国人の、すっごーく可愛い女の子でした!でも日本での生活は初めてみたいで、色々困ってるかも知れませんよぉ~!」
西香「あぁ、私も見たぁ。すっごく可愛い子だったねぇ。まだ学校に残ってるかな?困ってるかもしれないし、探しに行ってみよっか―!」
留音「あの外国人の子か。見慣れないからよく覚えてるよ。たしか先生に連れられて職員室に行ってたのと、あたしの友達が部に誘いたいって言ってたから今頃勧誘うけてるんじゃないかな。あたしが来る時にみたばっかりだからまだ校舎にはいると思うよ」
真凛「よぉーっし!じゃあ今日はその子をニコニコにしましょー♪街を案内してあげたり、こっちでのわからないことについて教えてあげたり~っ☆」
衣玖「いいわね。ルーも一緒……えと、ついでだしルーも一緒に行くでしょ?せ、せっかく来たんだし」
衣玖は慌てて言い繕うように留音に聞く。
留音「おっ、あたしも活動していいの?部員じゃないよ?」
真凛「当然ですよぉ、みんなで行きましょ~っ」
西香「それにしてもあの子、名前何ていうんだろ~。外国人だとわからないね~」
真凛「確か……Anoちゃん……Annちゃんって言ったかなぁ」
留音「へぇー。じゃあ日本風に……あの子ちゃんにしようぜ!」
衣玖「……どんな子なのかしらね。いい子だといいな……」
留音「はは、衣玖は初対面の人怖いもんな?」
衣玖「そ、そんな事ないわよ!ちょっと緊張するだけで……っ」
真凛「きっといい子ですよっ!とってもいい子そうでしたもん!」
こうして彼女たち、ニコニコ活動部とその子の出会いは始まるのであった。




