2019年10月17日 貯蓄の日とおまけのカラオケ
2019年10月17日
西香「はぁぁ……」
昼を過ぎ、外出から帰ってきた西香がリビングのソファで小さくないため息を尽きながら手に持った1万円2枚をペラペラと遊ばせている。
一方、隣で据え置きゲームを楽しんでいる衣玖は暗転画面に映り混んだ西香を見ては居るのだが、声はかけないで無視を続けていた。
西香「はぁぁぁぁー……」
衣玖「……」
これ見よがしに大きなため息をする西香だが、衣玖は構わずにコントローラーのボタンをパチパチと小気味よく押して無視を続けた。
西香「衣玖さん!はぁあぁ!!!」
衣玖「それはもうため息じゃないわよ」
鬱陶しいな、と仕方なく反応する衣玖。
衣玖「で、何?」
西香「わたくしには深い悩みがあるんですの。きっと誰も考えたことの無いような深い悩みが」
衣玖「へぇ、それは大変そうね。頑張って、応援してるわ」
西香「そのようなつまらなそうな態度を取ってなぁなぁにこの話題を終わらせようとする魂胆はわかりますが、でも衣玖さん、きっとあなたですら考えたこともないような悩みですわよ。あなたでは考え付きもしない悩みのはずですわ……」
そこで衣玖は小さく手の動きを一瞬緩めて考えた。自分の思慮が西香以下なわけがあるまい。衣玖は一応聞いて、このIQ3億の頭脳で一瞬で答えを出してわからせてやるか、と「何?」と聞き返した。
西香「わたくし……さっきATMでお金を引き出してきました。残高にある超一杯のお金を引き出して……思ったのです。どうしてお金は引き出すと減るんでしょう……」
衣玖「それは……えっ」
西香「お金は引き出しても減らなければいいのに。そう思いませんか?今日は貯蓄の日です。お金を大事にしようという日ですわ。でも貯蓄していたお金を引き出すと貯蓄額は少なくなっていってしまう。これは貯蓄の日の理念に反すると思うのです。今日くらい貯蓄を減らさなくてもお金を引き出せても良いとは思いませんか?」
衣玖「……(西香……完全に私の思考の上を行っている……恐ろしい)」
西香「わたくしはどうしても先日発売されたVtuberチップスが欲しかったんですの。とても最高レアが当たりにくいということでしたので、全て入手してそのコスパの悪さから手を出さなかった衣玖さんに自慢してやろうと思いまして」
衣玖「……」
西香「でもいざお金を引き出すと、超一杯あった貯蓄額が減ってしまうのを見て……わたくしちょっとした無情さを悟ったんですのよ。お金って、減るんだなって。減らないほうが良いとは思いませんか?」
衣玖「(どうしよう、意味がわからない)」
西香「おまけにぶいちゅっばチップスはほとんど売り切れで買えませんでしたし。あ、何故か入っていたリアルな謎の馬のカードが被ったので、はい。差し上げますわよ」
衣玖「いらない……」
西香「まぁ、それはいいんですの。でも実際問題考えて見てくださいな。お金は減るよりも減らないほうが良いってみんな知っているはずですわよね?なのにどうして減ってしまうのが普通と、それがまかり通る世の中なのでしょうか。みんな違う方が良いと思っているはずなのに、どうして世の中はそう変わっていかないのでしょう……?」
衣玖「(何から説明すれば良いのかがわからない)」
西香「お金は大事。その大前提はあります。でも使わなければ生きていけない……でも減るのも嫌です。となれば、使っても減らないようになれば全て解決します。どうでしょう衣玖さん、なんとかなりませんか?」
衣玖「まぁ将来的にはそうなる可能性もあるけど……インカム制度とかで……でも西香、そうなると一人が莫大な資産を持つことも無くなるから、そもそも誰も貯蓄をほとんど持てなくなるかもしれないわよ」
西香「それは微妙なところですわね。そこをなんとか、わたくしの資産だけは増えていくのに、使っても減らないという状態にはならないのでしょうか……」
衣玖「ならないわね」
西香「貯蓄の日……なんて残酷な真実を突きつけてくる記念日なんでしょう……やっぱりわたくしの深すぎる悩みは普段IQ3億だのと言ってる割に実際にはそう役に立たない衣玖さんじゃ解決出来ませんわね……」
衣玖「(負けた気分になる必要はない……負けた気分になる必要はないんだ……)」
おまけの2本目 ハイパーショートネタ【留音ちゃん真凛ちゃん、カラオケに行く】
留音「いや~カラオケなんて久しぶりだよ!」
真凛「今日はカラオケ文化の日ですからねぇっ♪何歌いますかぁっ?」
留音「あたしはもう決めてるんだよ~(ポチポチ)」
音源『ゆゆゆーえすえぃ!ゆゆゆーえすえぃ!(ズンチキズンチキズンチキ)』
真凛「わぁー、前に流行ったやつだ~」
留音「一回歌いたかったんだよなー。♪♪♪」
サビ突入。
留音「かーもんべいべー!」
店員「おまたせしましたぁードリンクですー」
留音「あめ!ぃ……か……(ふんふんふんふんははん……)」
店員「ごゆっくりどうぞー」
真凛「(……あぁっ、店員さんのタイミング……)」
留音「かーもんべいべー……ふふふん……これやっぱり後ででいいかな」
真凛「そ、そうですねっ、仕切り直しましょう、何か別のを二人で歌いましょうかぁー」
留音「そうしよ……」




