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2019年10月10日 銭湯の日だしみんなでお風呂に入り行こう

2019年10月10日


 街の銭湯の女湯、脱衣場にて、五人はそれぞれのペースで服を脱いでいる。ペースが最も遅いのは留音(るね)衣玖(いく)だ。


留音(るね)「銭湯の日だからってさぁ……別に現地に来る必要はなかったんじゃないのかぁ……?」


真凛(まりん)「え~!どうしてですかぁ!きっとみんなで入るの楽しいですよ☆」


衣玖(いく)「……はぁ。気が乗らないわ……どうして他人とお風呂に入らなきゃならないの……」


西香(さいか)衣玖(いく)さんが嫌そうにしてるのはわかりますわ、その貧相な体では劣等感を感じてしまうのでしょう。でも留音(るね)さんもあまり乗り気じゃないのはよくわかりませんわね。ジムなんかで公共のお風呂には入り慣れてらっしゃらないの?」


 衣玖(いく)は図星だったのだろう、プスッと拗ねたような表情を浮かべている。留音(るね)の方はまぁジムと同じか、と諦めて下着も取り去り始めてはいるのだが。


留音(るね)「いやぁ、あるにはあるけど、あたしは個室で一人で汗流したらすぐ上がっちゃうし……あんまり人と入ろうって思わないからなぁ」


真凛(まりん)「いいじゃないですか☆今日は西香(さいか)さんが貸し切りにしてくれたみたいですし!」


あの子「(〃・ロ・〃)」


西香(さいか)「そりゃそうですわよ。この子もいるのに。男湯は完全閉鎖、コバエ型ドローンの一匹ですら見逃さない万全の警備体制の元でわたくしたちは銭湯の日を実践しますわよ」


あの子「(^ー^;)」


 みんなの来たここは古き良き銭湯という感じで、シャワーが川の字のように並んでおり、その向こうに二つの隣り合った大きな浴槽が見えている。一つは単なるお湯の一般的なお風呂だがジャグジー付き。もう一つは濁ったような色の、何かの効能があるらしい湯が溜められているようだ。


 それぞれ体をシャワーで流し、それぞれのタイミングで湯に向かう。大雑把に体を洗った留音(るね)が先行して濁り湯の方へ向かっていった。マナー上、タオルは湯船に触れないようにして、まずは足から少しずつ。


留音(るね)「うぉっ、結構あっちぃな」


 留音(るね)は一歩で少し慣れたのか、楽しそうに温泉の湯を堪能している。家で入る湯よりも少し水温は高めで、みんな少し心構えがないと浸かりきれない程度に熱かった。お湯に浸かりに行く留音(るね)の声を聞きながら、髪を洗っている衣玖(いく)西香(さいか)が頭の中で何か考えているようだ。


衣玖(いく)「(浮くの?浮くって聞いたことあるけど……浮くの?)」


西香(さいか)「(どんな風に浮くのでしょうか……わたくしだって多少は……でもあの人のは……)」


 あの子と一緒に体を流している真凛(まりん)留音(るね)のくびれた体をちらりと見てぼんやり考える。


真凛(まりん)「(留音(るね)さん、本当に綺麗な体してるなぁ……)」


 それから衣玖(いく)西香(さいか)も濁り湯の温泉に向かい、先に入っていた留音(るね)の半身を確認した。


西香(さいか)「(……あれ?あんまり浮いてませんわね……)」


衣玖(いく)「(あ、そっか、筋肉があると保つ力があるから少ししか浮かないのか……)」


留音(るね)「お、おい……あんまりじろじろみんなよ……」


 指摘され、ツーンと視線を逸らした西香(さいか)衣玖(いく)留音(るね)は照れたようにタオルを頭の上に乗せて、浴槽の縁に背中を預け、気持ちよさそうにリラックスした声を上げた。


 そこに真凛(まりん)とあの子も合流して、二人はすぐとなりのジャグジーに浸かるために体を隠していたタオルを外した時だった。


西香(さいか)「うっ……!」


 西香(さいか)は鼻に異常を感じたのか、手で付近を覆い隠した。


留音(るね)「うわっはっ!西香(さいか)が鼻血出してるー!!ぷっはー!お前あの子の裸見て興奮したな?!」


 だっはっはと笑う留音(るね)の口にも鉄の味がした。


衣玖(いく)「ルー、人のこと言えないわよ」


留音(るね)「ぎゃー!やっべぇ!めっちゃ出てる!」


 留音(るね)の鼻からとろとろと赤いのが流れていた。


西香(さいか)「っく……まさか視界に入れただけで……止まらないですわ!」


衣玖(いく)「体冷ましてきなさい。お湯の熱さで血管が拡張してるのよ。それにこの子の体を意識しすぎ」


あの子「(〃。 。〃)」


留音(るね)「てったーい!」


 バチャバチャとお湯から出ていき、留音(るね)西香(さいか)は脱衣所に出ていった。


真凛(まりん)「全くもう~、何をやっているんでしょうねぇ」


衣玖(いく)「ホントね。えちえちで鼻血ブーなんて医学的には起こらないのよ。でも熱いお湯に浸かっていればそういうこともあるのかも……それに時に人体というのは説明できない現象を、うっ!」


 ぶしゃ!衣玖(いく)の鼻から赤い鮮血が飛び散る。衣玖(いく)も話しながらあの子の体を見てしまったのだ。それも真凛(まりん)とあの子は濁り湯ではなく、通常の透明なお湯のジャグジー浴槽で、揺れる水面の奥にしっかり体を確認出来てしまったようだ。


衣玖(いく)「うぅっ……時に人体は……説明を……ごめん、先にあがるわ……」


真凛(まりん)「も~っ、皆さん人を魂で見ないからですよ!私みたいに魂で人を見れば……うっ!!」


 真凛(まりん)があの子の裸でお湯に浸かる魂を認識した瞬間、真凛(まりん)の鼻からツツツと鼻血が流れていた。


真凛(まりん)「し、しまった、魂まで美しすぎて……ご、ごめんなさい、ちょっと体を冷ましてきます……」


あの子「(๑>_<๑)」


 こうして一人になってしまったあの子は少し寂しそうにジャグジーの泡が水面から飛び出て消えていくゴボゴボという音に包まれて、奥壁に大きく描かれた赤富士の絵を眺めている。気持ちいいけど、一人でだったら来なかったかな、なんて思いながら。だが真凛(まりん)が出て行った後、すぐにみんなは戻ってくる。


衣玖(いく)「お水用意!タオルを濡らして頭に着用せよ!総員!しっかり絞れよ!!」


留音(るね)「イエスマム!」


西香(さいか)「それ何かの真似ですの?」


あの子「(๑º△º๑)」


 そうして頭にタオルを巻き、その一部を鼻に当てながら四人はあの子を中心にジャグジーの湯に浸かった。


西香(さいか)「銭湯で頭に乗せるタオルって、実は意味があったんだそうですのよ」


衣玖(いく)「そうよ。水を絞って頭を覆うことでのぼせ防止の効果があったの。あなたの魅力にのぼせ上がった私達に最も必要な答えはこの銭湯という環境の中で既に用意されていたのよ」


真凛(まりん)「あなたを一人にするわけには行きませんからね☆」


留音(るね)「銭湯の醍醐味ってのはみんなで入ることだしなー」


あの子「(๑ᵔ⌔ᵔ๑)」


 コミ湯ニケーション♡

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