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2019年9月26日 天使なあの子の誕生日

2019年9月26日


『ハッピー!!バースデー!!!』


 盛大に鳴り響く4つのクラッカー。中央の席にはみんなが大好きなあの子が三角の帽子をかぶらされてちょこんと座っていた。嬉しそうな照れ笑いに頬を染めて、みんなのことを見ている。


 普段はその神々しさからろくに描写されず、発言や感情を顔文字での表現に押し止めるしかない程の存在であるこの子だが、今日は誕生日だ。だが描写量はいつもと大差なく、特に詳しい描写は無しである。


留音(るね)「誕生日おめでとう!今日は世界で一番大切な記念日だぜ!」


衣玖「そうね。なんて言ったってこの子の誕生日なんだもの」


 その子は本当に嬉しそうで、目の前に振る舞われた真凛(まりん)の作ったご馳走に目をキラキラ輝かせている。名前すら描写されないが。


真凛(まりん)「今日はすっごーく奮発しました!最高級食材ばっかりですよぉ!スポンサーは西香(さいか)さんです!」


 あの子は驚いて、そんなの悪いよというようなことを伝えるのだが、それには西香が普段は見せないようなとても優しい瞳を向けて言った。


西香(さいか)「何を言っているんですか。あなたの誕生日に頑張らないでいつお金を使うんですの?わたくしたちに全て任せなさいな。いつもお世話になっているお返しの気持ちなんですから」


 守銭奴の西香(さいか)ですら、この子にはお金に糸目をつけないのだ。


留音(るね)「ホントにさ、お前がいなかったらあたしたちはいまここにいないだろうからな」


真凛(まりん)「そうですよぉ。あなたがいるからこそ破壊した地球を元に戻すことを忘れないで済んでいるところもあるくらいなので……そう考えると、あなたがいるおかげで地球の皆さんは今生きているって言えるのかもですよぉ☆」


衣玖(いく)「それだけじゃないわ。言葉に表せないほどの慈愛を全人類に振りまき、真に世界をニコニコで溢れさせる事ができる唯一の存在であるにも関わらず、あなたはそれに甘んじないで誰にでも優しくて……世界の宝よ!」


 でも描写されない。というか出来ない。


西香(さいか)「そうですわね……わたくしが認める唯一の天上人。わたくしの友達、いえ!親友にふさわしいのはあなただけですわ!」


 そんな風に言われ、あの子は「自分のほうがみんなに助けられていて、自分にとってみんなこそ本当に大事な存在である」というようなことを伝える。実際にどんな言葉を使ったのかという描写は感動的すぎて不可能だ、これも描写出来ない。


留音(るね)「うっ……ぐす、やめろよ……今日はあたしの誕生日じゃないんだから……そんなに喜ばすなよ……」


真凛(まりん)「そうですよぉっ……西香(さいか)さんも泣きすぎですぅー!ふえーん!」


西香(さいか)「ゔぃえええええん!!うぅっ!!ぐす!おーーーん!あーーんあーーん!!だっで!うれじくでぇぇぇ」


衣玖(いく)「すんすん、ぐすっ、もう、ばかね、みんな……この子を困らせちゃうでしょ。せっかくこの子の誕生日なんだから……私達が嬉しくなってどうするのよ……」


留音(るね)「仕方ないだろ、この子の言葉一つ一つがあたしらにとっては最高のプレゼントみたいなものなんだから……」


 でも描写されない。


真凛(まりん)「じゃあケーキを切り分けますね。涙が落ちないようにしないといけませんねっ……」


 そうして切り分けられたケーキをみんなで食べて、今日のこの家のみんなに笑顔は絶えなかったという。それにあの子の笑顔に世界が答えたかのように、全世界で紛争が止まり、悲しい事件は全て解決し、生きとし生けるもの全ての悩みがすっかり解消されたのだという。

 

 今日という日が核兵器の全面的廃絶の日という記念日が定められているのも、きっとこの子の存在が地球の総意にそうさせたためである。


 今日はそんなこの子の誕生日。


 でもやっぱり描写されない。名前すら。


 だがこの子はそんなことを気にしない。この子の愛はただ世界に平和あれ、みんなにニコニコあれと願うだけなのだ。自分の存在があろうがなかろうが、世界に笑顔が溢れることを祈るのみなのだから。

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