2019年9月24日 掃除の日 大魔王まりん その2
2019年9月24日
荒れ果てた地球に立つのは四人の美少女達。目の前にはとても掃除の行き届いた魔王城がそびえ立ち、靴の泥を落として入るためのパッドの置かれた扉は四人を迎え入れるように開いていた。その扉を前に、彼女たちは思い思いの言葉を連ねる。
留音「完全にデジャヴじゃねぇかこれ……」
西香「真凛さん、また大魔王になっちゃったんですのね……」
あの子「(ノ_<。)」
衣玖「……(ぷいっ)」
そうして入城した彼女たちの前に、大層なマントを着用し、そびえ立つように出迎える影があった。それは見慣れた背丈で、綺麗な赤い髪を靡かせて、在りし日の声で言う。「待っていました、皆さん……」と。
留音「真凛……!っていう空気で行くべきなのかこれは」
西香「数日前に見たんですよねこれ。新鮮味ゼロですわ。ネタ切れなのかしら」
衣玖「(ぷくー)」
そう、そこにいたのはかつての仲間、真凛であったのだ。真凛は憂いを帯びた瞳で全員を見下ろしていたが、衣玖を確認して雰囲気を変えた。
真凛「あー!衣玖さんもいたー!ちゃんとお部屋のお掃除したんですかぁ!」
西香「留音さん、何だか雰囲気が」
留音「あぁ。まぁ様子を見よう」
衣玖「したわよ(ぷいっ)」
珍しく見た目相応の子供のように不貞腐れたような衣玖に、留音も西香もめんどくさいことになっていそうだなと感じ始めた。
真凛「ホントですかぁ?!どうせほとんどそのままなんでしょう!」
衣玖「当然でしょ」
真凛「ほらー!いい加減ちゃんとお片付けしてくださいー!」
衣玖「やっ」
真凛「んんんん゛!」
西香「どうやら真凛さんのお掃除癖が爆発してるみたいですわよ」
留音「あぁ……今日は掃除の日で、みんなで掃除しようって話になってたけど……まぁ衣玖は絶望的に掃除出来ないからなぁ……」
やれやれとそう呟いた留音に、隣にいる衣玖は食って掛かる。
衣玖「はぁっ?!あのね、私の部屋はあれで完璧な配置なの。一見ガチャガチャしてるように見えるかも知れないけど使うものの場所は把握してるしすごく効率的にアクセス出来るようにしてるの!」
真凛「でもあんなに一杯物があったら何か失くしちゃいますよぉ!だから私がちゃんと片付けるって言ってるじゃないですかぁ!」
衣玖「や!やーだ!!場所バラバラになってわからなくなる!!」
留音「拗ねてんなぁ」
繰り広げられる舌戦を覚めた目で見守っている留音と西香。
真凛「だから衣玖さんも一緒にお掃除すればいいじゃないですかー!」
衣玖「今が最大限効率的なのにどうしてそんな事しなきゃならないのって!この会話さっきもしたでしょ!」
真凛「あー!日めくり始めたの衣玖さんなのに日めくりネタを軽んじてますー!掃除の日にお掃除をしないでどうするんですかぁ!」
衣玖「必要が無いことはしないでもいいでしょ!っていうか真凛が掃除したいだけじゃない!私の部屋は汚れてないんだってば!」
真凛「よ ご れ て ま すぅ~!」
西香「珍しいですわね、この二人が喧嘩してるの」
留音「喧嘩ねぇ……」
衣玖「大体どうして自分の部屋でキレイに見せるような事しないといけないの?!自分が一番使いやすい配置であることこそ一番大事でしょ!」
真凛「そんなことありません!整った部屋は気持ちが前向きになりますし、お部屋の綺麗さは自分の心の表れだって言いますよ!衣玖さんの心の中はガチャガチャのワチャワチャなんですかぁ!?」
衣玖「そうかもね?!それで何が悪いの!?人間の本質は混沌よ!私の部屋はあるべき人間性の顕現よ!」
留音「何いってんだ衣玖は」
西香「掃除できないことを棚に上げて随分偉そうですわよね」
留音「まぁ……でもどっちかって言うとお前も出来ねぇだろ」
西香「せっかくやってくれる人がいるのにどうして自分でやらなきゃならないんですの?」
真凛「うーっ……お掃除の日なのにぃ……してくれない人がいます~……」
衣玖「……言っておくけどね、私だって必要だと思った時にはするわよ?衛生面にまでの影響は出たこと無いし、ただ片付けないということは使用率の高いものが上に、近くに来るの。一見して生じるカオスの中に確かに秩序はあるのよ。これはまさに人間性の現れだわ。あなたの言いたいこともわかるけど、私には私の考えがあるのよ」
真凛「う……んー……そっかぁ……」
真凛は目に見えて落ち込んでいる。
西香「あれっ……普通に聞けば正しいことを言っているはずの真凛さんが負けそうですわよ」
留音「まぁ衣玖の言いたいこともわかるしな……冷静に聞けばそこそこダメ人間の言葉なんだけどさ……」
衣玖「だからさ、真凛。今日は帰って一緒にスプラでもやりましょう」
西香「あれって確かイメージ的にはペンキ撒き散らして汚すゲームですわよね?」
衣玖「違うわ。自陣の色で塗りつぶすって感覚は几帳面な人ほど快感が大きいはずよ。感覚的には掃除でキレイにするのと近い部分があるわ。真凛もスプラ好きよね?」
真凛「好きですぅ……」
衣玖「じゃあ帰ってスプラをしましょう。定期的にやりたくなるのよね。真凛の掃除の熱にやられて久しぶりに遊びたくなったわ」
留音「あーぁ結局丸め込んじゃったよ。掃除の日なのに掃除しねーやつが勝っちゃってるんだけど……」
西香「衣玖さんの屁理屈はえげつないですからね」
それから家に帰って……。
真凛「準備できましたぁー☆ナワバリバトルでいいですよねぇっ?」
衣玖「うん。……あれ、ソフトどこにやったかしら」
真凛「スプラですか?そこにパッケージありますよ?」
衣玖「……ヴァルハラが入ってた。おかしいわね。ヴァルハラのパッケージにはマリオデで……マリオデとスマブラ行ったり来たりしてるうちにFE買ったからFEのパッケの中?……あれっ違う……ってなると……あっ、マリテニの中……じゃないわね。……あ、あれぇ?」
真凛「……衣玖さん?^^」
衣玖「待って待って。あるのよ、この前遊んだんだもの。前に遊んだのはフェスがあった時で、あれはたしか7月の終わりで……それが終わった頃にFEに入って……FEのソフトはゼルダの中に入ってるから……で直前にアストラルチェインがあって……」
真凛「やっぱりちゃんとお掃除してくださぁーーーい!!!」
衣玖「……ごめんなさい」