表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/414

2019年9月22日 奴隷解放宣言公布日なのでロックアイドルになる

2019年9月22日


 奴隷とは人間でありながら所有物とされる者の事。その人達には権利や自由を認められることはない。


 当然ながら人間の可能性と生来の自由を無視した奴隷制は、唾棄すべき概念である。


 これはいつのことだったか。かつての衣玖(いく)は奴隷という概念について深く悩んでいた。何故なら制度はなくなろうとも、人は常に何かの奴隷であることを強いられているからだ。


 逆らいきれない主従は確かに存在する。それはお金であったり、社会であったり、国であったり、何かの仕組みそのものがそうである。鎖が見えないだけに質が悪い。なまじ小さな自由が与えられているからこそ盲目にさせられてしまう。


 一体何があれば人は奴隷でいることに気づき、そして心から自由を謳歌出来るのだろうか。


 衣玖(いく)は考えた。そもそも人は、真に自由になりえるのだろうか。


 欲望に忠実であることが自由となれば、それは他者からの自由を奪うことにもなりかねない。線引は難しい。


衣玖(いく)「くっ!!!一体どうすればいいの!?!?」


 衣玖(いく)は行き場のない思考を机にぶつけながら嘆いた。これこそが彼女ら、五人の少女たちの持つ優しさなのかもしれない。


 だがまだ答えは出ない。衣玖(いく)の持つその3億飛んで99.3333333....というIQを持ってしても尚、人間の持つべき自由について明確な解を導き出せないのだ。


 しかしその時、どこからか衣玖(いく)の耳に音楽が飛び込んできた。


『デッデッデ・デーン!デッデッデ・デェーン!!』(運命)


衣玖(いく)「こ、これはっ……ロックの曲!?」


 本当はバリバリのクラシックだったが音楽を受け取る感性は利き手に委ねるべきである。だから衣玖(いく)は今ロックを受け取ったのだ。それは天啓の如き電流を彼女の脳に走らせた。


衣玖(いく)「そうよ……ロックよ……自由を体現するために必要な精神はここにあった……!ロックンロール!!!」


 そう。反逆と自由の精神を乗せた人間賛歌、ロック。人は確かに自由ではいられないかも知れない。たくさんの制約があって、狭い世界で生きている……でもその心はいつだって自由なのだ。それを表す歌こそがロック。人に足りない精神性の体現。


衣玖(いく)「みんなに届けなきゃならない。この心を……!でもそのためには一体どうしたらいいの……?!」


 そんな悩みを持った衣玖(いく)の目に飛び込んできたのは。


『ピークタイム時にはたくさんの来場客が訪れ、ひと夏の賑わいを……』


衣玖(いく)「こ、これは……そうか!アイドルよ!」


 目に入ったのはニュース番組だった。その内容は重要じゃない。ピーク(忙しい)の反対はアイドル(待機)である……即座にそれを連想した衣玖(いく)は天啓を得たかのようにアイドルを目指すことを心に決めた。


 こうして衣玖(いく)はみんなの奴隷として甘んじないための反逆の精神、そしてそこから羽ばたくための自由の意志を伝えるため、アイドルを目指すことに決めたのだ。


 そう、これこそがロックアイドル、ファイブガールズのセンター、衣玖(いく)の物語である。


衣玖(いく)「というわけでみんな!アイドルをするわよ!」


留音(るね)「えーっ!どうしよー!あたし恥ずかしいよ―!みんなはどうする!?」


西香(さいか)「わたくしは存在がもうアイドルを越えてますので」


真凛(まりん)「すいませーん、ちょっとお料理で忙しいので後ででいいですかー?」


衣玖(いく)「わかった!みんな乗り気じゃないみたいだし、グループ名はファイブガールズだけど私一人でやるわ!それはそれでロック!ファイブなのに一人!それ超ロック!!!」


留音(るね)「えっ!あ、あたしは別にやりたくないわけじゃ……っ」


 ファイブガールズ、ファーストシングル「奴隷解放☆ろっくんろーる」インストアーズナウ。(嘘)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ