2019年9月20日 今日から動物愛護週間 大魔王まりん
2019年9月20日
荒れ果てた地球に立つのは四人の美少女達。目の前にはとても掃除の行き届いた魔王城がそびえ立ち、靴の泥を落として入るためのパッドの置かれた扉は四人を迎え入れるように開いていた。その扉を前に、彼女たちは思い思いの言葉を連ねる。
留音「ついにあいつと決着をつける時が来たんだな……」
衣玖「えぇ……ここで終わらましょう」
西香「……っく。どうしてこんな事になってしまったんですの……!」
あの子「(ノ_<。)」
そうして入城した彼女たちの前に、大層なマントを着用し、そびえ立つように出迎える影があった。それは見慣れた背丈で、綺麗な赤い髪を靡かせて、在りし日の声で言う。「待っていました、皆さん……」と。
留音「真凛……!」
そう、そこにいたのはかつての仲間、真凛であったのだ。真凛は憂いを帯びた瞳で全員を見下ろしている。
西香「どうして……どうしてなんですのっ!真凛さん!!こんな風に地球を荒廃させて……全然あなたらしくありませんわよ!」
その言葉に真凛は静かに視線を逸らす。
衣玖「真凛。あなたには地球を破壊し、そして再構築する力がある……にも関わらず、ただ荒廃を選んだ……私達に止めてほしかったのよね……?」
あの子「(。>ㅿ<。)」
衣玖とあの子の心配に、真凛は細々とした声でこんな事を語り始めた。
真凛「皆さん……もうそれなりに長いこと、一緒に過ごしてきましたね……日めくりはもう2ヶ月です……でもね皆さん。こうやって毎日の記念日なんかを調べている内に……私は人間の本質に絶望してしまったんですよ」
留音「一体何があったんだ……?"いつもニコニコ"の最先端を行くのがお前だろう!?何がお前をそんな風に……!」
真凛「最初に気になったのは……そう、セプテンバーバレンタインでしょうか……」
西香「意外と最近ですわよ。真凛さんの絶望、スパンが非常に短いですわ……!」
真凛「女性が男性を振ることが出来る記念日って……一体なんですか!!女性の自由意志は?!何故それが記念日になるんですか!女性はいつでも振れるのに!」
留音「それあたしが言ったやつだ……でも真凛もそんなに思いつめて考えていたなんて……!」
真凛「いえ……ただイチャモンで引用しただけです……!本当に絶望したのは今日の事ですよ……!」
衣玖「じゃあ今日のなんらかの記念日について絶望し、その流れでこの状況を作り出しているのね?」
真凛「そうですよ!インスタント絶望ですよ!でも人類に絶望するには十分……!何故なら世界は!!今日から"動物愛護週間"だから!!」
四人はお互いを見合った。一体どういう意味なのか。
西香「よく意味がわかりません……続きをどうぞ真凛さん……!」
真凛「今日から一週間、動物との絆を深めるために世界は動物愛護週間に入ります……一体何故ですかぁ!!」
真凛は激情に身を任せ、ドン!と大きな音を立てた。いつでも地球を破壊できる真凛の怒りには全員が少しだけたじろぐ。
留音「すまん!情報が何一つ進歩してないからもう少し詳しく頼む!今の所一体何故ですかぁ!ってなってるのこっちだから!」
その留音の問に、人間への絶望から感極まってしまっているのだろう真凛は、鼻をすすりながら答えた。
真凛「ぐすっ、つまりですね?動物の愛護週間を決めないといけない……そんな人間の浅ましさに絶望したんです!いつだって動物は愛護すればいいじゃないですか!犬さんも猫さんも、みんな毎日可愛がるものでしょう!?どうしてそんな風に時期を決めるんですか!それはきっと、動物を愛護しない人間がいるからです!!」
西香「かつて害虫の駆除方法について嬉々として語っていた方の発言とは思えませんわね……!」
衣玖「真凛。あなたの言わんとしている事はわかるけど……別に逆説的な意味は無くて、愛護週間以外に愛護しちゃいけないってわけじゃないのよ?」
真凛「でも……だったらどうしてこんな風に記念週間を設ける必要があるんですかぁ……いつでも愛護しているなら、必要無いはずなのに!」
西香「多分啓発の意を持って制定されているんだと思いますが……」
真凛「でも当たり前のことだったらわざわざ記念にしませんよねっ」
衣玖「そうでもないわよ、歩く事を記念にした日もあるし、生きるために良い呼吸しようって記念日もあるし……」
真凛「……そうなんですかぁ?」
衣玖「うん」
真凛「そうなんですね……じゃあ地球は元に戻しますぅ……」
留音「真凛、わかってくれたか……これで元の平和な世界に戻るんだな……」
あの子「٩(ᗜˋ*)و」
こうして世界の平和は守られた。ありがとう美少女たち。
西香「真凛さん、魚とかめちゃくちゃ楽しそうに捌きますわよね?」
真凛「だって美味しいじゃないですかぁ……」
留音「帰ってワンちゃん猫ちゃんの動画見ような」




