2019年9月17日 キュートナ―の日
2019年9月17日
留音「ねぇー!いいじゃんかー!やろうー?!やろーよー!」
衣玖「もー!可愛いお洋服だけで我慢してってば!」
可愛いドレスのようなフリフリのついたワンピースを着た留音がバタバタと衣玖にひっつき、何かをせがんでいる様子を見た西香が呆れたように真凛に尋ねた。
西香「はぁ……留音さん、どうしたんですの?」
真凛「それが……ほら、少し前にキュートの日ってやったじゃないですかぁ」
西香「あぁ、それなりに酷かった日ですわね」
真凛「はいぃ……で、なんでも今日もキュートな日、なんですって。それで今日もキュートキュートしたいって……」
西香「じゃあいつもキュートなわたくしには関係ありませんわね」
真凛と西香は目の前で行われている二人の会話をとりあえず見守ることにした。
衣玖「もう!うるさいってば!可愛いお洋服作ってあげたでしょ!そもそもキュートナーの日は『キュートな要素を持つ"オトナ"』の日ってことなの!美"少女"の関わらない日よ!」
留音「でもキュートな日もあるじゃん!?キュートじゃんかー!キュートしたいー!」
西香「留音さんのキャラが崩壊してますわね」
真凛「首とかをキューッとすれば黙るんじゃないですかぁ☆」
衣玖「はぁぁぁぁ……(深め)わかったわ。前に開発したあれを出すか……」
留音「おぉっ!何かあるのかっ?!もっとキュート出来るものが!」
席を立ち、自身の研究室から何かを取ってきた衣玖がそれを留音の前に掲げた。
留音「おい、なんだそれ……」
衣玖「はい。取り出したるは五円玉ウィズ毛糸……はい、よく見てね。あなたはだんだん眠くなる~……そして次に目覚めた時、超女の子らしいキャピ可愛い性格になーる……」
留音「おいなんだよー!こんなので何もなんねぇよ!ってか可愛い性格ってなんだ!?あたしがそんな古すぎる催眠術にかかるバカだと思っ……ぐー」
西香「ぐー」
真凛「おっ?」
真凛の隣で寝息を立てた者がいた。、
衣玖「ワンツースィッ!(パン!)」
留音「はっ……」
西香「う、ううん……?」
真凛「あのぅ衣玖さん、約一名、おバカさんが追加されている気がします~」
衣玖「そうみたいね。とりあえず様子を見ましょう」
そして催眠にかかった二人はやがて目を合わせ、「きゃ~!」とはしゃぐようなテンションで近寄った。
西香「ふわぁ~!留音ちゃん、どうしたの~っ、その格好~!げきかわ~!」
留音「西香ちゃーん!ひゃー!今日も可愛い~!」
西香「えぇーっ!そんな事無いよぉー!留音ちゃんもお洋服すごーく似合ってて、可愛いよぉ~!」
真凛「あのぅ衣玖さん、あの二人見てると何故か寒気がするんですけどぉ」
衣玖「ともかく、様子を見ましょう。やや想定外ではあるのだけど」
留音「ありがと~っ!!でも西香ちゃんの服の方が可愛いよ~!あたし今日はちょっとダサいの着てるんだぁ。っていうか西香ちゃんも、いつ見てもすっごく綺麗な肌で羨ましいよぉ~!化粧水とか何使ってるのぉー!?」
ちなみに西香の服装はなんの意図もないただの家着で、留音のように可愛さを意識した衣服は着ていない。
衣玖「ダサいだとぉ……?私が用意したお洋服を……」
西香「え~!大したことしてないよぅ!全然全然!化粧水も6000円くらいのだよぉ~!」
留音「えっすっごい良いやつだー!いいなぁ~!」
西香「そんな事無いよ~!失敗したと思ってるもん!もっと安いのでも変わんない変わんない!」
真凛「衣玖さん、これは一体どんな状況なんですか?」
衣玖「わからないけど……催眠にはしっかりかかっているところを見ると……きっと女の子らしい性格っていうのを体現してるのよ……歪んでるけど……」
留音「じゃあいろんなの使い慣れてるんだ!いいな~!今度一緒に買い物行こ~!あたしに合いそうなの選んでよぉ!」
西香「あ、行こ~!でも留音ちゃんだったら何でも合いそう~!肌健康的だし~!」
留音「ホント!?ありがとう~!じゃあ今度連絡するね!」
西香「うんっ、りょうか~い!」
それから二人はキャピキャピテンションのまま少し距離を取ると、同時にため息をつき、また同時に相手に聞こえないような小声で「ムカつく」と一言放っていた。
真凛「……何かが終わりましたけど」
衣玖「うん……私はこういう状況に疎いからピンとこないんだけど……なんていうか、すごく黒いものを見たような気がするわね」
真凛「キュートな日の日めくり、終わっちゃいますねぇ」
衣玖「ホント、可愛さってどうしたら生まれるんでしょうね……」




