2019年7月24日 劇画の日
2019年7月24日
登場人物:衣玖 留音
留音「衣玖……今日は何の日か知っているか。」
留音は腕を組み、陽の光がうっすらと入り込む部屋の中で佇みながらそう言った。すると衣玖は一秒半程度考えた後にこう言った。
衣玖「……1959年の冷戦中のモスクワでアメリカ博覧会を開いてニキータ・フルシチョフとリチャード・ニクソンが資本主義と共産主義の利点を激しい口調で討論するというガッチガチの対立をキッチンの展示場で行ったというちょっと事実だけ見ればちょっとだけ可愛らしくもありつつ、恐ろしい冷戦構造を感じさせる事件があった日よね……まさかルーがそんな話を始めるとは思わなかったわ」
そんな事を深刻そうに言った衣玖に留音は顔に強い影を作る。それを険しい表情で目を閉じて聞いていた留音がゆっくりと目を開けて言う。
留音「なんだそれは。全然知らない。何を言っているんだお前は。そうじゃない。あたしの雰囲気を見ろ。こういう感じに合わせてくれ。」
衣玖「……つまり、セリフの最後に句点をつけている、ということ?普段は省略してるのに」「あつけるのね。はい。。」
衣玖はとりあえず句点を二つつけることにした。それに対して留音は眼力を百倍に増し、厳かな声で反論する。
留音「違う。文章的なところ言っちゃうとメタになっちゃうからやめろ。そういうことじゃない。句点はあくまで演出の一環にすぎない。あたしの感じをみてくれ。超、影、やばいだろ。」
衣玖「よくわからないんだけど。あ、来年の今日東京オリンピック開幕だからかしこまってるの?。。。」
留音「あ!そうなの!?もうあと1年!?楽しみじゃん!じゃなかった。やめろ衣玖、盛り上げさせないでくれ。あたしのこういう感じに合わせてくれ。」
一瞬ぱぁっと表情から影を消し去った留音だが、その言葉の中で再び顔に影を戻した。衣玖はもう面倒だという表情で「はぁ」とため息をついている。
留音「なんだ、だめか。今日は劇画の日なんだよ。そういう雰囲気出してるんだよ。大人っぽくて影が濃ゆい感じ出てるだろ。出してるんだよ。」
もう逆光までして腕組みを見せている留音。
衣玖「ルー」
留音「なんだ……。」
衣玖「ここでは文字だけよ。ルーがどれだけ影マシマシで眉毛を太くして顔の凹凸を深くしても誰にもわからないわよ」
留音「……そうだった。張り切ってたのに。誰かなんか絵書いてくれないかな。」
衣玖「切実にお待ちしたいわよね」
留音「それよりまずはブクマだよな」
衣玖「……切実にお待ちしたいわよね……」
彼女たちはまだ知らない。本当にこのしばらく後で絵が届いてしまうことを。