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2019年9月10日 キュートの日

2019年9月10日


留音(るね)「なぁ衣玖、あたしたちは日めくりって名目でその日に制定された記念日とか取り上げて、あるいは実践したりしているけど……」


 留音(るね)はもじもじとしながらそう問いかけた。


衣玖(いく)「何?」


留音(るね)「それがもし仮に特定のアイドルのための記念日で、そのアイドルグループが既に解散している場合でも、その記念日を取り上げる事を許してくれるのか……?」


衣玖(いく)「まぁ、記念日に制定されてるならいいんじゃない?」


留音(るね)「そ、そうか…。じゃあみんなっ、聞いてくれ!今日はなんと……キュートの日だ!……なのです!」


 留音(るね)は突然声音を変え、衣玖(いく)をビクッとさせた。


真凛(まりん)「へぇーっ」


西香(さいか)「キュートとはまた可愛らしくなりそうな記念日ですわね」


衣玖(いく)「えっ……?(引)なにそれ?なのですなにそれ?」


留音(るね)「あのね、あのね、もともとはアイドルグループに℃-uteっていうの人たちがいたんだけどね、もう解散しちゃって、℃-uteキュートの日だけが残ってるのですぅっ!」


 頑張って舌足らずな言葉を演出する留音(るね)衣玖(いく)は表情を固めている。


衣玖(いく)「ちょっと怖い(ドン引)。なんなのその喋り方鳥肌が立つからやめてもらえないかしら」


留音(るね)「な、なんだよぅ……キュートの日だから可愛く行こうと思って頑張っただけなのだっ?」


衣玖(いく)「うわっ……すごい、背中がぼゃーってなった……ぶゃーって」


留音(るね)「だからみんなでぇ、とってもきゃわわい~感じでっ、今日は日めくりたいのですのだ~っ♡♡」


 めげない留音(るね)は両手をグーにして顎下に添えて首を左右にキュンキュンと振りながらそう言った。


真凛(まりん)「すごーい、留音(るね)さんの情緒が不安定だ~っ」


西香(さいか)「わたくしは通常状態で可愛さ係数カンストしてますので、きゃわわい~感じの意識はしませんわよ」


衣玖(いく)「はぁ……もう仕方ないわね。私が始めた日めくりだし、私はちゃんとキュートの日やってあげる。ちょっと待ってて、小説だから見えないけどちゃんとキュートな服に着替えてくるから」


留音(るね)「わぁーい♡衣玖(いく)しゃんがきゃわたんちてくれたらぁ、一人力だおだお~っ♡」


 立ち去った衣玖(いく)は聞かずに済んだが、留音(るね)の言葉に西香(さいか)真凛(まりん)は苦い表情を浮かべていた。


 それから数分後……。


真凛(まりん)「わっ!!衣玖(いく)さん"の服"かわいい―!」


 そこにはゴスロリ衣装と派手な髪色に染め、顔も白塗りに☆や♡マークを書き入れたピエロのようなメイクで現れた。手には釘バットを持っている。これには留音(るね)も目に埋め込んでいた☆マークをかき消して嫌々そうにその姿を見て言った。


留音(るね)「お前……」


衣玖(いく)「キャーっハッハッハァ!可愛いの具現!!ゴ・ス・ロ・リ・ベイビー!!!ひゃー!」


西香(さいか)「あぁ……これ久しぶりに見ましたわ……」


真凛(まりん)「日めくりでは初めてですねぇ~、このメタルだか、パンクだかのライブ行く時の攻めてる衣玖(いく)さん」


留音(るね)「ちょ、ちょとちょとぉ、イッちゃぁん、きゃわゆい感じでって言ったのだぁっ?」


衣玖(いく)「きゃわゆいジャスティス!!!ひゃーっは!!!」


西香(さいか)「うーん、IQ3ですわね」


衣玖(いく)「これこそが可愛さの頂点!!ゴスロリピエロパンキーフォーム!!」


 あまりにも留音(るね)の方向性と衣玖(いく)の方向性が噛み合わない。なんとかキャピキャピ感を維持していた留音(るね)だったが、衣玖(いく)がヘッドバンギングを決め始めた時点でブチギレた。


留音(るね)「だから……なんでお前は可愛いって事をそういう粉々に砕けたような感じにしちゃうんだよ!!?可愛くねぇよ!お前のそれはジョーカーとかの隣にいるやつだからな?!」


 それに対し、自分の可愛さを否定された衣玖(いく)も対抗するように声を荒げる。


衣玖(いく)「可愛いでしょ!?クインちゃんほど可愛い悪役いないでしょ?!っていうかこれクインちゃんじゃないし!ゴスロリはオリジナルですー!」


真凛(まりん)「始まりましたね……」


西香(さいか)「まぁこの人達には土台無理な話ですわ、キュートの日なんて」


留音(るね)「お前のはキュートの日に合ってない!!キュートってのは丸い、柔らかい、ほわほわって感じのを言うんだよ!お前のはツンツン!ギンギン!ガジガジ!!」


衣玖(いく)「可愛いわよ!ギャップを見て!ゴスロリとピエロでパンクなのよ!?ギャップ萌えの極みでしょ?!しかも考えて?私、天才よ?天才が裏でこういう格好をするというギャップこそ可愛いでしょ!?」


留音(るね)「およそ天才らしからねぇよ!」


 声を荒げる留音(るね)衣玖(いく)の裏で真凛(まりん)が手をパンと叩いた。


真凛(まりん)「あそっかぁ☆」


西香(さいか)「どうしました?」


真凛(まりん)「ほら、おバカな子って可愛いって事にもなるじゃないですかぁ」


西香(さいか)「はぁ」


真凛(まりん)「だからお二人共、今日はとってもおバカなんですねぇ~☆」


西香(さいか)「残念ながらあれはデフォルトの知能ですわよ」


衣玖(いく)「可愛いのー!ゴスロリとパンクとピエロは可愛いのー!」


留音(るね)「可愛くねぇよ!釘バットはなんなんだよ?!精神を病んだ猟奇殺人犯の出で立ちだろうが!そんなんだったら……」


衣玖(いく)「何よ!」


留音(るね)「普段のお前の方が可愛いわ!!」


衣玖(いく)「そんなわッ!……それはっ……あ、ありがとう……」


留音(るね)「あっ……いや……別にそういうんじゃなくて……」


真凛(まりん)「あれ?空気が変わりましたよ」


西香(さいか)「なんですのこれ」


真凛(まりん)「さぁ……でもちょっと可愛いかもぉ……」


衣玖(いく)「る、ルーも別に、変な口調にならなくてもいいんじゃない……?いつもどおりで……」


留音(るね)「そうかな……じゃ、じゃあやっぱり、あたしらはいつもどおりが最強って事で……」


 今日は9と10でキュートの日。

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