2022年1月1日 異世界召喚
2022年1月1日
どのタイミングで気を失ったのか。留音、真凛、イリスの三人が目を覚ましたのはそれぞれが先程までいた場所ではない。
12月31日の午後11時59分、カウントダウンの最後の瞬間には全員が自分たちの場所で過ごしていたはずだ。
年が変わって、気づいたら明らかに違う場所にいる。自分たちの持っていた文明を感じない青々とした大地、気温は明らかに冬ではなく、爽やかな秋風が流れる過ごしやすい気候をしている。
留音と真凛は近くにいた。おそらく同じ部屋からここに来たからだろう。そこで最初に見たのはたくさんの人々だった。かなりひらけた場所であるここに、見渡す限りの人がいる。それもどうやら無作為に選ばれた、というような状況ではなく、どうやら顔見知りたちが集まっているように見えた。
だがその中の誰一人、今の状況を認識しているとは思えない。留音らがスムーズにイリスと合流出来たのは、イリスが魔法を使って上空に飛び上がっていくのが見えたからだ。どうやら状況を把握しようと空から偵察しようとしていたようだ。
イリスを呼び寄せた留音と真凛だが、イリスはすでにこの場所と状況を把握していたようだ、合流早々にこう言った。
イリス「ここには魔素が満ちているわ。地球ではないわね。私の世界とも違う。でも確実に言えるのは……」
留音「……ここは、異世界……」
1月1日、この3人は異世界に召喚されたらしい。
真凛「でもどうしてでしょう……わたしと留音さんは家で新年のカウントダウンを見ていて……」
イリス「私だってそうよ。実家に帰って家族と魔……まぁ、そっちで言うテレビみたいなものを見ていたところだったのに」
何をしてここに来たのか。トラックにハネられたわけでもない。死ぬようなこともなかった。それに不思議なのは…
留音「異世界に来た……のもわからんが、でもそれにしたって人の数が多すぎないか? の割に近くにいたはずの西香もあの子もいない。衣玖は自分の部屋で過ごしてたから離れてるのか……?」
イリス「さっき私の家族とか聖美もアンジーもあんたらもサーチしたけどね。どうやら私達以外にいるのはあそこの普通の人たちだけみたいね」
真凛「それは奇妙ですね……それもなんていうか……来ている人たち、その……」
留音「あぁ……かなりパーリーピーポーだよな……異世界召喚されるタイプには見えない」
そう、こうして3人が話している間にもその一般人たちは「どこだろここー?」「ってかめっちゃあったけーw冬じゃないみてーw」「うぇーい! 新年おめでとうー!」という空気で話している。
イリス「状況を整理する必要がありそうね。きっと何かの理由があるはずよ」
留音「衣玖がいないのがな……」
真凛「ぱぱっと正解を教えてくれそうですよね……」
留音「こういうの好きそうだしな……」
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一方その頃、五人少女宅にて
西香「衣玖さんっ、衣玖さん!」
西香は二階にある衣玖の部屋に続く階段の途中で声を荒げた。階段を登りきってノックをしたりとかそういうのが面倒なので呼びつけているのだ。
衣玖「うるさいな、何?」
衣玖はヘッドフォンを片方だけ外し、ダボッとした格好で部屋から顔を覗かせている。
西香「大変ですわ! 新年を迎えた瞬間に不思議な事が…」
西香の隣には不安げな表情のあの子も立っている。そして西香の言葉を聞いて衣玖は部屋の時計に目を向ける。そしてこう考えた。「あ、新年迎えてた」
衣玖「どうしたの?」
西香「消えたんですのよ! 留音さんと真凛さんが目の前で!」
衣玖「はぁそう」
西香「あの方たちおバカだから……新年を迎える瞬間に地球にいないのやろうぜとか言い出して……今年最後の瞬間にジャンプしたらそれを最後に!」
衣玖「楽しんでるわね」
まー大丈夫でしょ。そう言って衣玖は扉をパタンと閉めた。西香も西香で年越し海老天を隣のこの子と山分け出来るからいいやとリビングに戻っていった。その後なんやかんやで三人とも自分の場所に戻ったそうだ。あけおめ。




