2019年8月26日 君たちの名は。
2019年8月26日
カーテンの向こうから差し込んでくる陽光は心地よく、留音の意識を覚醒させた。
留音「ふぁあ……おはよ」
留音は手元にあったふわふわのぬいぐるみの頭をつんつん突っついて朝の挨拶をし、軽く抱き寄せてキスをする。みんなには秘密の留音の日課である。
留音「あら、起きたのね、おはようルー」
次いで、どこからか声がした。口調と雰囲気的には同居人の衣玖なのだが。
留音「な、なんだぁ?」
見回した部屋の中に衣玖はいない。確かに声がしたにも関わらず、その姿はどこにもなかった。
留音「ここよここ。私があなたになってるのよ」
留音「うわ!あたしが衣玖の言葉喋ってる!なんじゃこりゃ!?」
なんと衣玖の声は留音の口から発せられていたのだ。
留音「ふぁああー……あ、みなさんおはようございます~」
留音「お!?真凛の言葉まで喋ってるぞ!?」
留音「やかましいですわね……わたくしまだ寝たい時間なのに……」
留音「も、もしかしてあたしのぬいぐるみ遊びが新たな人格を作ったのか?!」
発言者のルビがとても大変な事になっている理由を、留音は全くわからないでいる。それはそうだろう、こうなった原因は留音は知らないのだ。
留音「あなたがみんなに隠れてぬいぐるみチュッチュしてることは何の関係もないわよ。っていうか原因私だし」
留音「お前またなんか変なもん作ったのか?!」
留音「君の名は○を見てたら入れ替わり装置って自作出来ないかなと思って、まぁ作れたんだけどね。なんか面白く出来ないかなと思って」
留音「あ~もう。それで入れ替わってるんですのぉ?」
留音「入れ替わるっていうか、複合体になってますよぉ~☆」
留音「(あれ?でも待ってください……これ実質わたくしもファンアートもらったことになるのでは?)」
留音は自分の体の様子を確かめるように立ち上がる。どうやら意識的に自分を動かすことは出来るようだった。
留音「ってかなんで今頃君の名○?」
留音「日めくりネタの肥やしに調べてたらちょうど2016年の今日が公開日だったのよ。記念にいいかなと思って」
留音「わぁ~!留音さんの体軽いです~!でも肩こりそ~」
自分の意思で動く事ができる留音だったが、それは中に入り込んだ真凛も同様だったらしい、立ち上がった際の感覚の違いにはしゃいだ真凛が飛び跳ねながらそう言った。次いで西香も鬱陶しそうに視線を自分の真下に向ける。
留音「あらほんと。さすが脳筋ですわね、どこまででも走れそうなくらい体は軽いですが……鬱陶しいですわね、これ」
胸にあるものをチェックする西香に、留音は片手で制御する。
留音「おわーっ!勝手に触んじゃねぇ!セクハラで訴えるぞ!?」
その時だった。
留音(??)「デュフッ」
留音「ん?あれ?今誰かイケてる笑い方した?」
留音「えっ?留音さんじゃないんですかぁ?」
留音「あ?あたしはデュフなんて笑い方しないぞ?」
留音の流した冷や汗を全員が感じ取っている。
留音「……ねぇ衣玖さん、その入れ替わり装置って、どういう機能なんですの?」
留音「意識を移し替える感じね。でも移す対象座標を寝ているルーだけに絞ったから、多分近くにいた人の意識が全部ルーに入ってるんじゃない?」
留音「君の名○。はそういう感じじゃないぞ?!」
留音(??)「デュフフフ……目覚めたら美少女の体になっていたでござるよ~wwしかも美少女の気配たくさんでワロリンヌwww」
なんと、どちら様かもこの騒動に巻き込まれていたのだ。
留音「わっ!虫がいますよぉ!」
留音(??)「突然の虫扱いで草wwむしろご褒美ww」
留音「あら。わたくしのファンの落第者の方かしら」
留音(??)「お嬢様wwデラカワユスファイアースペシャルwwwヌw」
留音「お、おいいい!!!知らないヤツ入ってきてんじゃねぇか!!衣玖!!!世界観が崩壊するから早くどっかやって!!」
留音は手をワキワキしながら何者かの得体の知れない得体の知れなさに得体の知れない気持ちを抱いているようだ。
留音「もうわかったわよ。あの、見知らぬ人、す、すみません。ここはあの、そういう感じじゃないので、よかったら出ていってもらえませんか……」
留音「腰が低いですわね」
留音「交渉でなんとかなるもんなのか……?」
留音(??)「おっほ、ロリの気配wもりもりカワヨwwお嬢さん方、君たちの名は?wwなんちゃっデュフw」
留音「あ、私は衣玖ですっ」
留音「律儀に答えてんじゃねぇよ!ってかなんで緊張してんの?!速やかに出ていってもらってくんない!?あたしファンアートもらった次の日なんだが?!」
留音(??)「冷たいでござるなぁ~wでももう一心同体でござるよ~wこれからずっとみんなで一緒にデュっ!!(ぶしゃっ)」
留音「あっ……ご、ごめんなさい、なんかちょっとヤだなって思ったら……無意識にぶしゃってしちゃって……^^;」
留音「あら?何かドロっとした液体の感覚が……」
留音(??)「……」
見知らぬ人はソウルの残滓となって消えた。
留音「ちょっと、あたしの中でなんか事件起きてないか?!」
留音「大丈夫です^^留音さんの赤黒い人間性が1増えただけですから^^」
留音「もうー、せっかく君○名は。的展開のチャンスだったのに。もう一生相手の名前知れないわよ」
留音「有象無象ですわよ、知る必要ないですわ」
留音「オーラは虫けらクラスでしたよぉ~」
留音「あたしファンアートもらった次の日なんだが……なんだこれ……」
今日は留音ちゃん独壇場の「君の名は。」公開記念日。