2020年8月31日 野菜の日
2020年8月31日
真凛「さぁ皆さん、野菜です。存分にお食べ^^」
野菜の日……厨房を管理する真凛は独裁的に今日を野菜で埋め尽くしているのだ。
今日は朝に具沢山の野菜スープと野菜とじオムレツ、そして昼には野菜しか入っていないラタトゥイユにミネストローネと続き、そこまではまぁ良いものだったのだが。
衣玖「真凛……もうこれは……」
留音「手抜きだ!!!」
晩ご飯に並べられたのは、しっかり時間をかけてカットされた野菜スティックが色とりどりに置かれていた。
真凛「手抜きとはなんですかぁ! こんなにも新鮮な野菜をしっかりスティックにして何種類も用意したのにぃ」
ちなみに西香は野菜全般が嫌いなこともあり、野菜しか振る舞われない今日は餓死した。
留音「新鮮な野菜っていうか、野菜そのものしかないんだけど!?」
真凛「そうですよぉ、野菜は新鮮なものしか使っていません^^」
衣玖「野菜しか使われてないのよ。もっと調理をして……」
真凛「たまには野菜そのものの味を楽しむべきかなーって。野菜の日ですよ?」
留音「そのものすぎるんだよ……せめてディップするソースとか……」
真凛「そんな物があったら野菜を野菜らしく味わうことができなくなっちゃうじゃないですかぁ。ほら、美味しいですよ」
真凛はそう言ってスティックのキュウリを一本とると「パキッ」とみずみずしい音を立ててボリボリ食べている。
衣玖「なんでこんなことに……いくら野菜の日だからって……」
真凛「はぁ美味しいー。毎日野菜スティックを取り入れるのもいいかもしれませんねぇ」
留音「やばいぞ……どうすればいいんだ衣玖、真凛が調理を放棄し始めている……」
衣玖「最近暑さもあるし、日めくりもしないほどだらけきってたしね……料理もしたくないということなのかしら……」
真凛「違いますよぉ。ただ野菜の味に目覚めてしまっただけです^^」
美味しそうにパキパキボリボリと野菜のみずみずしい音を立てながら食べている真凛、そしてあの子もとりあえず食べ始めている。減っていく野菜に、もう仕方がないと手を伸ばそうとした衣玖と留音だったが、その時リビングの扉が開かれた。
西香「ゔあーー!」
餓死していたはずの西香。だが真凛が野菜を食べている音にあの世から帰還したらしい。
留音「お前餓死してたんじゃなかったのか!」
西香「空腹で死にかけてましたわよ!! もうなりふりかまってられますか!! 野菜でも食っちゃりますわ!!!」
そうして西香はテーブルにならんだ野菜スティックを何本かつかみ取り、がぶりと一気に口に入れる。
衣玖「や、野菜嫌いの西香が……」
西香は最初こそ強気の表情だったが、むしゃむしゃと口の中で野菜達が分解されるにつれて難しい表情を作っていく。
真凛「美味しいでしょぉ☆」
西香「うーん……味がしませんわね……まぁ空腹に限り食べれないこともありませんけど……もっとこう、これが野菜だ、という味があれば食べやすいでしょうに」
その発言に真凛は多大なショックを受けた。「野菜スティックに、更に野菜の味を……!」
衣玖「野菜そのものを食べてるんだけど」
しかしこれによって真凛に火がついた。今日は野菜の日。より野菜を野菜らしく食べられる追求をすることこそ今日の日めくりにふさわしい。
真凛「でも一体どうすれば……これ以上野菜を引き立てるなんて……新鮮な野菜なのに……」
留音「……肉でも添えたら?」
真凛「はああああーーー!!!! それです!! 反物質を置くことでより野菜は引き立つ! 今すぐお肉を調理しなきゃ!!! それに焼いたお肉の横に置くには野菜もスティックでは心もとないですね!!」
衣玖「反物質?」
こうして野菜嫌いの西香によって野菜の新境地が開かれたのだ。
西香「あら。普通に晩ご飯作られるんですの? だったらわたくしもこれいらなーい」
今日は野菜の日。でも食事はバランス良く。




