2020年8月17日 留音ちゃんのお誕生日その2
2020年8月17日
8月17日は留音ちゃんの誕生日。日めくり史2回目ながら、年齢は重ねないタイプのお誕生日である。
ここは聖美宅。ミニーズの3人は今日の誕生日を祝うための計画を練っているようだが。
イリス「あいつのお祝いなんてしなくても……」
聖美「えー、でもイリスちゃんに祝ってほしいと思うし……」
アンジー「そうだよ、せっかく1年に一度なんだし、おめでとーって」
イリス「え~……」
どうやらイリスが乗り気ではないようだ。もちろん気恥ずかしいだけなのだが、本人には自覚が無いのか、小学生の男の子のようにイヤイヤしている。
プレゼントは用意していないし、言葉をかけるのもなんだか、ということで、聖美とアンジーは事を勝負に置き換えることにしたり、何かと提案してようやく。
聖美「例えばケーキをどっちが早く食べられるかとかで勝負したり……」
アンジー「相手が喜んだら負けとかにしたら勝てるかも……」
イリス「……あーもうわかったわかった。行けば良いんでしょ。別にお祝いとかじゃなくて、二人についてきたってことにするわよ」
イリスは大きくため息をつくと留音を誕生日会に出ることに決めたようだ。
そしてその日の晩ご飯はマリンの作った特大のケーキとごちそうが振る舞われ、イリスと西香以外からそれぞれプレゼントが送られた。
留音「ありがとうありがとうー、みんな本当に嬉しいよ~!」
衣玖「去年は次元の狭間に幽閉されて大変だったのよね……」
真凛「エンドレスなエイト現象でしたからねぇ……」
西香「思い出したら腹が立ってきました。損害賠償を要求したいのですが」
聖美もアンジーもそれぞれ小包を渡して、留音はキラキラした笑顔で受け取っている。
イリスは何も差し出さず、少しツンとした表情でそれを見守っているが、留音は「来てくれてありがとなー」とイリスの内面をわかっているのかいないのか、そんなことを言って、イリスは「別に祝いに来たわけじゃないし……」と口を尖らせた。
そうして誕生日は慎ましく終わっていき、ミニーズは帰宅するために玄関へ向かう。祝ってくれた留音は見送りに来て。
留音「今日はありがとう。来年もよろしくなー」
聖美もアンジーも楽しそうにまたねーと手を振っているが、やっぱりイリスはツンケンしている。留音はそんなイリスの事もニコニコと送り出したのだが、一番初めに靴を履いて家を出たイリスが急に踵を返して留音の腕を引っ張り、留音の顔を引き寄せた。
聖美「ひゃああ!!!」
聖美はイリスがキスでもするのかと思ったのか奇声をあげている。アンジーも大層驚いたように目を丸くしているが、どうやらイリスの唐突なほっぺにちゅーではないらしい。
顔を引き寄せられ、耳元で何かを言われた留音は眉をハの字に、少し首をかしげて「わかった……?」と頷く。イリスは「ふんっ」と何もなかったように家を出る。
イリス「いいか! 次こそ勝つからね!!」
留音「んー。おやすみー」
イリスは魔法陣を展開するとその中に二人を引っ張り入れ、転移魔法で帰宅していった。
そしてその夜、21時半頃の五人少女宅。全員リビングで電気を消して、窓の外、空を見上げていた。
すると夜空に、不思議な光の軌道が四方八方に広がり始めたのだ。花火のようでていて、明らかに違うもの。空にインクをこぼしたみたいにジワジワと、でもこの地球上にある何にも例えられないような、魅入ってしまう光の芸術がどんどん作られていく。
留音「うわぁあー……」
真凛「きれいですね~! 新しい花火かなぁー!」
衣玖「今日花火大会なんてあった? っていうか花火じゃない気がするけど……なんだろうあれ」
西香「花火って独占できればお金になりそうなのに、ひらけていればどこでも見られるってのはナンセンスですわよね。まぁきれいですけど」
その夜空の中心に誰かがいたことを、留音だけは知っている。




