2020年8月3日 封印されし聖美ディア
2020年8月3日
世界を滅ぼすマノモノ。その名を聖美ディア。
アンジー「どう? イリスちゃん、聖美ちゃんの様子は……」
イリス「えぇ、大丈夫。聖美は封縛のクリスタルの中で静かに眠ってるわ」
魔法界のある洞窟に、聖美ディアは眠っている。彼女の本名は聖美。ここに居る二人の美少女(一人は男の娘だが)の友人である。
イリス「でも……やっぱり少し可哀想っていうか……本当にここまでする必要があるの? 8月に入ったというだけで……」
アンジー「やむを得ないんだ。8月は……ボクだって不本意だよ? でも……世界が滅びてしまう可能性がある以上、こうするしかないんだよ」
イリス「……聖美のためでもあるのよね……」
7月31日の深夜より、聖美はこのクリスタルにて眠っている。意識はただ眠っているのと同じで、苦しさなどは一切ない。ただひと目に触れないところで静かに、長い時間眠りについているのだ。
しかし一体何故こんな事になったのか。それはアンジーがある記念日を見つけてしまったことによるのだ。
それは8月2日でわかるだろう。パンツの日である。
去年の8月2日、五人少女はあろうことかパンツの日で日めくりを行っていた。それを何回も読み返していた聖美が、ここ数日何度も下着の下見をしていたのである。
調査を進めたアンジーはそこで聖美の裏の計画……あぶない下着着用計画なるものをキャッチした。
そう、五人少女達に自分の好みの下着を着させ、それを見せてと迫る作戦である。それが不可能なら今何履いてるのお嬢ちゃんと迫るつもりだったのだ。
そんな事はさせられない……アンジーはイリスに相談し、なんとか8月2日の日めくりが行われないように封印を計画した……のだが、事態はそれだけではなかった。
8月1日。っぱいの日である。聖美はそこにも計画を建てていたことが判明したのだ。
しかもそれは直接的な手段を綿密に計画されており、まず第一に大きさ比べ計画により留音や真凛に自然と触れる作戦を。そして第二に発育計画により衣玖を手篭めにしようとしていたのである。
これを封じるため、7月31日より聖美を封印したのである。8月2日までに封印が解かれることで世界を滅ぼす危険がある聖美ディア……恐ろしい存在なのだ。
イリス「でもアンジー、もう8月3日よ。封印はいつまで……」
アンジー「い、イリスちゃん! ここで日付を言ったらダメ!」
イリスはうかつにも日付を口にしてしまった。封縛のクリスタルに密閉されているといえど、聖美は執念深く五人少女達へのピンクチャンスを狙っている。意識を落とすはずのクリスタルの中でも、そのワードに反応しないわけがなかった。
クリスタルの中から少しずつ亀裂が入っていく。そしてゆっくり聖美が瞳を開け、包まれたクリスタルの内面をドンと叩いてイリスとアンジーを見て言った。
聖美「ふたりとも……今日は何日……? ねぇ……ここから出して……?」
アンジー「き、聖美ちゃん……」
イリス「うわわわ……どうしてっ?! 封縛のクリスタルは幻惑効果も与えるのに……」
聖美「大丈夫……二人には何もしないから……ちょっと用事があるの、お願い出して……?」
アンジー「だ、だめだよ聖美ちゃん! もうぱいの日とパンツの日は終わっちゃったんだ! 聖美ちゃんが行くところなんて無いよ!!」
聖美「8月……3日? ……じゃあいっぺんに日めくりしないとね……! ふふふふふ!」
ドン、ドンとクリスタルを内側から叩く聖美。イリスは「ひええ」と怯えている。
アンジー「やっぱりせめて4日まではお休みしないとダメだった……! い、イリスちゃん、もう一度眠らせられないっ?!」
イリス「やってるのよ! 全然効かないの! 無敵なの聖美!!」
聖美「出して……出して……出して……出して出して出して出して」
亀裂は大きくなっていき、やがて割れると、聖美はひたひたと五人少女達の家に向かって進んでいく。イリスとアンジーが何をしようとも止めることは出来ず、世界は滅びを迎えるかに思えた。がしかし。
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留音「すげぇなぁこの蜜……こんなにとろとろでさ」
今日ははちみつの日。去年はゲームの話だったので、今日ははちみつでも使って料理でも、なんて計らいで真凛が留音とキッチンに立っている。
そして目の前にあるのはなんと巣蜜。蜂が作った巣のままのはちみつを、真凛が商店街で買い物中に行きつけの店のおばあちゃんからもらったらしい。
それをどうしても切ってみたいという留音、おぼつかない手付きで包丁を握って、巣蜜をツンツンついている。
留音「うわぁ……こんなにベタベタになるんだ……指がもうベチャベチャになっちった」
真凛「もうっ、遊ばないでくださいーっ」
留音は巣蜜の外の箱のような部分を取り外す。
留音「うわぁ……中はこんなふうになってるんだ……すっげ……トロトロで……真凛を見てみなよ……」
真凛「確かに凄いですね~……」
留音が包丁を当てるために指で巣蜜を固定し、カステラでも切るみたいに包丁を当てていく。
留音「見てみこれ、触ったところ、奥からすごい溢れてくるみたいに。指もこれ、うわぁすげー糸みたいになるぞっ」
留音は人差し指と親指をくっつけたり離したりしてそこに出来る糸を真凛に見せびらかしている。
真凛「もう、そんなふうに遊ばないでくださいよぉ」
留音「いいじゃん、どうせ食べるんだし。こんなにトロトロなんだぜ? ほら、音もぴちゃぴちゃってなんかいい音する」
聖美「ドゥブフォぁ!!!」
その辺のシーンを目撃した聖美、鼻血を噴出して行動不能。
真凛「あれ? いつからいたんですか?」
留音「聖美じゃん、なんか久しぶりだな。お前も食べる? 巣蜜だぞ巣蜜、すっごい高いんだぞ。真凛が貰ってきたんだけどすごいトロトロで甘いんだって」
聖美「食べ……りゅ……」
聖美、鼻から失血死。世界は救われた。(多分)




