2020年7月14日 フランス革命アントワネット
2020年7月14日
西香「イヤですわ!! 絶対イヤですわー!!」
五人少女宅にて。西香は地団駄を踏みながらイヤイヤ言っている。
留音「でもお前しかいないよ、絶対適役だしさ」
衣玖「うん、マリー・アントワネット役ができるのは西香しかいない」
西香「やだやだやだ~!」
というわけで、日めくり劇場的な事をしようとしているらしく、今日は西香をマリー・アントワネットを演じさせたいの図である。
衣玖「なんで嫌なの? 立派な女性だし世界史における絶世の美女とされてる人よ」
留音「そうだぞ、それにすごい西香っぽいし……多分さっくり演じられるよ、やるべきだって!」
西香「嫌ですぅ! わたくしあの方の言葉も行動も嫌いなんです!」
衣玖「言葉? ケーキの話のこととか?」
留音「あぁ、パンがなければケーキを食べればいいじゃないってやつか……いやそれも含めてお前に……」
西香「わたくし何かで読みました! あの言葉は実際はパンが高騰しているならそれより安く買えるお菓子を買ってご飯にすれば良いという意味だと! そんなヤワな話がありますか!!」
留音「え。あれ?」
西香「それに何やら未婚の女性のために家を建てたり、貧しい家庭に食料を分け与えるために自らの自分の食器も売っただとか……そんな複雑な心境わたくし演じたくありません! 王妃なのに!」
留音「そっちなんだ。実は善人っぽいところが嫌なのか?」
西香「わたくしは昔に授業で習った時、マリー・アントワさんのことは好きだったんですの。かっこいいじゃありませんか、何者にも屈せず、周りの人間すべてをひれ伏させ、自分の意見をすべて通す王を超えた王妃……わたくしの憧れの一人でした」
衣玖「うん、まぁ何も間違ってないわね。その理由で憧れる事以外は……」
西香「でも実は裏でコソコソとカンパを募って貧困に対応していただとか、夫の趣味に合わせるために努力してロバに乗れるようになっただとか……学校の授業で先生が言っていた範囲しか知りませんけどね! はぁ、わたくしが好きになった途端、完全無欠の王妃像を崩しやがったんですの、この方」
留音「そうなんだ……」
衣玖「一応言っておくと、ケーキを食べればいいじゃないっていうのは嘘だからね。そのエピソードはマリーの言葉じゃないってことは既に証明されてるから……」
西香「そうなんですの? ……まぁそれでも、わたくしの中のイメージはもう崩せませんけどね」
留音「どうする衣玖……思ってたのと違う理由で拒否されてるけど」
やっぱりこいつはわからん、と留音はコソコソ衣玖の耳元でささやく。
衣玖「とりあえず、もう少し乗せてみましょう」
衣玖は留音から西香に再び向き合って、王妃らしいエピソードを思い出して伝えた。
衣玖「でも西香、宮殿の敷地内に自分だけの小さな村落を作った人よ? 農民ごっこをするために」
西香「……そうなんですの? 農民ごっこ……」
衣玖「そう。しかも自然は汚くないって思ってたからそこで飼ってた家畜も常に匂いを消して汚くないように管理させてたって話。それでマリーは満足して毎日のように農民の服を着て乳搾りしたり走り回ったり、遊びまわって帰るだけっていう大きなごっこ村をすごい費用かけて作ったそうよ、湖まであるし」
西香「それはとっても王妃っぽいですわね……農民ごっこをしたかったとは知りませんでした」
留音「王妃っぽいといえば……ヴェルサイユ宮殿に突入してきた民衆の前に立って、毅然とした態度でまっすぐお辞儀をした姿を見た民衆はたちまち魅了されたって話もあるよな……」
西香「それは……なかなかかっこいいエピソードですわね……うーん」
留音「(もうひと押しだ!)」
衣玖「んじゃあ……実は権力で革命派をすべて処罰したいと思ってた、とか」
西香「実に王妃らしいですわね。なるほど、権力と財力にどっぷり溺れる生活、しかし強い芯を持つ女性ですか……わたくしが憧れるのも無理はありませんわ……しかしですね」
西香は留音のもっていた資料を持つと、ため息をしながら写真を持って言う。
西香「腫れぼったいお顔。これが絶世の美女なものですか。わたくしが演じるには役不足になってしまいます。もっとずっと美人の人物を提案していただかないと」
そうして西香は写真をパサっと机に滑らせてどこかへ言ってしまった。
留音「やっぱぴったりだと思うんだけどな……」
ちなみに、マリー・アントワネットは浪費家とされているが、王家が好きに使える金額を上回ったこともなく、もっとずっと散財していた伯爵もいる。描かれた歴史と真実がどう違うのかはわからないが、フランス革命の生贄の一人なのかもしれない。
今日はフランス革命記念日。




