2020年7月7日 アルティメットの日と七夕
2020年7月7日
最強の敵が現れた。留音、衣玖、真凛、西香のDNAを混ぜて作られた人造美少女生命体の名前は「メアリー花子」。
このメアリー花子はオリジナルデータを排除すべく、基となった四人を排除するために動き出した。西香が排除されたことで異常に気づく残りの三人。衣玖が敵の正体を突き止め、その対策に入ろうとした時。
轟音を立て、みんなの住む家の扉が突き破られたのだ。のそのそと侵入してくるメアリー花子。
衣玖「来たわよ……最終兵器メアリー花子……」
真凛「あれが……全員の役割を一人で負うことでわたしたちを用済みにしてこの物語を終わらせるという……」
メアリー花子「ブルぁあああああ!!! ぎえろぉ……五人じょうじょぉ……!」
留音「……いや、こいつにあたしたちの代わりは無理だろ……!?」
見た目は確かに可愛い。だが能力と見た目だけしかこのメアリー花子は継承していない。実はまともな会話がほぼ不可能なのだ。
だがしかし、その能力は本物である。油断した留音の隙を、一瞬の踏み込みで詰めると肩を突き出した鉄山靠で留音を壁に叩きつけた。
留音「ぐわーッ!! こ、このあたしが見えなかった……!?」
しかしこの間に衣玖が対侵入者用トラップを起動する。空中に散布された棘のついたボールのような形の誘導機雷がメアリー花子に向かって飛び交うのだが、メアリー花子はすぐに携帯を取り出すと、ワンタッチでその機雷をすべてシャットダウンさせ、地面にゴロゴロと転がる。
衣玖「あぁっ! ウォッチドッグスとか攻殻で見たやつ!」
衣玖の発明すら上回るハッキング能力。そう、メアリー花子は五人少女らの能力すべてを上回るように設計されているのだ。
真凛「ゴツゴツボールで床を傷つけて……許しませーん!」
と、真凛が次元歪曲能力でメアリー花子を異次元に消し去ろうとしたのだが、なんとそれすら中和してしまう。
留音「お、おいマジか……本当に強いぞこいつ!?」
ちなみに西香はミスコンに出場することになり、メアリー花子が横に立ったために投票数で負け、賞金の1億円を手に出来ずに爆死した。
衣玖「まずいわね……さすが最終兵器……並大抵のことじゃ敵わない……仕方がない、アレをやるわよ!」
真凛「アレですか……今まで温存していたアレをついに出す時が来たんですね!」
留音「よし! モードチェンジッ! アルティメットモード!!」
三人は手を空へと掲げ、不思議なポーズを取ることで自分たちの形態を変化することが出来るのだ。
これまで見せていた通常モードから更に極まった状態。究極状態。
究極留音「チェンジ完了!究極留音!」
究極衣玖「状態変更、究極衣玖」
究極真凛「さぁメアリー花子さん! 覚悟してください!!」
究極真凛は次元フィールドを展開し、無理やりにこの場の四人を異空間に引きずり込む。それをメアリー花子が中和しようとしても、既にその次元に事象はない。なぜなら究極真凛が「やりたいと思った時」には「既に完了している」のだ。中和もなにもなく、結果は「既にそうだった」となるのである。
続いて究極衣玖が手を振ると、空気中から様々な機械兵器が飛び出していく。そしてそれらは誰も見たことがないような形、色をしているのだ。それは何故か? 空気中に漂う元素何もかもを使って、超新星爆発のように物を作り出しているからである。真空を形成すると言われる星間物質ですら、究極衣玖の発明の材料になる。
発明品はメアリー花子を捕らえるが、メアリー花子もなんとか抵抗する。既に究極真凛一人、究極衣玖一人にも勝てないだろう。しかしメアリー花子は口をかぱっと開き、最後の抵抗として三人向かって超最強波を放つつもりだ。
通常の打ち合いなら、さっきまでの留音では負けていたかもしれない。しかし今の究極留音は違う。メアリー花子の放った最強波を体で受け止めると、それをすべて吸収した。文字通り無敵の究極留音にとって敵はない。敵対的行動が真の意味で無となるのだ。何もかも無効化し、全て自身のパワーへと変換する。
究極留音「お前はすげぇよ、たった一人でこんなに強くて」
究極衣玖「しかし間違った強さだった」
究極留音は最強波よりももっと簡素な構えをすると、そこから誰にも見えない速さか、エネルギーそのものが宇宙と一体となっているのか、誰にも感知出来ない力を放ち、メアリー花子を彼方へと消し去るのだった。
究極真凛「さようなら、メアリー花子さん……」
こうして世界の秩序は保たれた。そんな今日はアルティメットデイ。別に究極とかじゃなくてスポーツの日である。
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一方ミニーズ。
イリス「これに願い事ねぇ」
イリスは街に大々的に飾られた七夕の笹飾りを前に、短冊を持ってうーんと考えている。色とりどりの短冊に願いが書かれているのをいくつか観察しているようだ。
アンジー「なんて書こうかなー。聖美ちゃんはなんて書いたー?」
アンジーは青い短冊を手に、聖美に尋ねている。聖美は赤い短冊を持ち、隠すようにそそくさと笹にくくっている。
聖美「ひ、ひみつっ」
アンジーはなんとなく察したように対応している。
イリス「短冊は五色なのね。エレメントが元の思想なのかしら。だったら白いのに書くのがいいかな……」
アンジー「えっ? 色になにか意味があるの?」
イリスが自分の持っていた黄色の短冊を置き、白い短冊を手にしたのを見てアンジーが問いかける。それについて聖美も興味を惹かれたようだ。
イリス「まぁおまじないだし、なんだって良いと思うけど……五色っていうのはどんな世界でも強い意味が込められてるものなのよ。魔法界もそう、地水火風天とかのエレメントよね。日本にも火水木金土が五つのエレメントとして思想が残ってるのを見たことがあるし」
聖美「それで、どうして白なの……?」
イリス「私は留音……あいつらに勝てるようにって書こうと思ったんだけど、こういう自分の中で決めたことを達成するというのは白が適してるのよ」
アンジー「へぇー! じゃあボクのみんなで仲良くいられますようにっていうのは?」
イリス「敬意なら赤かな。愛情なら青ってところ?」
アンジー「そうなんだっ! じゃあ赤にしよっかな……っ」
アンジーはそそくさと短冊を取り替えた。聖美は少し表情を変えている。
聖美「愛情が青なの……?!」
イリス「そうよ。自分から相手に、が赤。相手から自分に、は青が意味を持つエレメントね」
聖美は急いで自分が先程くくりつけた短冊を外し、次は青い短冊に切り替えて急いで書き直したのを飾っていた。
イリス「今年こそ、あいつらに、勝てますように。勝つまで、終わりません、ように、っと」
今日は七夕まつり。書きたい願いがあるなら願掛けに短冊の色の由来を調べてみてもいいかもしれない。




