2020年6月27日 演説の日
2020年6月27日
ステージには公演台が設置されている。そこに西香が経つと備え付けられたマイクにスイッチを入れた。
西香「皆さん。どうもごきげんよう。わたくしは小鳥遊 西香と申します」
西香の眼前には数え切れないほどの民衆が詰めかけている。
西香「わたくしは、もうじきに日めくりという活動を初めて1年となります」
台座に手を添え、静かに語り始めた。
西香「皆さんには知っての通り、わたくしたちは来る日も来る日も休まず活動し、本日で更新回数のみで言えばまるまる1年分を経過させたことになります」
ざわめく民衆。今回は365部なのだ。
西香「しかし今現在、わたくしがゴールに向け走る中で一つ気になっていることがあります。それはポイントです!」
ドン! 机を勢いよく叩くとマイクが小さくハウリングした。
西香「わたくしは、自動的にチョロく増えるものだと思っていたポイントを……他の方は1年で365ポイント行ったらいいよねなんて言っていたポイントが、未だに300を超えていないことに、甚だ疑問を感じている!!」
西香「その上ここ数日の間に数度ブックマークがつき、そして外されたのです!! ポイントは減った!! 何故ですか!!」
衣玖「坊やだからさ……」
そんな事を数日前にも書いたら慈悲が降りてブクマ増え、ポイントもつけてくれた人がいたのだが、西香にとっては自分が出演しているにも関わらず外されたことに対して遺憾の意を表明している。
西香「わたくしは自らの美貌とセンス、そして類まれなる価値観、その全てにかけて1億万ポイント程度なら得られることだろうと思い、わたくしのファンを増やすためにこの日めくりに参加してきました。しかしそうではなかった。フェルト以降、ファンアートだってもらえません!!!」
西香にとって一番心に来ているのはその事だ。
西香「わたくしは考えていました。ポイントが増え、ランキングに乗り、また読者が増え、そしてわたくしを見る。そうすることでわたくしのファンがネズミ講の如く増えていき、ゆくゆくはわたくしをメインに据えた漫画化、わたくしをメインに据えたアニメ化、わたくしをメインに据えたエピソードのハリウッド映画化……いずれは世界を席巻していくものだと!!」
西香「いいですかみなさん! わたくしは、もっと楽して気持ちよくなりたいのです。そのためには皆さんの力が必要です! どうかわたくしのために、ワンクリックをいただけませんか! わたくしのビジョンは既に世界にあるのです!」
西香「それにはあなたがたの力が必要不可欠です。どうですか! 言葉にはしなくていい、ワンクリックだけいただければいいのです!」
西香「何度かわたくしの活躍を全話読みしていかれた方がいらっしゃいます。1時間あたりのアクセス数がちょうど話数分だったことがあるのです。
西香「しかしそれが起きた時にブックマークがついたことは、ただの一度だってなかったのです! そこまで読んだらワンポチくらいしてくれてもいいじゃありませんか! わたくしにはわかりません……減るものでは無いというのに!」
西香「しかしそれでもブックマークはしなかった。おそらくわたくし以外の登場メンバーの癖の強さのせいでしょう……しかし民衆の皆さん、臆することはありません! なんであれもうこの作品の命は1ヶ月を切っています!! 今登録しないでいつ登録するのですか!! 登録解除をするのは今ではありません!!」
西香「どうかどうか! わたくしに免じてブックマークを! 確かに最近はネタ切れを起こし、わたくしも美少女らしからぬ言動をする他のメンバー達に辟易としているところです、全員マイナス点を叩き出すことでしょう。それでもわたくしが出演している!! それだけでプラス3億点! そのような素晴らしい作品にブックマークをしないなど、明らかにおかしいと思うのです!」
西香「それでは皆さん、わたくしと誓いの乾杯をいたしましょう」
留音「西香め……演説の日にかこつけてお気持ち放送を世界中に流している……真凛も見ておくんだな」
真凛「は、はい」
西香「献金も受け付けています。もちろん絵でもいいですわよ。わたくしを可愛く描いてくださいね。いやもうこの際どんな絵でも構いませんわ。この作品が1年を迎えるまでにどうか! あなたが無駄に過ごす時間の少しで良いのです! わたくしのために使ってくださいませんか!!」
真凛「これが……敵……!」
西香「立ちなさい民衆よ! わたくしは、あなた方の力を欲しているのです! オールハイル西香!!」
読んでくれるだけでも嬉しいものだ。




