2020年6月24日 UFOの日
2020年6月24日
今日はUFOの日。世界で初めて謎の飛行物体が目撃された日、とされている。1947年の今日、ワシントンで閃光と共に超高速の円盤型飛行物体が確認されたのである。
と、いうところで、実はそれよりも200年近く前に日本に未確認物体が漂流していたというのだ。その物体の名前は虚ろ舟。窯のような奇妙な円形に、中には人が乗れて物体の外壁にはどこの言葉とも思えない、△や○をあわせた文字らしきもの。
これは実際に資料に残されており、当時の人は書き写した資料の中で「より詳しく知るものがいたら教えてくれ」と言葉を残している。
そしてその虚ろ舟には、なんと人間が乗っていたと残されている。そしてその人間とは、たいそう美人な女性だったというのだ。ちなみに当時の人からするととても奇妙な服装をしていたという。
そう、明らかに真凛という記録が実際に残っているのである。
真凛は実家からの帰り、ブラックホールを経由して地球に近づいたのだがその際に時間的座標が少しズレてしまい、江戸時代に着いてしまったのだ。当時の真凛は今よりも航宙のドラテクがあまりうまくなかったのだろう。
真凛「失敗したぁ」
たまにあるのだ。慣れない円盤型に乗るとブラックホール脱出のコーナリングを誤り、勢い余って違う時代に入ってしまうことが。
海に着水した真凛の船はそのまま陸へと上り、小さな漁村の住民に取り囲まれることとなった。
「うだー、なぁんだっぺこいづはぁ」
「でっげ窯だなぁ……」
真凛「あちゃー……現地民の方が……」
伝承によると、虚ろ舟から現れた美しい女性は小包を手にして出てきたのだという。
「うっわ!! 出てきただぁ!! お、女……? 信じらんねほどめんごい女が出てきっど!!」
真凛「あのぉ、すみませーん。ここは今西暦何年頃になるんでしょうか……?」
「しゃ、しゃべだああ!! なんかもっとるど!!」
真凛「んっ? あぁ、これは……私の実家からのお土産で、ちょっとめずらしいものなので無闇に見せられなくて……」
女は頑なに小包を見せようとしなかったという。しかし一節によれば甘くて美味しそうな匂いがしただとか、おやつが入っていた、高級品が入っていたなどなど、様々な形で伝わっている。
真凛「あのぉ、それで……今って何時代なんでしょう?」
「なぁにいっでんだこの娘っ子は……」
言葉も意味がわからず、会話にならなかったと当時の記録には記されている。
真凛「うーん、まぁもう一回宇宙に出て、それから考えましょう……あの、すみませんお兄さんたち、ちょっとこのUFO押してもらってもいいですかぁ?」
「な、なんだっで……?」
真凛「これ海に向かって、ぐーって。……あっ、お礼が欲しいのかな……あのこれ、友達に練り物が好きな子がいて、その子にって持ってきたものなんですけど……」
真凛は小包から小分けされた練り物を取り出すと、その漁民に手渡した。戸惑う漁民だったが、そこに付随したジェスチャーなどで様子はわかったらしい。真凛がその窯に乗り込むと、えっさほいさと海へとUFOを押し返すのだった。
この要素を当時の画家が絵にしたり、この漁民の口伝から虚ろ舟の伝説は残っているのだ。
真凛も当時、記憶媒体の無い時代だからと油断してUFOの記憶を消さなかったのだが、2020年を迎えてなお「日本の歴史に残る巨大な釜、虚ろ舟の正体はUFOだったのか」という議論が続くとは思っていなかっただろう。甘いものを持っていたとか、小包の中には練り物が入っていたとか、割と正確に伝わっている。
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そこはとてもにぎやかで、心地よい圧迫感のあるゲームセンター。ミニーズの三人は仲良く遊びに来ていた。
イリス「な、なかなか難しいわねっ……ごめんねアンジー、簡単に行けると思ったんだけど、結構手強いわ、こいつ」
きらびやかな音楽を流しながら、コミカルな効果音とともにケースの中のアーム付きUFOがイリスのボタン操作と連動して動いている。
流れとしては、アンジーがひと目見てかわいー! と反応した中サイズのぬいぐるみについて、キャッチャーの形とサイズの様子から簡単に取れると踏んだイリスが挑戦していた、というわけだ。しかしほんの少ししか動かなかったらしい。
聖美「私もアンマリ取れないんだよね……たまーにがっ! ってつかんでガチ―って持ってきてくれることがあるんだけど……」
アンジー「難しいよね~……やっぱり簡単に取れないなぁ。大丈夫、今回は諦め……」
今日はUFOキャッチャーの日、ということでプレイ中なのである。そんなところで、店の前を通りがかった西香が三人を見つけて話しかけてきた。
西香「あらあらお三人さん、こんなところで遊んでらっしゃるの。暇そうですわね」
聖美「あっ、西香ちゃん!」
イリス「あんたが一番暇そうなのよ」
西香「まぁ。UFOキャッチャーにお金かけてらっしゃるの? もったいない、こんなの簡単に取れますのに」
アンジー「えっ、西香ちゃん、UFOキャッチャー上手いの?」
西香「欲しい景品なんてチョチョイのちょいですわよ。もしー、そこの店員さーん」
西香はニコニコと営業スマイルで近くにいた女性店員ではなく、少し遠くの男性店員に声をかけて呼び寄せた。
西香「あのぉ、店員さん……わたくしね、頑張ってこちら、プレイしていたんですの。でも全然動かなくて……どうしても欲しいんですのぉっ」
すると店員はやれやれ仕方がないなとガラス戸を開くと、ぬいぐるみの位置を少し調整して、ここを狙うのがいい、こっちのアームを使うのがいい、ここで止めてここに当てるのがいい、なんて教えてくれるのだが。
西香「うぅっ……でも店員さん、わたくしたくさん頑張ったの……こうやって教えていただいても取れないかもしれなくて……」
西香は潤んだ瞳で店員を見つめた。その隣でアンジーまでもが「難しいんです~っ」なんて言っている。
すると店員はキャッチャーの下部にあるパネルを開け、何かを確かめるとドギマギしながらぬいぐるみをもう少しだけ出口に近づけてくれて、じゃあこれでとプレイを促す。ぬいぐるみはほぼ落ちかけている。
イリスが再びプレイして、今度は触れただけでぬいぐるみが落ちた。店員はしまったという表情だ。どうやらサービスしすぎたらしい。
アンジー「うわぁんっ、ありがとぉ店員さぁん! ボクこれほしかったの―!」
イリス「ふぅ……」
聖美「良かったねぇアンジーちゃん!」
アンジーの喜びと、それを見て嬉しそうにするイリスと聖美の様子から、まぁ仕方がないかと思う店員は苦笑い気味に美少女達が店から出ていくのを「ありがとうございましたー」と見送るのだった。
西香「まぁこんなもんですわよ。店員なんてちょろいもんですわ。最近出てきたネットキャッチャーはこれが使えませんからね、ちゃんと店でやることを推奨します」
その後、西香はお助け料を要求してきたりとなんやかんやあったが、うまく突っ返すことが出来たようだ。




