2020年6月19日 ロマンスの日
2020年6月19日
真凛「あの……もし良かったら……わたしと二人で……過ごしてくれますか……?」
心のときめき。
留音「あたしには特別なことってよくわかんないけど……でもお前と一緒にいられるってだけでも、すごく特別だなって……」
高鳴る気持ち。
衣玖「生まれてはじめてなの。自分でも制御しきれない、こんな気持ちになるのって」
今にも駆け出したくなるような抑えきれない想い。
西香「もう何もかも放り出して……二人だけの時間を過ごして頂けませんか?」
今日はロマンスの日。大切な誰かと二人きりで過ごす日にする提案を行った記念日である。
それぞれが大事な人に向かって愛の言葉を紡いだ。
『だから―私と・わたしと・あたしと・わたくしと―……一緒に過ごしてください!」
ちなみに……対象はそれぞれの相手ではない。
あの子「( ˊᵕˋ; )」
当然のようにこの子一人だけに向けて全員同時にロマンスに誘った。
真凛「この子と一番長いのわたしです^^」
衣玖「長さは関係ないでしょ。想いの強さは絶対に私が一番強い」
西香「そうですわよ。人生をどれほどこの子のために割いているかという割合で決めましょう。はいわたくしです」
留音「ちょっと待て。この子が困ってるだろ。そういう気配りが出来ないようじゃまだまだこの子はお前らには任せられないな」
真凛「何目線ですか……」
西香「あなたは誰と今日を過ごしたいと思いますかっ? わたくしですわよねっ? 一番手がかかりますもの、放っておけませんわよねっ?」
あの子「( ´ㅁ`; )」
衣玖「それを言ったら私だって手がかかる。だめよ、ちゃんとこの子に選んでもらわないと。(ポチッ)」
衣玖が話しながら何かのボタンを押すと、留音に向かって毒矢が発射された。しかし気配を感じ取った留音はさっとそれを避ける。
留音「アッブな!! 何しやがる!」
衣玖「チッ、外したか……一人ずつ消しておきたかったのに……」
真凛「そうですね……どうやらこうして決着をつけるのが一番早いようです……この子とロマンスをするのは誰か! 血みどろの戦いに興じるとしましょう!!」
西香「ロマンスのかけらもないバカどもは放っておいてわたくしと行きましょうか」
あの子の手を取ろうとした西香はその油断をつかれて殺害された。
そしてそこにミニーズも登場し、大混乱へと陥っていく。
イリス「あたしだってねぇ! 絡む機会もっと増えないかなって思ってるのよ!! ずるいわよ五人少女共!! あたしだってこの子とお近づきになりたいんだから!!」
聖美「そうだよ! なんだかんだでみんなエピソード持ってるんだから、私に一回位譲ってくれたっていいでしょぉ! ロマンスしたいよー!」
わちゃわちゃと死んだ西香を踏みつけて行われる大混乱に、あの子はどうしたらいいのかわからない。
アンジー「(……はぁ。いいなぁ、ボクも主張したいけど、不可侵のあの子にそういうモーションかけたら作品から抹殺されちゃうかもしれないし……おとなしく外から見てよっと……こういう時にオトコって設定は不便だよね……)」
と、アンジーはみんなの喧騒の一歩外で座って見守ることにした。
だがそれに気づいたあの子がアンジーの元へとととっと駆けていき、ちょこんと隣に座る。頬を赤らめるアンジー。
アンジー「あ、あはは。困っちゃうよね」
あの子「(´・ᴗ・`;)」
あの子は楽しいし嬉しいんだけど、という気持ちも含めて、やっぱりみんなの様子には困るという雰囲気だ。
アンジー「ボクは見てるだけだけど……ロマンス、誰がするんだろぉ……誰がいいとかはない、よね?」
あの子は皆のことが大好きだし大切だ。だから選ぶのはすごく難しい。だからこの状況にすごく戸惑っていた。
アンジー「だ、大丈夫だよっ、きっと明日には元通りになってるし……本当に血みどろの戦いになる可能性はあるけど……っ」
二人の前では大きな砂埃があがり、大乱戦が起こっている。全員が持てる力の限りにあの子とのロマンスを得るために必死になっているのだ。
アンジー「あらー……あ、あんまり見ないほうがいいよ……みんなすごいなぁ……」
あの子は苦笑いしながら、自分と過ごしてロマンスになるかわからないし、そんなに必死にならなくても、というような事を言った。
アンジー「そ、そんな事無いよ! きき、君はすごく魅力的だし、誰だって一緒にいたいと思うだろうしっ、ボクだってホントは……参戦したいくらいなんだけど、ほら、一応男の子だし、そういう事をするのはあんまり良くないのかなって思ったりしちゃって……ロマンスに憧れないわけじゃない、けど……」
最後の方の言葉は口調が弱くなっていたため、あの子には聞こえなかったようだ。アンジーは照れて頬を赤らめている。
あの子は「アンジーちゃんは優しいね」と微笑んでみせた。アンジーはその表情にもっと顔の赤みを強めて、もじもじとあの子の隣に座っている。
アンジー「(うー……幸せだなぁ……ずっとこの時間が続けばいいのに……目の前はこんなにぐっちゃぐちゃだけど……)」
二人は肩を並べて目の前の巨大な砂埃を観察している。ロマンスはいったいどこにあるんだか。




