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2020年6月17日 五人少女童話 ~大きなかぶ~

2020年6月17日


真凛(まりん)「抜けないですねぇ……カブ」


 五人の前にはとても大きなカブが埋まっている。何故、どうしてそこにあるのかは誰にもわからないが、とりあえず埋まっているのをみんなで抜きたい。


 最初に発見したのは留音(るね)だった。自分ひとりで抜けなかった以上、もう何人が協力しようと無理だろうと思ったが、意固地になって抜こうとしている。みんなを集めて。


イリス「8人もいて無理だったんだからもう無理でしょ」


 最初は五人が挑戦していた。だがすぐに衣玖(いく)がドロップアウト。西香(さいか)も疲れたと家に入り、その後尋ねてきたミニーズが参戦し、今は6人で挑戦している。


アンジー「頑張ってるのにね~……」


留音(るね)「やっぱりみんなの力を合わせる必要があるな……。おーい衣玖(いく)ー、西香(さいか)―、あと1回で抜けそうなんだから、やってみようぜー」


 窓の向こうからなんとなく眺めていた衣玖(いく)。どうやら離れて見ていたことで抜けないからくりに気づいたらしい。部屋から出てくるとこう言った。


衣玖(いく)「このカブが抜けない理由がわかった。ルー……わかってやっているの?」


留音(るね)「……」


 衣玖(いく)の指摘に目線を逸らす留音(るね)


真凛(まりん)「どういうことですか……?」


衣玖(いく)「いい? 私達は今、ほぼ忠実に童話の"おおきなかぶ"を再現している。突然現れた謎の巨大カブ。それを抜こうとしても抜けないので、みんなで集まってうんとこしょ、どっこいしょ。最後には小さな力だって大きな事を成し遂げるのに必要になるという教訓を含んで物語は終わる……でも本当にそうだったのか」


イリス「何がいいたいの?」


衣玖(いく)「ルー。カブは抜けないわ。……あなたが、カブに足をかけて止めているんだからね」


留音(るね)「……ふっ……気づかれちまったか……」


聖美(きよみ)「えっ……それじゃあ……私達、はじめから留音(るね)ちゃんに抜けないように止められていたカブを引っ張っていたっていうの……?」


衣玖(いく)「そのとおり。ルーがいくら頑張って引っ張っても抜けないのはカブを引っ張る力が足でカブを抑える力と釣り合ってるから。だから抜けなかったの」


アンジー「えぇ~……でもどうしてそんな事をするの?」


留音(るね)「……簡単なことだよ……。ただ、みんなで大きな事を成し遂げるってことをさ、しておきたいなって思って……今日はなんの記念日も無いからいい機会だった……それだけだよ」


 そう、留音(るね)は8人で精一杯頑張ってやっと抜けたカブ、という状況を日めくりに残しておきたかったのだ。


留音(るね)「だからみんなで汗かいて頑張って、それでこのカブからあたしは足をどけるつもりだったんだ。……気づかれちまったか……」


 ちなみに西香(さいか)は全くやる気がない。もう部屋の中でクーラーをつけて扇風機を付けてその前でアイスを加えながら服をパタパタして体に風を送り込むという油断しまくりな行動で涼んでいる。


イリス「おかしいと思ったのよ。あんたでも抜けないなんて……」


留音(るね)「まぁな。でもさ、こういう時抜けちゃうんだよ。あたしたち。多分なんだかんだでみんな抜けるだろ、一人で……あたしは古典的なチームプレイも好きなんだ。もっとみんなでワイワイやって一つのことを成し遂げるってのも……なんかかわいいじゃんか……」


 そこに衣玖(いく)が近づき、留音(るね)の腰をポンと叩く。


衣玖(いく)「……ルー。私達は現代的な美少女なの。ソロプレイ、スタンドプレイから生じるチームワークはあっても、チームプレイは必要ない」


 なんとなく寂しい留音(るね)だった。


――――――――――


もしも大きなカブに一人で対面していたら


留音(るね)


留音(るね)「おっカブだ! でけぇ!!」


留音(るね)「はいよいしょ―!!! おーでっけぇ!!! まりーん! カブー! 超でっけぇー!」


真凛(まりん)「うわぁ! そんな大きいものを片手で振り回さないでください~!


―――――――――――


真凛(まりん)


真凛(まりん)「わー! なんですかこれぇ!! かぶー!」


真凛(まりん)「うーんしょ! ……抜けませんね……」


真凛(まりん)「……えいっ!!」(ズゴゴゴゴゴゴ……)


衣玖(いく)「ちょっと何……うわっ、地面が隆起して割れて……」


真凛(まりん)「やったぁ、カブが出てきたぁ☆」


 

――――――――――――


衣玖(いく)


衣玖(いく)「巨大な野菜とはまた興味深い。って言っても自分じゃ抜けないし……そうだ」


 数分後。


衣玖(いく)「よし、小型化を作ってきたからこれを設置して……ポチッと。分子量のサンプルを取らなきゃ。こうなると普通のカブだけど……」


――――――――――――


西香(さいか)


西香(さいか)「なぁーんですのこのでっかい野菜は!!」


西香(さいか)「……これを発表すればお金になるでしょうか……いえでもこんな突然変異みたいな野菜、絶対やばいですわね……」


西香(さいか)「それに見ればカブ。株は好きですがカブって美味しくなさそうで……」


西香(さいか)「とてもどうでもいいので放置にしましょう……埋まってるのが大手の株ならよかったのに……」


―――――――――――――


ミニーズ編


アンジー「うっわぁー! でっかいカブがあるー!」


聖美(きよみ)「本当だ! うーん!うーん! こんなの抜けないね!」


イリス「任せて。こんなの浮遊の魔法でちょちょいよ……っと、あれ。土が重いのかな……」


アンジー「埋まっちゃってるもんね。任せて! ボクが取るから!」


聖美(きよみ)「んー……あっ、そこにシャベルがあるよ。あれ借りようー」


イリス「堀りやすさにエンチャントするわよ」


アンジー「みんなでやればすぐ掘れそうだねっ」


―――――――――――――


あの子編


「(おっきなカブ……どうしよう、一人じゃ抜けないし……)」


「(みんなだったら抜けると思うけど……いつも頼ってばかりになっちゃう……)」


「(でもやってみなきゃ……うーんしょっ……どっこいしょ……っ)」


「(少しは動いてるかな……? だめ……?)」


西香(さいか)「ちょちょちょっ、ちょーっとぉ!! あなた何をそんな……力仕事なんてっ!! 下々の者にまかせておけばいいのです!!」


留音(るね)「おいおい何を騒い……デェーッ! カブ! 抜けねぇよ! あたしらに任せろぉ!?」


衣玖(いく)「おおきなカブがあったなんて気づかなかった……ごめんね。私達の誰かが気づいていればこんな力仕事させずに済んだのに……」


真凛(まりん)「わたしたちが見てない間にカブが現れたんですね……そんなの許せません……おかげでこの子の可愛らしいお手々が力ギューして赤くなってしまいました……許せない! 大きなカブなんてない世界にします!!!!」


 こうして世界は崩壊し、世界から突然大きなカブが現れるという珍事が消えたのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 留音ちゃんをもって、抜けないとは変だなあと思っていたら、そういうことでしたか。 体育会系ですねえ。
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