2020年6月12日 恋人の日
2020年6月12日
聖美「誰がカップルになるかゲええええエム!(早口)」
真凛「聖美さん、一人で勝手に盛り上がってどうしたんですかぁ?」
聖美「今日は恋人の日!! 私達は恋人いないよねぇ!!! いるわけがないのいたら許さない!! だからぁ、私達の中からこの特性ラブキラ☆かっぷるルーレット♡で恋人同士になってもらいまーす!」
西香「一人で勝手に盛り上がってますわね」
というわけで用意されたルーレット台。ここにいる八人全員の名前が記載されているのだが。
留音「……聖美の文字、でかくね?」
他の名前の3倍近くのスペースが取られていた。
イリス「企画立案者だからって今日の日めくりを手伝いたいという聖美の心遣いに感謝することね」
アンジー「久しぶりに言うけど、善意だからね……」
聖美「はいっ! というわけでね、これを2回まわして、今日の日めくりを遂行する恋人同士を決めたいと思いまーす!」
衣玖「恋人同士……なったら何をするの?」
聖美「問答無用で一日ガチ恋デートをしてもらいまーす! お互いがお互いを大好きな設定で相手の要望には出来る限り答えるのが条件でーす!」
留音「めんどくせぇー……」
アンジー「(あたったら嬉しいような、でも大変そうだなぁ……あの子と当たらないかなぁ……)」
聖美「それじゃあ!? ルーレットォ!? スタートぉ!!!」
備え付けられたBGMに乗せ、くるくると回り始めるルーレット。一人目に指し示したのは。
留音「うわっ……」
聖美「やったぁぁぁぁぁぁあ!! 留音ちゃんだ!!!」
留音であった。どんな思惑でかはともかく、ほっとしたように小さく息を吐いている他のメンバー達。
聖美「じゃあお相手を決めていきまーす! はい、じゃあ留音ちゃんが回して?」
留音「え~もうめんどうくせぇなー……よいしょっと」
留音が軽い力で回し始めたルーレット。その回転が弱まって、他の子よりも3倍大きなマス目で止まろうとしている。
聖美「(こいこいこいこい!!)」
誰もが聖美だろうと思ったのだが、最終的にルーレットが示した名前は……。
イリス「げっ……ウソでしょ……あたし……?」
聖美「そんなぁ!!!!(絶叫)」
というわけでデート決定の二人だった。聖美は元気を半分以下に減らしてイリスに「楽しんできてね……」とエールを送った。
留音「デートって言われてもなぁ……」
イリス「ぐ……聖美の案だから乗っかるけど……別に全然うれしくないし!!」
聖美「じゃあデートは明日ね……お互い準備もあるだろうし……私も遠距離用のレンズ探してこないとだし……」
というわけで次の日にデートをすることが決まった二人だった。
翌日、待ち合わせは二人の家の間にある公園でということにしてある。待ち合わせは朝の10時で、聖美は半日のデートを望んだが、とりあえず6時間ほどはくっついて歩くこと、となったらしい。
先に来たのはイリスだった。もう夏日で日差しも強く、麦わら帽子に白いトップス。半透明のベールのようになっている薄手の上着を着て肘辺りまで日の直射を防ぐような格好をして、そこにフレアスカートをはいている。
とても清楚で可愛らしく、着慣れずにもじもじしながらキョロキョロと留音を待っている様子はいじらしい。ちなみに服は聖美の仕立てでイリスの趣味ではないようだ。
そしてそこに「おーい」と現れたのは留音……にしては背が小さい。男の子のようなキャップと黒い服に英語で「サイバーパンク」と書かれたシャツを着て、ダボッとしたハーフパンツで登場した衣玖だった。
衣玖「ごめん、待たせたわ。色々あって」
イリス「あ、あれ。衣玖なの? 留音は?」
イリスは心の奥の方で、自分も認知せずホッとしたような残念なような気持ちを覚えている。
衣玖「なんか体調崩して熱出してるのよ。それで行けないの悪いからって、急遽私が変わることになったの。ゲーム一本で釣られて来たわ」
イリス「そう……ま、まぁ留音だと戦いになってしまうし、衣玖で良かったわね、むしろ」
衣玖「本当は出歩きたくなかったんだけど……それにしても随分可愛い格好してるわね」
イリス「べ、別に!? 聖美が着てけって言うから着ただけで、なんか意識したってわけじゃないんだから!」
遠くでパシャ、というシャッター音がする。二人は気づかない。
衣玖「何を必死になってるの……なんか悪いわね、私全然いつもの格好っていうか……」
イリス「別にいいじゃない。で、どこ行くの? 聖美が遠くから見てるらしいの。ちゃんと日めくりやったって証拠を残したいんだって」
衣玖「そ。聖美は日めくりに熱心になってくれて私も嬉しい。理解者が増えるとこうして日めくりを続けてきた甲斐があるって思えるわね」
イリス「本当にいい子なのよ。あたしだって本当は不本意だけどこうやって恋人ごっこしてあげるくらい」
衣玖「ん。とりあえずルーに薬買って帰りたいのと、街行くついでにアニメショップとゲームセンターに寄りたいなって。行こ」
イリス「アニメショップ……初めて入る店だわ、案内よろしく」
イリスは自然と手を差し出し、衣玖と手を繋ごうとした。
衣玖「……何?」
イリス「言ったでしょ、聖美がちゃんと恋人の日が出来るか不安で気にしてるのよ。それで、手繋いだりスイーツを食べさせあったりしてくれたら安心だって。聖美のためよ」
衣玖「……まぁいいけど……」
衣玖はおずおずとイリスの手を取り、子供とお姉さんのように隣に立って歩いていった。聖美のシャッター音は響き渡っている。
イリス「ふぅ……衣玖で良かった……」
衣玖「何が?」
イリス「昨日の夜からずっと留音とこうなると思ってあんまり眠れなかったのよね……相手が留音だったらこんな簡単に手つなぐの無理だったと思うし……」
衣玖「そんなに苦手なの?」
イリス「苦手っていうか……敵なのに優しくされたら戦い難くなるし……あーもう! よくわかんない! とりあえず留音に薬買って遊んで帰るわよ!」
衣玖「遊ぶのが先よ。あとお昼はカレーにするから。美味しいカレー屋さんがあるの」
イリス「カレー? 暑くない?」
衣玖「日めくり的にカレーなの」
というわけで恋人の日。と、インドカレーの日。




