2020年6月7日 母親大会の日
2020年6月7日
聖美「それで、そこからどうするの?」
聖美は留音に対し、先生が生徒に計算式の答えを求めるように尋ねた。
留音「えっと、お湯でこの粉末ミルクを溶かして……」
哺乳瓶を片手に、缶入りの粉末ミルクを前にする留音。だが、何も考えずに哺乳瓶にミルクを入れようとする留音を真凛が制した。
真凛「あっ! だめですよぉ! あっついお湯で作ったら赤ちゃんが可哀想です!」
聖美「そうだねぇ~。じゃあどうやって作るのかわかる?」
衣玖「確か腕の内側に落とすのよね。それでちょっと熱いかなってくらいが赤ちゃんにとって丁度いい温度なのよ」
聖美「はいさすが衣玖ちゃん物知り!! ママポイントプラス1点!」
聖美はパチパチと拍手しながら三人の前に立って指導している。子供をあやした経験が豊かなのか、しっかりとした知識をみんなに伝授しているようだ。
真凛「うーっ、わたしも知ってたのにぃ……」
留音「それで飲ませたら……抱き上げて……ゆーらーゆーらーって……」
留音はジェスチャーでホイホイと赤ちゃんを揺らすのだが。
聖美「はい留音ちゃん減点!! 赤ちゃんはあんまり揺らしちゃだめ! ちゃんと加減をしないと危険なの! わかった!?」
留音「お、おぅ、そうなのか……それは申し訳なかった……」
聖美「うん、ここでちゃんと勉強しようね。ほら、抱き上げて?」
聖美は留音の前に立つと両手を広げた。留音は呆れながらも聖美の腰に手を回す。
留音「またか……もー……」
聖美「はい、抱っこしてね。ほら、揺すってみて? 大人の加減だと揺らし過ぎちゃう事があるの。ゆっくり静かに優しくね」
留音は聖美をお姫様抱っこして、ゆっくりと揺すり始めた。
留音「こ、こうか……?」
聖美「そう! 上手だよ留音ちゃ~ん! ゆっくりやれば赤ちゃんもびっくりしないからね」
留音に抱っこされながらの表情はしっかり先生らしい。その脇からミルクを作った衣玖が来て聖美の口元にミルクを持っていく。
衣玖「じゃあはい、ミルクでちゅよー。ゆっくりのんでくだちゃいねー」
聖美「あぁっ! いいよ衣玖ちゃん! 優しく自然と赤ちゃんが飲んでくれるようにね! ん~っ、チューチュー。うん、ちょうどいいあったかさ~! 人肌だねー! はいそれじゃあお腹いっぱいになった赤ちゃんには何をするのか分かる人!」
聖美は留音から降りて自分の手を小さくあげて挙手を求めると真凛がまっすぐ手を上げながら言った。
真凛「ケプッてさせないと! 背中を擦ればいいのかなぁ」
聖美「げっぷはね、赤ちゃんを縦に抱いてあげて、背中を少しだけ丸くさせるようにして、背中を下から上にゆっく~りさすってあげるの。トントンって優しく叩いてもいいけど、本当に優しくね?」
まずは座ってね、と聖美は真凛を対面に座らせて、こうして肩に赤ちゃんの顎を乗せてあげるんだよ、と自分の顎を真凛の肩に乗せる。
真凛「じゃあ……ナデナデトントン……」
真凛は聖美を抱くようにしながら背中を擦ってあげた。
聖美「あーいい! いい感じ! 上手だよぉ真凛ちゃん!」
留音「そろそろこの状況に疑問を感じたほうがいいのかなぁ」
衣玖「これも謎の母親大会とやらで優勝するためよ。実戦形式で教えてくれる人がいて良かった」
留音「絶対なんか違うと思うよ?」
聖美「さぁみんな! 頑張って母親大会に向けて練習するよー! 次は赤ちゃんのお風呂の入れ方ー!!!」
聖美は赤ちゃんの格好で盛り上がっている。
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アンジー「聖美ちゃん……イキイキしてるなぁ……」
イリス「あんたは行かないの?」
西香「……わたくし、なぜだか赤ちゃんに近づくと泣かれるんですの」
アンジー「そうなんだ……」
西香「小動物にも威嚇されることが多いですし。ですからわたくしは母親大会になど出ないことにしています」
イリス「しかしわからないわね、どうして聖美はあいつらをその大会で優勝させようとしているのかしら」
アンジー「実益を兼ねてるんじゃないかなぁ……」
西香「わたくしが気になるのは優勝賞品です。でも母親大会でしょう? 多分金目のものはなさそうですしね。そもそもなんなんですの母親大会って」
アンジー「ええっと、母親の立場から見た世界の向上について話し合うような社会運動の事なんだって」
西香「あの方たちがやってるの、まるっきり違うことなんじゃありませんの?」
イリス「でも聖美ったらとっても一生懸命よ。最近頑張ってるし、世間のお母さんと同じでゆっくり休ませてあげたくなるわね」
アンジー「そうだね、あんまりエスカレートする前にね......」
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聖美「みんなっ、とっても上手に母親になれてたよ!! これでいつでもママになれるね!」
真凛「わーい☆」
聖美「また予習したくなったらいつでも私に声をかけてね! いつだって練習相手になるから!」
衣玖「聖美が献身的で助かるわね」
留音「(その前にパパがいればな……)」




