2020年6月3日 ポンコツの日
2020年6月3日
西香「うー、喉が乾きましたわね……急に暑くなりすぎですわよ……」
一人で歩く西香。汗をハンカチーフで上品に拭い、前方にある自動販売機を恨めしげに見つめている。
西香「おのれ……自動販売機で飲み物を買うなどわたくし……」
しかし暑くて喉も乾いているようだ。西香はポケットから財布を取り出し、周りをキョロキョロ見回して誰の目も無いことを確認すると、財布から1000円札を取り出した。小銭は持ち歩かない主義だが、自販機を使うと小銭が出てきてしまう。
西香「仕方がありませんわ……」
西香はメロンソーダを購入し、お釣りを取り出した。しかし500円玉がポロッと手から抜け落ちて、まるで西香に捕まりたくないみたいに上手にコロコロ逃げていく。
西香「あぁっ!! わたくしの500円玉が!!!」
コロコロ。西香は手をのばすがスカッと空振り。2回繰り返して失敗したところで500円玉は別の自販機の下に転がり込んでいってしまった。それを追いかけようとしてゴッチンと頭をぶつける。お金しか見えていないのだ。
西香「ふぇえ……いったぁ……ぐすん」
一人で可愛いことをしているが、そこには誰の目線もない。しかし西香は跪いて自販機の下を漁るなど出来るわけもなく、その自販機の周りをウロウロ回っている。結局どうすることも出来ず、西香は500円玉を諦めて帰路につくのだった。
がっくりと肩を落とし、でもたかだが500円だという考えと、自分がお金をみすみす捨ててしまったという未練がましい思いがぐるぐる回っている。
そうしてようやく家についたときに気がついた。
西香「あぁぁ! わたくしのメロンソーダ!!!!」
西香はその公園の付近を通る時、2つの自販機を射抜くほどに見つめるのだった。
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アンジー「はいっ! ということで今回の第2位、自販機でポンコツかます西香ちゃん、でしたー!」
(ある視聴者のコメント「くそぉぉ! なんで撮られてるんですの!!」「くそぉてお前」「あははっ、自販機を睨んでる顔が最高です~っ☆」)
イリス「さぁアンジー、これで今日の日めくれTVポンコツ特集も残すところあと一つとなったわねー」
アンジー「そうだね! ハイパーポンコツハツメイカー衣玖ちゃん、小銭落とした西香ちゃんと来て、第1位はだれなんだろうねっ?」
イリス「それじゃあ早速行きましょうか。五人少女シリーズ、ポンコツ珍プレーTOP3、堂々の第1位は……!」
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第1位 留音、恋をする
留音「聖美っ、ついてきてるかっ?!」
聖美「うわあああー助けてーっ…」
そこはとある野生生物の森。なぜそこに居たのかは関係ない。二人の美少女たちは豚の大群に追われ、崖っぷちに追い立てられていたのだ。
留音「くそっ、絶体絶命か……」
聖美「ね、ねぇ留音ちゃん……格闘でなんとか出来ないの……?」
留音「いや、動物に徒手空拳で挑むなんてところをもしも作品にされたらどうする。一巻の終わりになるかもしれない……なるべくならその方法は使いたくないんだ」
聖美「そ、そっか……確かに、みんなのためには……」
豚たちはなぜか怒っていた。一体なぜなのかはわからないが。
聖美「じゃあ、私が一肌脱ぐしか無いね……」
留音「聖美……? なにかいい手立てがあるのか?!」
聖美「豚たちを説得する」
留音「豚たちを説得するっ!? そんなことが!?」
聖美「大丈夫、きっと、真心を込めて伝えればなんとかなる……それに……」
留音「それに?」
聖美「私は……いつでも豚になる準備はしてきたつもり!!」
留音「なんっ!? どういう意味だっ!?」
聖美は留音の前に一歩踏み出し、豚たちを睨みつけ、小さく息を吸い。
聖美「……ぶっひいいいいいいい!!!ぶひぶひ!!ぶひぃ!!!ぶひぶひひ!!ぶぅっひいい!!」
留音「えっえっえっえっえぇぇぇ!?」
聖美「ぶひぶひ!!ぶひぃっ!ぶいっひ!!」
豚たち「ぶふっ……ふんすっ……」
聖美は四つん這いになり、自分を豚だと言い聞かせた。目の前にいるのはただの豚ではなく自分をペットに迎え入れてくれた五人少女たちだと思い込むことで、自分はいくらでも豚になれたのだ。
留音「ま、まさか……豚たちがおとなしくなって……あぁっ、帰っていく……」
聖美「ぶっひぃ!! ぶひぶひ!」
こうして留音と聖美の前から一匹、また一匹と豚たちが消えていった。
留音「……き、聖美……今のは」
静寂の訪れたその場所で、ドン引きと感謝の入り交じる複雑な心境をした留音が話しかけた。
聖美「留音ちゃん。私はね」
留音「う、うん」
聖美「皆のためなら(複数の意味で)、いくらでも豚になれる。覚えておいてくれる?」
留音に向けられたその表情はとても爽やかで、まっすぐなものだった。そんな視線を向けられた留音は頬をぽやっとさせて視線を逸らす。
留音「……えぇっ(ポッ)」
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イリス「かーっ、鬱陶しいわ」
アンジー「まさか留音ちゃんがこんな落ち方をするとはね~。顔真っ赤にしてるよぉ」
イリス「ほんとポンコツよね。まったく……そりゃあ命を助けられて……吊り橋効果ってやつ? 惚れやすくなるのはわかるけどさ……聖美は多才だしね」
(ある視聴者の声「えっ、気にするところそっちなんですの?」「ものすごいブヒブヒ言ってましたけど……」「多才の定義が問われるわね」「まじで助かったよあの時は……」)
アンジー「というわけで、本日のポンコツ珍プレー第1位は聖美ちゃんに即オチする留音ちゃんでしたー!」
イリス「最近の聖美は乗ってるわ。先日はファンアートも届いたという話だし、これからも活躍に目が離せないわね」
アンジー「それでは皆さん、また次回のポンコツ珍プレーでお会いしましょー! またねー!」
イリス「ばいばーい」




