2020年5月24日 ゴルフ場記念日
2020年5月24日
接待ゴルフをしなければならなくなってしまった美少女たちの話。
西香編
西香「ナイショーっ、ですわー!」
パコーン! ゴルフクラブがボールを打ち付け、緑のフィールドに気持ちよく広がった。そこに楽しそうな西香の声が響くと、ショットした客社長がいやっはっはと満面の笑みで照れている。
西香「社長さん、本当にお上手ですわねっ、わたくし尊敬してしまいますわ~!」
今度教えてあげるよ、と得意げな社長に西香は手を合わせて「嬉しいです♪」と片足あげて喜んでいる。客社長はナッハッハと喜んで、西香と話すのが楽しいようだった。
そうして半日を使ったゴルフ会が終了すると、西香を雇っていた会社の役員が西香にお礼をいう。
「今日はありがとうございました、西香さん。おかげさまで取引がうまくいきそうです……!」
西香「それはわたくしとしても嬉しい限りですわ。それでは、わたくしはこの辺であがらせていただきますわね」
「あっ、あの……二次会の方のご参加は……?」
西香「出ますか? そうするとオプション料金が追加されて先程の時給20万円に加えて夕勤手当で+20%、時間超過業務で更に30%、わたくしの帰りたい気持ち制御代金で50万円ほど積み上げることになりますが……」
「あっ……それじゃあの、今日はありがとうございました……お気をつけてお帰りください」
西香「えぇどうも。今後とも上っ面商会SAIKAをご贔屓に」
接待はおまかせのプロ(高額)。
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留音編
「それじゃあ腰を入れて……んっふっふ、そう。ひねって~~……こうだよ~……」
客社長はゴルフクラブを握る留音の横に立ち、フォームを教示している。この社長はゴルフをしたことがない女性に教えるのが好きらしい。ある理由でゴルフクラブを握る女性の正面から立つと得した気分になるからだ。特に留音はそうだろう。
留音「こう?」
留音は無邪気にフォームを真似している。客社長は鼻の下を伸ばしながらうんうんと頷いている。
「よぉし、留音ちゃん、それじゃあちょっと打ってみようか。大丈夫、どこ飛ばしても平気だからね」
留音「よーっしゃー、やったこと無いけど、打ちっぱなしってのは興味あったんだよなぁ」
留音は立つ位置を調節し、狙いを定めてゴルフクラブの機動を頭の中でシミュレートする。普通なら何回か空振りしてもおかしくないだろうが、まぁ間違いなく打つだろう。
留音「じゃあ打ちまーす」
「はーい頑張ってねぇ」
客社長はニマニマと留音の姿を見守る。
留音はゆっくりと振り上げたゴルフクラブを、自分の中にあるゴルフのイメージに沿ってボールに打ち付けた。ゴルフゲームだと基本的に打った球から炎が出るものなので、そのように振ったのだ。
そのスイングは音を置き去りにしていた。
細いゴルフクラブから巻き起こる一瞬の豪風。客社長のかつらは吹き飛び、折れたウッドはそのかつらをどこかの木に突き刺した。木々は揺れ、やっと誰かが「今この子はショットしたんだ」と認識してから「ズパコーン!」という爽快な音が響き渡る。
留音「ふぁー!……っていうんだっけ?」
ボールは既に見えていない。大気圏を突き抜ける前に燃え尽きて消えてしまったので、危険を教えるファーの掛け声は要らなかったかもしれない。
留音「うーん。難しいなぁ。まっすぐ飛ばしてフェアに入れるってのはちゃんと練習が必要かぁ。みんゴルみたいにうまく行かないや」
でも楽しいー。と打席を客社長に変わった。「社長は上手だなー」と、一応接待はしているようである。
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衣玖編
衣玖「わかってる? ホール前のスライスラインの傾斜。これを見て」
衣玖は端末に用意したフィールド情報を呼び出し、そこにカラフルなラインで描写されたピン前の状況が見えている。
衣玖「風向き東南東、およそ3.2メートルの風。ここから飛ばすにはコンディションは良くはないわ。でも追い風よ。打つラインはここを狙えばうまく着地出来る。それと見えると思うけど気をつけて、少しでもラインを間違えたらバンカーに入ってしまうわ」
「は、はい……」
衣玖「打ち上げに注意して」
客社長は緊張した面持ちでショット。クラブの音も固く、ボールは思わぬ方向に飛んだ。
衣玖「あっ……」
ルートは間違っていなかったかもしれない。だが風向きで流れたボールはバンカーに入ってしまった。
衣玖「入ってしまったわね……風向きを計算してと言ったでしょ」
「す、すいません」
衣玖「まぁでも大丈夫。まだ取り返せるわ。あなたの打ち方を見るにボールを押し付けるように打つ癖があるみたい。それを特に意識して、今度はここを狙って打ってみて。うまく外へ出して乗せられればスライスラインに合わせて流れるようにホールに向かうはず」
「は、はい」
衣玖「大丈夫、出来るわ」
正直思っていたタイプの面白さじゃない。だがスコアをひたむきに狙うというゴルフに、客社長は新たなゴルフの楽しみ方を見出したという。
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真凛編
真凛「へぇー! ホールインワン……それが一番すごいんですねっ」
「うんそうだよぉ。ほら見てご覧、あんなに小さい穴に一発で入れるんだからね、それはもうすごいことでしょ?」
真凛「うわぁっ……でも入ったら気持ちよさそうですね!」
「そうだろうねぇ……よし、じゃあ打ってみようかな。見ててね真凛ちゃん」
その後ろで、真凛は自社の上司に尋ねた。ホールインワン出たら客社長の機嫌は上がるだろうか? と。もちろんイエスだ。みんなでお祝いするし、アマチュアなら一生で一度出せたらすごいものなのだから。
それを聞いた真凛は気合をいれた。
真凛「頑張れ社長さ~ん」
客社長はむふふと気合を入れ、ゴルフクラブを振り切った。
真凛「(よぉしっ)」
ボールは空高く飛び上がり、ホールに向かって飛んでいく。
真凛「(……ふんふんふん!)」
ズゴゴゴゴゴ……地響き。それはやがて地を裂く音に代わり、ホールを中心にして大地は真っ二つに割れていった。ボールは地下深くから溢れ出したマグマに飲まれていく。
真凛「わぁっ! おめでとうございます社長さん! ホールインワンですよぉ!」
しかし祝われる社長もまた、ホールインワンしていたのである。さようなら社長。




