2020年5月16日 旅の日/愛の先は禁忌の日
2020年5月16日
五人少女宅。
今日は珍しく、あの子が一人で家にいる。
朝はみんなの部屋中を回ってゴミ箱からゴミを回収し、それから掃除機をかけて洗濯物も干しておく。
それが終わったら自分のためのご飯を作る。まずはお昼ごはん。パンを焼いて、作っておいたゆで卵をスライサーで細かくして、マヨネーズでうまく味付けをしてたまごサンドを作ってみた。それから少しの野菜も添える。
食べ終わったら食器の掃除。手際よく洗ってしまい、他になにかやることはないかと部屋を見回す。いつもの家が静かで広く感じるのは、あの子以外に誰もいないからだ。
『みんな、今どんな感じなの?』なんてメッセージを送ってみたりすると、4人からすぐに返事がくる。どうやら順調らしい。
ただ、みんなはまだ帰らない。今日は春から夏に変わるちょうどよい気温の陽気で、気づいたら少しだけソファで眠っていた。動きの遅くなった太陽はまだあの子を照らしていたが、そろそろおやすみをいいたげにオレンジの淡い光へと変わってきている。
あの子はスマホを開き、みんなからのメッセージが来ていないか確認する。何件か来ていた通知に返事をして、それからトボトボと一人で晩御飯を作り、それを一人で食べた。
今日は誰も帰ってこない。みんな旅に出ているからだ。今日は旅の日。いくら旅の日であれど、そんな記念日が決まっている程度で硬派な美少女たちはそうやすやすと旅に出ることはしない。
しかし「可愛い子には旅をさせよ」なんて格言を聞いてしまったのだ。こうなってしまうと旅に出ざるを得ない。何故なら可愛い美少女であるから。
だからあの子以外の全員は美少女である業を受け入れつつ旅にでたのである。あの子だけは家でみんなの帰りを待っているのである。
みんな、今頃どこで何をしているんだろう……あの子は夜、寝る前にみんなにメッセージを打った。『やっぱりみんながいないと寂しい』そんなメッセージを。
そうして眠りにつこうとしたあの子の耳に妙な音が届いた。ヘリコプターのプロペラが空を切る音だったり、戦闘機がマッハに入ったときのような音、隕石のようななにかが地球に直撃したような音に雷が連続で落ちるような爆音。
それらがまとめて聞こえると、次に家の玄関の扉が開かれ、大きな声で4人分の『ただいまーーー!!』が聞こえた。
あの子はベッドを出てみんなを出迎える。
留音「わああああただいまぁあああああ!!」
衣玖「ごめんねぇぇー! 長い時間寂しかったわよねぇ!」
真凛「あぁっ! お家がきれいになってる! ごめんなさい~! わたしというものがありながら……っ」
西香「わたくし、悟りました。可愛い子には旅をさせよ。あれも場合によりけりであると……こんなに大事に思ってるあなたを悲しませてしまうことになるなんて……」
みんながあの子に抱きついて再開を喜んでいた。こうして旅を終えた美少女たちは自分の中に生まれた考えと、この経験からクラスアップを果たす者もいた。
留音「あたしは思ったよ。旅の日なんて記念日が無ければ、こんなことにならなかったんじゃないかって」
留音は記念日の解放を目指す解放者となり。
衣玖「可愛い子には旅をさせよ、この言葉をそもそも疑うべきだったのよ。時代を反映した言葉はいずれ人の心の邪魔をする。私達は自分が在りたいように在るべきだった。私にとってはあなたと一緒にいること……」
衣玖は移り変わる物事を見定める革新者となり。
真凛「いっそこんな記念日か言葉がなかったらいいんですよ消しましょう^^」
真凛は概念すら無に帰す破壊者となった。
西香「はぁー疲れました。真凛さんなにか飲み物をくださいますか」
でも西香は特に変わらなかった。
今日は松尾芭蕉が奥の細道の旅に出発した日ということで、旅の日なのだそうだ。旅路は常に選んでいる。
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ピンクなショート、ハッスル聖美ちゃん編
聖美「ねぇアンジーちゃん……」
アンジー「んっ? なぁに?」
聖美は小声で、アンジーの耳元にささやくように言った。ちなみにイリスは少しだけ席を外している。
聖美「…‥今日はね、性○禁忌の日なんだって……」
アンジー「せいこ……へっ!?」
聖美「しっ! イリスちゃんに聞こえちゃう……」
アンジー「な、なんでボクに言うの……っ?」
聖美「えっと……別にアンジーちゃんがそういう話好きかなって思ったわけじゃないよ? でもなんとなくイリスちゃんってすごく純粋っていうか、こういう話してもちゃんとわからなさそうかなって……それでアンジーちゃんに相談したくて……」
アンジー「相談……う、うん……なぁに……?」
聖美「私……五人少女ちゃんたちに色々しようとしてきたけど……でも今日だったらいいよね……?」
アンジー「な、何がいいのかわからないんだけど……」
聖美「禁忌だから……何がどう、どうすることが禁忌なのかについて事細かに教えたりするのって今日にしてみればとっても良いことだよね……?」
アンジー「あっ……あの……」
聖美「この前衣玖ちゃんを人気のない路地裏に連れて行ってね、触診的なことをしようとしたんだけど、衣玖ちゃんキョトンとしてたの……天才とか言ってるけど全然耐性ついてないんだよ……可愛いよね……でもだからこそちゃんと今日の禁忌について教えてあげないとって思ってるんだけど……それだったら日めくり的にもいいことだよね……?」
アンジー「あの……ごめん、むしろアウトなんじゃないかって……」
聖美「ちゃんとした知識をちゃんとした資料などを使って事細かに教えてあげるだけなのに……?」
アンジー「などっていうのが気になるんだけど……やめとこっか……知りたいと思った時の本人の意思に任せよう……?」
ちなみに、もし行ってても旅に出てて誰もいなかったのでセーフである。
聖美「うーん……じゃあ知りたいと思ったらいつでもしっかり細かく手取り足取り教えてあげるって言うのは……?」
アンジー「……ダメ……」
今日はそういう日。昔は今日すると早死する、なんて言われていたそうな。




