2020年4月24日 少女マンガ誌の創刊日 ターニングオーバー! イケメンファイブ! 第1話
2020年4月24日
私の名前は聖美。今日は私の通っている学園についてお話しするね。
この学園はね、宇宙最高峰の学園だって言われてるの。なんでかって? それはもちろん、「イケメンファイブ」……彼らがいるから。
何の特徴もなかった私はあの日、彼らと接点を持つことになったんだ。
それはいつもと変わらない放課後。私はこの学園で過ごす生徒の命題である日めくりの完遂を達成するために、学園内を散策して何かネタがないか探し回っていました。そんな時のこと……。
マリオン「かーのじょ☆」
聖美「はい……? えっ?!」
マリオンさん!? そこにはイケメンファイブのマリオンさんが立っていました!
マリオン「日・め・く・りっ。やってたの?」
朗らかな表情、気持ちのいい声、こんな近くで見たことも聞いたことも無いよ!
聖美「ひゃ、ひゃいっ……」
ひ、ひえぇーっ。マリオンさんに話しかけられちゃった! 赤を基調にした特別制服を着て、イケメンファイブを統率するみんなのヒーロー、マリオンさん! どんな荒くれ者が来ようと、この柔らかな笑顔で一撃粉砕。風紀委員長で学園の秩序を守りながら、それでいて定期的に地域清掃行事まで取り仕切るすごい人。
マリオン「偉いねっ。ぼくも一緒にやっていいかな?」
どど、どうしようー! イケメンファイブにアポ無しで話しかけたりしたらいじめっ子女子たちに目をつけられちゃう……でも話しかけてきたのはマリオンさんだし、無下には出来ないよ……っ
ルネリオ「おいおいマリオン……まーたナンパしてんのかよ?」
マリオン「あーっ、ルネリオ。違うよ、彼女、日めくり頑張ってたからさ、手伝うことあるかなと思って。その言い方だと、ぼくしょっちゅうナンパしてるみたいで人聞き悪いぞ~」
う、うわーっ! 今度はルネリオさんが現れた! 前方のマリオンさん! 後方のルネリオさん!
ルネリオさんはスポーツ万能で、何をやっても常勝無敗なの! サッカーではゴールキーパーを担当して、自分のゴールから相手のゴールにまでシュート! これを外したことはないんだ!
その極めつけはこの前の助っ人で呼ばれたカバディの試合だよ! 相手は悪のカバディプロ連合。カバディのプロオールスターが近郊の学園の弱小カバディチームに戦いをしかけたの。負けたらそこの生徒は全員強制労働所行きの大変な試合だった。
そこに救援に呼ばれたルネリオさん。でも横断歩道を渡ろうとしていたおばあさんを助けていたルネリオさんは試合に遅れて、試合時間はもう残り15秒というところだった。スコアは2000対0。勝ち目は40%もない。
でもね。……ルネリオさんはチームに入って、こう言ったの。『カバディッ!!!!』
ルネリオさんはルールを知らなかった。でもみんながカバディカバディ言ってるから、とりあえず気合を入れてカバディと言った。それだけで決着がついた。相手はみんなプロ。ルネリオさんのカバディコールはあまりにも最強のスポーツプレイヤーだって事を表しすぎていたの。だから勝てないと踏んでプロは降参した。
ルネリオ「ったく。ヘイ・ベイビー。マリオンは確かにいい顔してるけどさ、俺と一緒に日めくりしようぜ……な?」
やだっ、壁に追い込まれて逃げ道を片手で封じられちゃって動けないっ。ルネリオさんったら前かがみになるし、その上前のボタンがはだけてて……細マッチョな身体が目に焼き付いちゃうよぉっ!
でもそこにもう一人……。
イクス「おい、僕の研究室に来ないで何をやっているルネリオ、今日はお前の筋肉からP≠NP予想との関連性と導き出した答えの最終確認をする日だと言っただろう。何を遊んでいる」
イクス君まで!? 彼は至高の天才なの。これまで数々の「未解決問題」を全て10歳までに解決して、全宇宙の謎とされてきた事全てを紐解いてきたすごい科学者。でもその結果人類はあまりにも小さな存在であると言うことを証明してしまった……その事実を公表したら世界人口の9割は絶望して何をするかわからない。
だからイクス君はその見つけた真実を唯一人、自分の中だけにしまい込んだ……だから誰も絶望はしなかった。イクス君がみんなのために重苦しい真実を背負ったから……その話はあまりにも有名で、私はすっごく尊敬してるんだ。
それに、少しでも楽しいことをって考えたイクス君のおかげでうちの学園の修学旅行先は銀河の中心になったんだ。銀河の中心まで宇宙船イクス号で2時間だから、みんな銀河の大きさを知れてないのもポイントだよ。
ルネリオ「わーるいわるい。途中で子猫ちゃんを見つけちまってよ。ほら、このベイビー、すごく可愛いだろ?」
聖美「んっ……」
ルネリオさんったら、私の顎を持ってイクス君に……。
イクス「べべべ、別に可愛くなんてっ……あ、いやっ、あの、あなたに言ったわけじゃなくてっ。えとえと、ごご、ごめんなさいっ……」
イクス君は赤面したと思ったら、次に泣きそうな困った顔でそう言った。え~! こんなイクス君の表情初めてみたよ! いつもキリッとしててかっこいいのに、女の子には弱いんだ……ギャップ~!
サイ・カーロン「全く。見苦しいな、てめぇら。一人の女の子にそんなに束になって……」
サイさんまで!? もうー! 今日はどうなっちゃってるのぉー!?
サイさん……そのルックスと美声は全ての生物を魅了してきたの。特にアイドルとしての活動は大変。彼が息をしたところ、歩いたところ、まばたきをしたところ、半目になったところ、生きてるところ……どこでもいい、彼の姿を写した全ての写真が最低で3億円で取引されるし、いくつもルーブル美術館に寄贈されているの。
もしも彼がインスタに自撮りなんてあげたらもう大変。最低でも世界人口の240%分の「いいね」が付くんだもん。この世界の何人もがサイさんの写真にいいねを押そうと新しいアカウントを作るんだから……それくらいルックスがいいの。
サイ「全ての女の子は、……オレのもんなんだからよ」
サイさんはそう言いながら近づいてくると、私の肩にあったルネリオさんの腕を払い除けて、耳元で「なっ……?」と囁いた。マリオンさんが「やめなよー! ぼくが先に声をかけたんだぞー!」と張り合ってる。えぇ~! もしかしてみんな私のこと……!
聖美「そ、そんなの決められないですっ……」
私は目一杯瞳を閉じてそういった。
サイ「……なに? お前、オレの囁きに落ちねーのか……?」
サイさんは私の顎をくいっと持ち上げて瞳を覗き込んできた。
サイ「へぇ……キレイな瞳、してんじゃん。ふーん、おもしれー女……気に入ったぜ。覚えといてやる。生徒手帳よこせよ……」
そうしてサイさんは私の胸ポケットに入れていた生徒手帳を何の躊躇もなく取り出した。
サイ「……聖美、ね。覚えたからな、聖美。ゼッテーに落としてやるよ、覚悟しときな」
マリオン「聖美ちゃんか~! 困ったらいつでもぼくに相談してね!」
ルネリオ「ふっ、おもしれぇ。おい聖美、明日からお前はオレの専属マネージャーだ。断んじゃねぇぞ」
イクス「き、聖美さんっていうんだ……ぼ、僕は女の子になんて興味ないけど……っ」
ふぇ~ん!! 私のこれからの学園生活、いったいぜんたい、どうなっちゃうの~~~!?!?
というストーリーはあるような無いような。今日は少女マンガ誌「マーガレット」が創刊された日。




