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2020年4月16日 五人少女喫茶

2020年4月16日


 カランカランと扉についたベルが鳴り、開いた扉から三人組のミニーズが顔を出す。そこは最近出来た喫茶店だ。コーヒーの香りと、やや賑やかな店内。


留音(るね)?「いらっしゃいマッスルーーー!」


イリス「!?」


 マスターのような出で立ちをした留音(るね)がミニーズを出迎えた。


真凛(まりん)?「わ~! よくいらっしゃいましたぁ☆☆☆ 初めてのお客さんですね?? 清潔ですかぁ? ばっちかったら塵芥となるまで嬲ってぶち殺しちゃいますよ~~!!」


アンジー「だ、大丈夫です、キレイです……」


真凛(まりん)?「それならよかったです♪♪ それじゃあお席にごあんなーい!」


聖美(きよみ)「(なんだかラジカルだねっ……)」


真凛(まりん)?「ご注文決まりましたらお呼びくーださい♪」


聖美(きよみ)「あ、ありがとう真凛(まりん)ちゃん」


真凛(まりん)?「v^^v」


 というわけでメニューを渡され、三人はエスプレッソとパンケーキを頼むことにした。アンジーが「すいませーん」と手をあげて店員を呼ぶ。真凛(まりん)は接客中で、代わりに来たのは茶髪のお嬢様だった。


西香(さいか)?「よくいらっしゃいましたわ皆さん。ご注文はお決まりでしたか? 何にいたしましょう?」


アンジー「あ、西香(さいか)ちゃんだ……えっと、じゃあエスプレッソ3つと、これとこれと……」


西香(さいか)?「あら。よろしくて? お客様。こちらのエスプレッソね、今はラテがおすすめですの。あまり大きな声では言えませんけど、実は少し良い牛乳を使うようになったのです。今日からですわよ。ちょこっとだけお値段は上がってしまいますけど、とっても美味しいの。お飲みになってみませんか……?」


 西香(さいか)はアンジーの耳元に近づいて、三人にギリギリ聞こえるような声量でそう言った。それから「ふふ♪」といたずらに笑って見せる。


イリス「じゃ、じゃあそれにしてみようかしら……ね?」


聖美(きよみ)「う、うんっ、じゃあそれで……」


西香(さいか)?「ありがとうございます。うふふ、それでは今お持ちしますから、少々お待ち下さいませね」


イリス「こんな感じになるのね、西香(さいか)は……」


 しかしこれは一体どういうことなのか。ミニーズはわかっている。


留音(るね)?「アイよぉ!! パンケーキな!! まかせろてやんでぇ!! 卵はこうやって!! 両手で割るんだよォ!!!!」


西香(さいか)?「留音(るね)さん。いけませんわ、そんな乱暴に。手を怪我してしまいます。気をつけなさって」


衣玖(いく)?「……」


 カウンターには給仕服の小さな女の子が座っている。衣玖(いく)だ。ただ黙ったまま無表情でうごかない。


聖美(きよみ)「あっ、衣玖(いく)ちゃんもいる……ちゃんとちっちゃくて可愛いねっ」


アンジー「ホントだ……すっごい静かだけど……あ、目があった。やっほー」


 アンジーが衣玖(いく)に手を振ってみた。


衣玖(いく)?「……」


 衣玖(いく)はスッと目をそらしてうつむいてしまう。


イリス「……店員なのよね? 喫茶店的にどうなの……?」


聖美(きよみ)「うーんでもこれはこれでいいのかも。居るってだけで可愛いし……ぽいといえばぽいのかな……」


 やがて、先に西香(さいか)おすすめのエスプレッソラテが出来上がったらしい。ただ真凛(まりん)西香(さいか)も他の客の相手で忙しそうにしている。


留音(るね)?「ほら、衣玖(いく)、あっちのお客さんに持っていってやってくれ」


衣玖(いく)?「……や」


留音(るね)?「おいおいおい! もっと声をはれよぉ! 元気いっぱい! それこそが五人少女ってもんだろぉ!!」


衣玖(いく)?「……はぁ」


 とぼとぼと衣玖(いく)がトレーを持ってミニーズの元へ来た。トレーの上に置かれたエスプレッソラテを差し出し、でも配る気は無いらしい。勝手に取れという感じでトレーをずいっと机の中心に近づける。


聖美(きよみ)「あっ、じゃあもらうねっ……」


アンジー「ありがとう、衣玖(いく)ちゃん」


イリス「マぁジィ……?」


 トレーの上が片付いた時点で、衣玖(いく)は無言で戻っていき、また先程と同じ席に座ってぼやーっと店内を見回している。その後ろから留音(るね)が「よくやったぞぉ衣玖(いく)!! お前は偉い! 100点、いや120点満点だ!!!」と褒め称えていた。


 ちなみにエスプレッソラテは普通に美味しく、後ほど届いたパンケーキもまた癖がなくて普通に美味しいものだった。


 それから時間が過ぎて、ミニーズはレアイベントに遭遇する。店内の照明が少し落とされると、店の奥から更に少女が出てきたのだ。


 すると店内で活動していた四人は我先にとその少女の前に整列した。


あの子?「みんな、ご苦労さま。皆さん、ご来店ありがとうございます」


 店内からは拍手があがっている。


あの子?「真凛(まりん)ちゃん、今日はだれも殺してない?」


真凛(まりん)?「はぁい! 今日はだぁれも殺さずに済んでまぁーす☆☆☆」


あの子?「うんうん。西香(さいか)ちゃんはどうかな? 皆さんに喜んでもらえてるー?」


西香(さいか)?「もちろんですわ。わたくしは皆さんの笑顔が見られるのが一番うれしいんですから」


あの子?「衣玖(いく)ちゃんはお客さんと喋れたかなー?」


衣玖(いく)?「……そこの。やっほーって」


 衣玖(いく)はぼんやりアンジーを指で示してボソリと言った。


あの子?「うんうん、ちょっとずつだね。留音(るね)ちゃんはオーダーこなせてる?」


留音(るね)?「ヘヘッ! あちきを誰だって思ってんだよ! バリバリ最強さ! もっと張り合いがほしいってもんよ!」


あの子?「みんな元気いっぱいだね! それじゃあみなさん、今から十分間はオーダーストップ。みんなのお歌を楽しんでくださいねー! いくよぉみんなっ! 五人少女シリーズ主題歌『ニコニコ☆ エブリデイ↑↑』」


 イントロが流れ始めた。いつのまにか五人はマイクを手に取っており、中央のステージに集まって身体でリズムを取り始めた。


イリス「……なにこれ!?」


聖美(きよみ)「4期のオープニングテーマだよ! わぁっ」


 聖美(きよみ)は他の客と同じように手拍子を始めている。


アンジー「世の中って広いね~……あっ、衣玖(いく)ちゃんも普通に歌ってる」


イリス「これがコスプレ喫茶……この国は本当に面白いわ……」


 解釈違いというものが起こってしまうタイプのなりきりフェアであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 衣玖ちゃん可愛い。留音ちゃんは何をやっても寿司屋になりますね。
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