2020年3月30日 マフィアの日
2020年3月30日
そのファミリーは通称ミニーズ。新しい地区への進出を目指してこの場所へやってきた。この場所、つまりは通称"ファイブス"が管理する地区である。
さてファイブスとは。この地区を管轄するマフィア・ファミリーのことである。ファイブスにはそれぞれ管轄があり、ミニーズファミリーはその一つへと足を運んでいた。全員ダークなカラーのスーツ姿に深めの帽子を被った1950年代のアメリカマフィアの出で立ちである。
ドン・留音「それで……どうしてあたしのところへ来た? 新勢力マフィアのミニーズ」
ドン・留音。ファイブスきっての武闘派として知られている。ミニーズはある情報筋から、留音が最も籠絡しやすい相手であると踏んで乗り込んできたのである。
ドン・聖美「初めまして、ドン・留音……今日はあなたと友好を深めに……こちらをお持ちしました」
ドン・留音「ほぉ、ドン・聖美……あたしに取り入れろうって?」
ちなみに全員、ドンの意味はわかっていない。マフィアの頭にはドンがつくんでしょ、という程度でつけている。
そしてドン・聖美はトランクを取り出して机に置くとパチンパチンとロックを解除し、トランクをくるんと回して開く側をドン・留音に向ける。
ドン・留音「言っておくがね。あたしは金程度じゃ動かない。何を用意してきた?」
ドン・イリス「……これよ」
そうして開かれたトランク。中にはパック詰めされた白い粉が大量に入っていた。
ドン・留音「ふむ」
満足そうにそのパックを取り、袋の外から内容物を確認する留音。
ドン・アンジー「上物です」
ドン・留音「……どこのだ?」
ドン・聖美「限定品です。アマゾネスの」
ドン・留音「なるほど……見たところホエイか。ナカは?」
ドン・イリス「23g」
ドン・留音「値段は?」
ドン・アンジー「1kgあたり、2000円です」
ドン・留音「ほぉ……内容量にしてはずいぶん安いな」
そうしてドン・留音は中身を確かめるべく、袋を軽く破り、小指にその粉末をつけてぺろりと舐めた。
ドン・留音「……なんだこれは。たしかにホエイなのはわかる。でもこりゃ……」
ドン・イリス「味がしない。そうでしょう?」
ドン・留音は頷き、首を傾げた。
ドン・聖美「これの良いところは本来の味のみの濃縮ホエイということです。つまり……好きな味に簡単に調整できる」
ドン・留音は軽く顎をあげて頷いた。低コストで効果は十分、そして自分の好きな味にカスタマイズ可能。悪い商品ではない。しかしドン・留音の様子はまだこの秘密会合について大きな価値を感じていないようだ。
ドン・アンジー「もう一つ用意しているものがあって……こちらです」
トン、と置かれたのは、今度は紙で包まれた茶色い粉末。ドン・留音はそれを再びぺろりと舐めた。
ドン・留音「こ、これはっ……」
興奮した様子で再びその粉を舐めるドン・留音。
ドン・聖美「そう。ミルクティー味です。マイルート製の」
ドン・留音は聞き返した。マイルート製、だと?
ドン・留音「あそこはミルクティー味を作っていなかったはずだ。どういうことだ?」
ドン・アンジー「我らのコネクションでおさえました。今後発売される新作です」
ドン・留音は意外な上物が出てきて驚いているようだ。
ドン・留音「しかもこのサラサラ感。そしてやや感じられる苦味……BCAAを配合しているな」
BCAA、必須アミノ酸である。運動の前後で摂取することで筋肉に非常に良い効果を生む。
ドン・聖美「流石です、ドン・留音。この他にも各種ビタミンに加え、濃いめの味で美味しく調整されています」
ドン・イリス「まずは今日だけで300g。今後我々と組むかどうか、これで考えていただきたい」
ドン・留音「……よし、いいだろう。このミルクティー味は確かに美味しい。お前たちの名前は覚えておく」
そうしてドン・留音はどこかへ電話をかけた。どうやら相手は管轄内にある施設らしい。
ドン・留音「……今日そっちに空きはあるか? ……あぁ、良いプロテインが入った。早速キメたいんだ、予約をとっておいてほしい」
こうしてミニーズは着々と勢力の拡大を進めていく。ミニーズの勢力拡大におけるロードマップは既にある程度はっきりと見定まっているのだ。
この次にはドン・衣玖を訪ねる。彼女はアニメグッズなどを好むという。ミニーズは三人での移動中に、商談時よりは砕けた口調で話をした。
ドン・アンジー「それで、ドン・聖美ちゃん。次の交渉には何を用意しているの?」
ドン・聖美「うん、ドン・衣玖ちゃんにはコレ……応募者抽選で貰えるアニメ原画に声優さんのサインがされたものだよ」
ドン・イリス「なるほど、表の世界じゃ見ることが出来ない……とんだ裏物ね、まさかドン・聖美がそんなものを入手していたなんて」
ドン・聖美「結構頑張って応募したからね……これでドン・衣玖ちゃんもこちらへ引き込むことが出来る……」
ドン・アンジー「あとはドン・西香ちゃん。彼女はお金か……一番単純だけど……」
ドン・イリス「しかし取り込むデメリットが大きい。あいつはあえて引き入れないことでドン・真凛との同士討ちを狙うわ」
ドン・聖美「うん……でも事前の情報で掴んでてよかったね。ドン・真凛の持つ『なんでも片付ける道具』が武器じゃなくて掃除用具の事だったって」
ドン・アンジー「うん。武器商人との繋がりは厄介だからね……街のスーパーとの繋がりだけならおそるるに足りないよ」
ドン・イリス「こうしてあたしたちのファミリー統合が進めば、きっとドンの中のドンであるドンドン・あの子もほっとするでしょう……ドンドン・あの子の直下に立つのはあたしたちよ」
ここから二大ファミリーによる血で血を洗う大抗争に発展していく事となる。(ゴッド美少女・愛のテーマにのせて)




