表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
261/414

2020年3月16日 財務の日

2020年3月16日


 今日はいつもの五人少女宅。タイトルから分かる通り、張り切っている守銭奴が約1名。


西香(さいか)「さて皆さん。今日はわたくしと一緒に、お金をしっかりと確保するためにはどうしたらいいのかを勉強していきましょう」


 当然、西香(さいか)である。本当は教えたくないらしいが、記念日に妥協して教えるそうだ。


留音(るね)「あーぁー。財務って聞いた瞬間に出てくると思ったんだよな~……」


西香(さいか)「出てきますわよ。財と聞けば出てきますわ」


真凛(まりん)「えーなんだぁ、静かなのは1日だけかぁ……」


 ちなみに昨日、西香(さいか)が死んでいたから静かだった、という話である。


西香(さいか)「あら真凛(まりん)さん、その話も入れようと思いましたの。はいレッスン1。取れるところから取れ、ですわ」


真凛(まりん)「(しまった)」


西香(さいか)「いいですか、わたくしは昨日健康を害されましたね。誰に? ストーリー的にいえば真凛(まりん)さんで間違いないでしょう」


留音(るね)「健康を害されたっていうか、死んでたけどな」


西香(さいか)「そうです。そんな時はこれ、損害賠償というやつですわ」


 はい、トン、とどこからか取り出した小型のホワイトボードに「そんがいばいしょう」と書かれていた。


西香(さいか)「こちらが利益を被り、そして相手に非がある。そんな時にはこの損害賠償を求めることが出来ます。例えば昨日、わたくしはどうやら真凛(まりん)さんに殺害されていましたね。であれば昨日わたくしが出すはずだった可愛さ利益を真凛(まりん)さんに支払っていただくことになります」


真凛(まりん)「で、でもあれは記念日をやる上で……」


西香(さいか)「おだまりなさい真凛(まりん)さん! なんであれ説得力を出してしまったあなたの負けですわ!」


留音(るね)「そもそも可愛さ利益って?」


西香(さいか)「わたくしが発揮する可愛さによって増加したファンから受ける利益の事ですわ。昨日は丸一日分ファンが減りましたからね。当然損害賠償も……」


 その発言に割り込むように衣玖(いく)が言う。


衣玖(いく)「でも西香(さいか)は黙ってたほうが人気という説もあるわよ」


真凛(まりん)「そうですよぉ。最近は不健康な子も人気が出たりするようですし……昨日みたいに肌が青白くてうなだれがちだった昨日の西香(さいか)さんを好きになった方もいますよぉ……」


西香(さいか)「なるほど。まぁ確かに出演はしましたし、わたくしったら黙ってても完璧に深窓の姫君になってしまいますからね。仕方がありませんわ、真凛(まりん)さんへの損害賠償は求めずにいてあげましょう」


真凛(まりん)「は~、めんどくさかった~」


西香(さいか)「さて、本題に入りましょう。財をなすためにはどうすれば良いのかを。わたくしのように完全なる美少女であれば、すこしカメラを使うだけでインターネッツを通じてじゃんばり稼ぐことも出来ますが……今日制定された記念日から、とある方のエピソード交えて説明いたしましょう」


留音(るね)「とある方って?」


西香(さいか)「皆さん、ビタミンというものはご存知ですわよね。栄養の」


留音(るね)「あぁもう超お世話になってる」


衣玖(いく)「割とちゃんと日めくりをするつもりみたいね」


西香(さいか)「かつてこれを抽出したのは誰だったのかご存知ですか? ご存じないでしょう。わたくしもお名前は忘れました」


衣玖(いく)「鈴木梅太郎博士ね。脚気の治療方法を見つけるためにチアミンという栄養素を発見したの。今で言うビタミンB1の事ね」


留音(るね)「へぇー……」


西香(さいか)「そんな話はどうでもいいんです。その博士とやらが何をしでかしたか。今日はそこに焦点を当てますわ」


真凛(まりん)「何をしたんですかぁ?」


西香(さいか)「その方はですね、なんとかという名前でその栄養素を発表しました。ですがいま現在、その名前は知られていませんわ。なぜなら今はビタミンと呼ばれているからです」


衣玖(いく)「ちなみになんとかっていうのはオリザニンね」


西香(さいか)「そんな話はどうでもいいんですの! とにかく、何故今ビタミンと呼ばれているか……それはですね!! この博士は! 発表が後手後手になったからなのです!」


留音(るね)「はぁ」


西香(さいか)「抽出の成功は早かったのに、発表にもたついて……それによって別の方がビタミンとして発表し、結果的にビタミンという呼び名が定着しているのです!」


 西香(さいか)はバンバンと机を叩いて主張している。


衣玖(いく)「発表はしていたんだけどね、でも訳文の関係で外国では注目されなかったみたいなの」


西香(さいか)「そんな話はどうでもいいんですの!! 新しい物を作り上げ!! 何故それをもっと誇らず、そして然るべき機関に登録をしなかったのか!! もしもそれに成功していれば今ごろ留音(るね)さんの飲んでいる栄養ドリンクに入っているモノの名前はオリザニンA、オリザニンBなどになっていたかもしれませんのよ!」


留音(るね)「でも成分は同じなんだろ? 別に変わらなくね?」


西香(さいか)「お馬鹿者ですか!! 誰に特許料、名前の使用料が入るかという話をしているのですわ! これは商業的に大きな失敗をした方のお話です!!」


真凛(まりん)西香(さいか)さんには1円も入らないし、失敗もしてないと思いますけどぉ……」


西香(さいか)「いいえ! 日本がオリザニン第一国として特許などで儲けていれば更なる経済の循環からわたくしに還元もあったかもしれません!! 稼げるところで稼ぐ! それが財をなすということ!」


留音(るね)「力強いな」


西香(さいか)「そのとおり!! まさに今日、財務の日という記念日がある日にふさわしい教訓としての出来事ですわ。はかったように今日の事ですからね!」


衣玖(いく)「一応言っておくと、鈴木博士は難病の治療のためにオリザニンを発見して最終的に特効薬にしてるから……」


西香(さいか)「はぁ。つまり何が言いたいんですの?」


衣玖(いく)「……多分、製薬の業界では利益も出てたんじゃないかしら」


 よく知らないけど。と最後に呟いた声は西香(さいか)に届いていない。


西香(さいか)「ならばよし! ただし詰めがあまいとは言っておきましょう!」


留音(るね)「何目線で話をしてるんだお前は」


 というわけで財務の日。そして今現在、ビタミンB1の生物が生存するための重要性は医学と食の文化の中で知れ渡り、インスタント食品にもしっかり入れられるようになったという。お金もビタミンB1も大事。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  伊坂幸太郎さんでしたっけ、本当に必要なもの、大切なものはビタミンやミネラルみたいにありふれてるって書いたのは。何となく思い出した。そんな感想。
[一言] >こちらが利益を被り、そして相手に非がある。そんな時にはこの損害賠償を求めることが出来ます。 いえ、どちらかと言うとヤクザの因縁つけの方が近く感じました(^_^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ