2020年3月7日 誰が決めたか花粉症記念日
2020年3月7日
イリス「ふふ……まずは真凛、お前から喰らえ!!"花粉症状魔法!!"」
真凛「わわっ! ……ぃきしゅ!(くしゃみ)」
イリス「ふははは! どうだ真凛! これが花粉症よ!!」
真凛「あうー……鼻が垂れてくる~……花粉症になっちゃったみたいですぅ……きっしゅ!(くしゃみ)」
なぜだか嬉しそうな真凛。イリスはまいったかと満足そうである。
聖美「イリスちゃん、すごいよね……真っ先に真凛ちゃんでも攻撃する感じ」
アンジー「うん。真凛ちゃん、意外と寛容っていうか、なんで嬉しそうなんだろう……」
というわけで、今日はまさかの花粉症記念日。記念日からとっておきの魔法を作り出すイリスにとって、それはまたとない僥倖。花粉症による能力の弱体化を魔法に込めて行使する。
イリス「我ながら恐ろしいわ……アレルギー症状を魔法に変えるなんて。悪魔の所業ね……しかしこれも奴らを倒すため。この調子で全員弱体化させる!! さぁ次は……」
聖美「あっ! 西香ちゃん発見!!」
イリス「覚悟しろ西香ー!"花粉症状魔法!!"」
炸裂する花粉魔法。花粉持ちには絶対見たくない黄色っぽい粉が西香を襲った! のだが。
西香「あらミニーズの皆さん。なんですの奇声をあげて」
西香は魔法の花粉を煙たいなと軽く手でひらひらと払い、なんでもないようにそう言った。
アンジー「あれ……これ効いてないんじゃない……?」
聖美「西香ちゃん、鼻がムズムズしたりしない?」
西香「わたくし、いつでもこの綺麗な声が通るように鼻と喉のケアは怠りませんわよ」
アンジー「そうじゃなくて……なんか効いてないみたいだね、花粉症になる魔法……」
西香「なんてバカみたいな魔法作ってるんですの」
イリス「どっ、どうして……! 花粉症は日本人の多くが悩まされて大変な思いをしているのにわからない人にはとことんわからないことで心のすれ違いが生まれるほど大変なものだと聞いたのに!」
西香「はぁ。そう言われましても、わたくし花粉症にはかかりませんから。というかなんですの? 花粉症になる魔法だなんて唐突に」
アンジー「今日が花粉症記念日だからイリスちゃんが作ったんだよっ」
西香「ぷっ! 花粉症記念日! なんですのそれ! そんなのあるわけないじゃありませんか!」
アンジー「あったんだよぉ。調べたら書いてあったもん」
イリス「そうよ。なんでも花粉飛散の情報公開が最初にされた今日を記念日にしたって」
西香「本当ですのぉ? 本当に花粉症記念日なんてのがあったんですのぉ? そんなの存在し得ないと思いますけどねぇ」
イリス「あるわよ! 便利なインターネッツに書いてあったんだから!」
だがそこで聖美が俯いてすこし静かになっていることにアンジーが気づく。どうしたの? と声をかけると、聖美は話しにくそうにこう言った。
聖美「あの……実は、怪しいんだ、花粉症記念日……さっきちょっと調べてたんだけどね……これ見て……?」
聖美がスマホの画面をアンジーに見せると、アンジーはそれを読み上げていく。
アンジー「制定した組織、団体、目的も全て不明だが何故か定着している。花粉の観測についての話も気象庁は事実無根であると解答している……?」
ちなみにその記念日では気象庁の名前が使われているが、本来花粉の情報は環境庁が扱うというのも謎なポイントなのである。
イリス「ま、待って。つまりどういう事?」
聖美「うん、あのね、つまり……ネットには確かにあるけど、本当に制定された記念日じゃないかもしれないって事……」
西香「ぶっは!! そうですわよ! そんなこったろうと思いました! わたくしの読みって本当にするどいですわ! なんたって! 花粉症ですわよ!?」
イリス「っく……信憑性が落ちた途端に練り上げた花粉症魔力が下がっていく……!」
ちなみにこの時点で真凛にかけられた花粉魔法は解かれている。
西香「まぁイリスさんですもの。もともとの世界に花粉症はなかったのでしょう? でしたら教えておいてあげます。花粉症なんてそもそも存在しませんのよ」
イリス「えっ、そうなのっ? でも色んな人が花粉症に悩まされてるって見たわよ……?」
西香「そう。一時期流行ったんですのよ。花粉症という症状が。トレンドですわね。それで誰もが花粉症を患った。花粉が飛べば花粉症になる。そんな考えが蔓延した結果が今の日本ですわ。でもいいですか、そもそも花粉症というのは思い込みでなるものなのです。逆もしかり、思い込みで治るどころか、思い込みでならずにもいられるものですわ」
アンジー「すごい自信満々に何か言ってるけど……」
西香「わたくしを御覧なさい。この花粉の中、マスクなどつけずとも花粉症になどなりません。何故か? わたくしは心から花粉症にはかからないと思っているからですわ。そもそもウィルスではない花粉が体に入って何故風邪のような症状が? 冷静に考えればわかることでしょう。衣玖さんもあれは思い込みだと言っていましたからね」
アンジー「衣玖ちゃんが……じゃあそうなんだきっと……思い込みでならないもんなのかぁ……」
聖美「私、ブタクサ花粉の時期にちょっと咳き込んだりするけど……」
西香「ですから最初に記念日なんて言われた時点でわたくしにはわかっていました、花粉症記念日などありえないって。おばけと同じ、そもそも存在しない病気に記念日などつきますか。踊らされましたわね、インターネッツの闇に」
イリス「くぅ……っ、うまく行きそうな気がしたのにガセネタじゃ仕方がない……みんな、撤退よ!」
西香「ふっ、まだまだ未熟ですわね、ミニーズ。青いですわ」
――――――――――
これはいつか、かつての話。こんな事があった。
西香「花粉症が流行っているようですわね。しかし妙な話ではありませんか。たかが花粉で風邪のような症状が起こるなんて。さっきのテレビで体が勘違いして起こっている反応、だとか言われてましたわよ? なんですの勘違いって」
衣玖「ほんとよね。だから強い意思で花粉だと自分が認識すれば花粉症ってならないのよ」
西香「そうなんですの? そうですわよね? 体が勘違いしたって、自分の脳が花粉だと認識していれば問題ありませんわよね?」
衣玖「その通りよ。だから花粉症って気合で治るのよ。というかそもそも、なるのがおかしいの。昔はなかった症状なのよ? でも花粉症という言葉がどこかで出来てから、爆発的に症状を訴える人が増大してるの。みんな『自分もなってしまうかも』って思うからよね」
西香「やっぱり……わたくしのように確固たる意思の強さを持って花粉を認識すれば皆さんあんなに苦しまずに済むのに。はぁ、凡人って本当に哀れなこと。やっぱりそれじゃあ、わたくしは花粉症にはなりえませんわね。一安心ですわ」
そう言って満足そうに立ち去っていく西香の後ろで、それを聞いていた真凛が小声で衣玖に話しかけた。
真凛「……衣玖さん、今の話本当なんですか?」
衣玖「嘘に決まってるでしょ。花粉症は発作と反復性を持った症候群、I型アレルギーの一つだし」
真凛「ですよねぇ……西香さん、すごく満足そうに話聞いてましたけど……」
衣玖「ああ言っとけば少なくても西香が花粉症にかかって構ってやらなきゃならないというリスクが一つ減るわ。……西香が病気するとやたら辛がるでしょ。こっちがノイローゼになっちゃうから……仮に花粉の時期に症状を訴えても気のせいで通せる」
真凛「なるほど~。でもこれで本当に花粉症にならなかったらすごいですよねっ」
衣玖「そうね。完全な抗体を持ってるか、バカは病気しないのってのを地で行ったかよ。まぁ後者なんだけど」
花粉辛い人は気合や思い込みよりも医学的に症状を良くすることを考えよう。しかし花粉症記念日だけは本当に謎である。




