2020年2月26日 流刑からの脱出の日
2020年2月26日
五人少女の一人でありながら、一味を追われた西香。かつてのナポレオンが流刑にあい、その島から脱出を遂げたのが今日この日である。西香は流刑にあったわけではないのだが、家の鍵が閉まっており、何度呼び鈴を押しても家の中の誰も反応してくれなかった。
誰かの怒りを買ったのかなんなのか。理由はわからないが心当たりはいくらでもある。
西香「おのれおのれ……わたくしを追放しても無駄ですわよ……かならず元の場所へ戻ってみせますわ……」
再び五人少女へと戻り、地位を取り戻す戦いが、今始まる。
西香「まずは駒が必要ですわね……まぁこういう時のためのミニーズの皆さんでしょう。というわけでミニーズの皆さん、一緒に力を合わせてあの方たちを下しませんか? 成功の暁には労いの言葉を贈りましょう」
西香は聖美宅を訪ねていた。そこにはミニーズの三人がいつものように集まっており、面倒くさそうに西香を出迎えている。
イリス「遠慮しとくわ」
アンジー「ちょっとねぇ……」
聖美「ごめんねー……」
西香「念の為補足しておきますが、労いの言葉というのはわたくしか直接贈るものですわよ?」
イリス「だからいらないのよ」
その言葉にうなずく聖美とアンジー。
西香「きぃー! なんでですの! あなた方だって目の敵にしているじゃありませんの!」
イリス「でも敵の敵は味方ってわけでもないのよね。特にあんたじゃね……」
西香「どういう意味ですか! しかし皆さん! 考えてみてください! わたくしの下につくということは実質あの子もついてくるということですわ! つまり最強です! あの子がいることで奴らはわたくしたちに平伏することになりますわ! わたくしチーム勝利確定!! わかってらっしゃる?!」
アンジー「もう下につくって言われちゃってるのがねぇ」
聖美「でもどうして突然みんなを下したい、なんて言い出したの?」
西香「……お家に帰ったら、鍵が開きませんでしたの。何回呼び鈴押しても誰も出てくれなくて……」
イリス「鍵を忘れて家を出た鍵っ子か」
西香「きっとわたくしを追放したんですわ……真凛さんの美味しそうなプリンを勝手に食べたから……いや、それか衣玖さんの部屋に勝手に入ってゲームのアカウントにあったレアアイテムをRMTしたからでしょうか……それとも留音さんの部屋に勝手に入って作っていたプラモデルのパーツの一つを棚の奥の方に落として行方不明にしてしまったことがバレたのかもしれませんわね……」
アンジー「すごくろくでもないねぇ……」
西香「でもぉ! 一人家の外に置き去りにして追放なんて酷すぎますわよ!」
イリス「それは然るべき措置というものよ」
聖美「あの、じゃあ家に入れたらいいの?」
西香「そうですわね。とりあえず入って、わたくしは復位を遂げる予定ですわ」
聖美「……ねぇイリスちゃん、鍵開けの魔法とかある?」
イリス「あるけど……はぁ、仕方ないわね。家に帰して、あとは知らないって方がこっちも気が楽か」
というわけで五人少女宅へ移動する西香とミニーズ。西香は再び呼び鈴を連打している。ピンポン、の音がピポピポピポになるくらいの速度での連打である。知らない家にやったら即通報レベルだ。
アンジー「家、静かだけど……これ単純に誰もいないだけなんじゃ……」
西香「さぁイリスさん! 出番ですわ!」
イリス「しょうがないわね……"解錠呪文!"」
イリスが指で鍵部分を撫でながら魔法の呪文を唱えると、ガチャンという大きめの解錠音とともに扉が開いた。
西香「ぉほーっほ! やりましたわー! ざまぁ見なさい皆さん! わたくしの凱旋ですわよ!!」
西香は家に入るとドタドタとリビングやら近くの部屋やらを開けっぴろげているのだが、どこからも反応はなく。
西香「どうやら本当に誰もいないようでしたわ。もしかしたら追放はわたくしの勘違いだったのかもしれません。ともあれご苦労ミニーズの皆さん。もう帰っていいですわよ」
イリス「ほら、こんな風になるのよ。帰るわよ二人共。ポータルですぐ帰れるからいいけど……」
聖美「あっ、待って。ねぇ西香ちゃん、ちょっとおトイレ借りてもいい?」
イリス「聖美、ポータルで二秒で帰れるんだからトイレならうちのをモガモガ」
聖美はイリスの口を手で押さえつけている。
聖美「お願い西香ちゃん、そうだ、喉乾かない? このまえ真凛ちゃんがお茶を淹れてるところを見てるから、私も淹れてあげられるよ?」
西香「ふむ。よろしい、皆さんが帰ってくるまで暇かもしれませんわね。聖美さん、おトイレはここを真っすぐ行ったところですわ。出たらしっかり手を洗ってくださいね。仕方がありません。ついでに皆さんも上がりなさいな。わたくしをもてなしてください」
聖美「ふふ……やったぁー……」
聖美が陰を帯びた笑いをしているのを、アンジーは見逃さないで「聖美ちゃん……?」と不穏さを隠しきれないで声にしていた。
それから約二時間ほど、ミニーズは五人少女の家で過ごすことになる。その時間に聖美は4回トイレにたった。アンジーは何故なのかなんとなく気づいていたが、怖くて言及しなかった。それからみんなが帰ってきて、ミニーズは帰宅する。こころなしか聖美の肌の艶が良かった。
留音「あのな、お前が映画見に行かないって言ったんだからな?」
西香「わたくし見に行かないとは言ってませんわ! つまんなそうで行ったら絶対退屈して眠ってしまうかもと言っただけですわ! そうやってわたくしを除け者にするんですわね!」
衣玖「西香、今日はファンクラブがあるって言ってたじゃない。それが終わったらちょうど帰ってくる時間同じくらいだって。だから戸締まりして出たのに」
西香「ファンクラブなんて行く途中に飽きて行くのやめました! わたくし皆さんが映画に行ってるなんてすっかり忘れてましたし!」
真凛「それをこっちのせいにしないでくださいよぉ……」
あの子「(; ◜ ᵕ◝)」
そんな口論も、西香に関してはよくあることだ。みんな諦めて部屋に戻っていくのだが、何故かそれぞれ自分の部屋に違和感を覚えていた。
真凛「配置が変わってる……? 物がすこし動いてる……西香さんかなぁ……」
衣玖「入室記録が更新されてる。また西香が入った……?」
留音「あれ……?! なんで下着が外に出て……おい西香! お前なんか変なことした!?」
西香「はぁ? 何言ってるんですの? ……あら、わたくしの部屋から知らない香水の香りが……?」
本当に流刑にしようか、なんて会議も行われたが西香は無罪である。




