2020年2月25日 親に感謝の気持ちを伝える日
2020年2月25日
遠い宇宙の彼方のどこかで鳴り響く電話の音……ガチャリと受話器を取ったのは11月8日頃に登場していた真凛の母、通称ママリン。
真凛「ママー……」
ママリン「あっ! まーちゃーん! 久しぶり~! どうしたのぉーっ?!」
今日は親に感謝の気持ちを伝える日。思い立った真凛は久しぶりに連絡を取ったようだ。
真凛「別になんでもないんですけどぉ……元気かなぁって思って……」
ママリン「元気ですよ~! パパの方も最近やっと静かになってきたんですよ。まーちゃんは元気?」
真凛「うん。あ、ママが帰ったあとにね、新しい友だちが増えたんだぁ」
ママリン「あー! 前に言ってた子ですね! 確か三人の子たちで……今度また挨拶に行かないとですねぇ~っ」
真凛「うん、来る時は教えてね」
そんな電話の後ろで聞き慣れた声がする。「まーちゃん!? まーちゃーん!」なんて、どうやら真凛の父親も家にいたようだ。
真凛はそれからたまの親孝行だ、なんて思って、デレデレになるパパリンとも久しぶりに話をしたそうだ。
真凛「……パパもママもいつもありがとぉ……」
パパリン「まっ、まあちゃああああああん!」
真凛「パパうるさい!」
ちなみに世界滅ぼす系の家庭である。
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アンジー「お父さん、お母さん、見てみてじゃじゃーん」
アンジーは両親がいるリビングで、くるくる回って登場した。アンジーパパことパンジーは息子の女装姿をじっと見つめている。アンジーママことマンジーはパチパチと拍手している。
マンジ―「ひゃ~っ、かわいい、ほーんとに可愛い! ねぇお父さん! 本当によく似合ってるねぇ~」
パンジー「……」
パンジーは何か言いたげだ。表情を険しくさせて、一見したら何か怒り出しそうな雰囲気を持っている。事情を知らない人からすれば「女装をする息子にショックを受け、何か否定的な事を言いそう」な雰囲気に見えた。なんせパンジー、見た目はそこそこ厳格な父親なのだ。
パンジー、不機嫌そうな鼻息と共に口を開けた。
パンジー「アンジーちゃん。その格好の時はお父様、もしくはパパと呼ぶって約束してくれたでしょう。パパそれすっごい楽しみなのに」
アンジー「だって恥ずかしいじゃん。……ごきげんようお母様、お父様」
アンジーはスカートの端を淑女のように軽く持ち上げて、ぺこりとお辞儀をしながらそう言った。
マンジ―「あーーーっ! かわいいー! 本当に男の子生んどいてよかったねぇお父さん!」
パンジー「ん……本当に」
パンジーは感動しながら深く二回頷いてそう言った。アンジーは変な家族だなと思いながら、楽しそうに二人を前にしている。
アンジー「ねぇお父さん、お母さん。今日って親に感謝を伝える日なんだけど……ボクをこんな風に、可愛く生んでくれてありがとうね」
マンジー「やだもう~! もうパパったら聞いた!? なんでうちの息子はこんなに可愛いの!!」
パンジー「やめなさい……ぐす、……ちょっともう、ほら、アンジーちゃん。……ぐすっ、パパの涙なんて見るもんじゃないんだから」
姉も含めてアンジー全肯定の家系である。だからこそこんなに可愛い美少女アンジーちゃんが生まれたのだろう。
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また別のタイミングで、今度は五人少女宅。西香が電話をかけていた。
西香「それでお父様、わたくしわざわざ電話してあげたの。嬉しい? 嬉しいでしょう!」
西香は初めて家族の存在を出してきた。電話の向こうでは西香パパが嬉しそうに応対している。西香は得意気に最近の事を話したりしつつ、最終的に今日の記念日に則って、なんと両親に感謝の気持ちを伝えたのである。
西香「わたくしを育ててくださってありがとう。お父様もお母様も鼻高々でしょう、こんなに元気にすくすくと美少女に育って。感謝してくれてもいいですわよ。お父様とお母様の頑張りもあるんですから……え? 他の? ……今は留音さんが近くにいますけど。……はぁ」
留音はなんとなく嫌な予感がしつつ、ゲームをしててその場を動けなかった。
西香「留音さん、お父様が代わりたいって。はいお電話」
留音「え~っ……しょうがねぇな……、はい、留音ですけど……西香のパパさん? こんにちは」
留音はこれまでに何度か西香のお父さんと話したことがあった。だからどんな人かはなんとなくわかっている。西香と性格が……
西香パパ「あぁっ、留音さん! お久しぶりです~! あの、今西香ちゃん近くにいる……? 音聞こえないかなぁっ?」
正反対なのである。
留音「いや、大丈夫じゃないですかね」
西香パパ「そっか。ごめんね、忙しかったかな……あの、西香ちゃん、どう、大丈夫?迷惑とかかけてない……?」
留音「いやぁ~、まぁー、別に……かなぁ……」
留音も相手の両親には気を使う方であった。
西香パパ「あ~……。あっ、あの、イクラ好き……? 今度北海道に行くから、その時に送ってあげるね。届いたらみんなで食べてって、真凛ちゃんに伝えといてくれるかな……」
留音「えーいいんですか! 好きです!」
西香パパ「あ~よかったよかった。大きいパック買って送るからね。……だからってわけじゃないけど、これからも西香ちゃんをよろしくねっ、留音ちゃん頼りになるから……あの、本当に、すごくいい子だから……ちょっと発言はね、うん、でも皆のことが大好きで頼ってるようなところあってのことで……」
留音「はぁ、まぁ……うん……はい」
西香「なんでこっちを見てるんですの?」
西香パパ「とにかく、よろしくねっ! イクラ送るからね! サーモンとかもつけるから!」
留音「まぁあの、お仕事頑張ってください……」
西香パパ「あ、ありがとう。それじゃあ西香ちゃんに変わってくれるかな?」
留音「はーい。西香、パパさん」
西香「お父様、何を話してたんですの? えっ、次は北海道? わたくしイクラ食べたーい! サーモンもたくっさーん食べたいですわ~!」
これが彼女たちの、今日の出来事。




