2020年2月24日 エンジェル仮面登場
2020年2月24日
ある時、衣玖は珍しく昼から外出をしていた。たまには歩いて、位置情報ゲームのレベル上げでもしながらのんびり街まで行って、そこで新作のゲームでも買って帰ろう、なんて日だ。
気分が乗っていたのか、そこそこに歩いた衣玖はスマホを取り出し、駅近くの開けたスペースの一角に座ってぴこぴこと位置情報ゲームに表示された戦闘イベントやアイテムの収集に勤しんでいる、そんなときだった。
「あのぉ~すみませぇん、お時間よろしいでしょうかぁ~……」
突然知らない人に話しかけられ、ビクッとなる衣玖。
衣玖「あっ、すみません」
衣玖はそこが座ってちゃいけないスペースだったのかなと思い、すぐに立ち去ろうとしたのだが、どうやらそういうことではなかったらしい。
「街頭アンケートに協力いただけませんか?」
衣玖「えっ、あっえっと……」
キョロキョロと辺りを見回す衣玖。特に何か気になるものがあるわけではなく、単純にそんな経験がなかったのでどうしたらいいかわからないのである。そう言えば街頭アンケートを装った悪質な勧誘なんかもあるのだと聞いたことがあるのだが、衣玖は面と向かって断れないでいる。
さて困った。相手は衣玖に丁寧な言葉遣いでアンケート用紙とバインダーを手渡し、ペンで上からチェックしていってください、なんて説明をしているが、どうしたものかと衣玖はいっぱいいっぱいになっていた。
そんな時!
??「あの、すいません。この子連れの子で……ほら、行くよ」
そう言って、衣玖よりすこし背の高い程度の何者かが衣玖の手を引っ張り、アンケート勧誘から連れ出したのである。
衣玖「あ、ちょ、ちょっとっ、誰……?」
??「……。んっと……」
その人物は100円で売っていそうなサングラス、そして白いマフラーを巻き、口元にはマスクをして人相はわからない。服装こそ普通のパンツルックというか、多分男の子なのだが、衣玖にはその人物について皆目見当がつかない。
??「わ、私はエンジェル仮面……困っている美少女の味方……さらばっ!」
走り去っていくエンジェル仮面。衣玖は「待って!」と手をのばすが、走って追うのも疲れるので見送ることにした。謎多きエンジェル仮面。その正体を誰も知らない。
こんな事もあった。
「ぺらぺーらぺらぺらぽー?」
イリス「は? 何?」
これはイリスが一人で歩いていたときのこと。金髪碧眼の外国人男性がイリスに英語で話しかけていた。
「ぺぺらぺらぺらぺぺらぺー。ぺらりんご?」
イリス「あ……え? ん?」
外国人男性も戸惑っている。イリスの綺麗な金髪を見て、出身について勘違いしたのだろう。英語が通じると思ったのに全く通じないという状況で外国人男性もどうしたらいいのか、という感じである。それはもちろんイリスもで、相手が不審者なのか、困っているのかもわからない。
「ぺらぽーぺらぽー。すてぃしょん?ぺぺっらっぺー、ますか?」
イリス「すてぃしょん? ……たしか駅よね。えっと……」
外国人男性は駅への道を尋ねていたらしい。だがイリス、地形を伝えることがも難しい。なんせ一人の時は空を飛んで移動すれば良いものだし、みんなで移動する時は聖美についていくだけで、話していればいつの間にか到着していることばかりだ。細かく道を教えることが出来ず、やはり困っていた。
しかしそんな時!!
??「あー……ぺぺらぺらぺらぺー。ステーション、ぺらぺーら」
「Oh, pera perarappe, Pera to perenper, Peera, Haha」
??「やーやー。おけおけー。ぺっぺぺらぺっぺー」
現れたのはそう、安いサングラスと白いマスク、そして白いマフラーに身を包んだ何者か。その正体は誰も知らないエンジェル仮面だったのだ!
「Thank you girls, bye」
イリス「さ、さんきゅぅ。……」
イリスは男性を見送り、ふぅと息をついた。この謎の人物がいなければきっと乗り切れなかっただろう。
イリス「あ、あの、誰だかは知らないけど……(ってなんだろうこの人、妙な格好して……)」
??「……ふ、ふはーはっは。何、気にすることはないのだー。私の名前はエンジェル仮面。決して君の見知った誰かではない。ではさらばだー!」
イリス「……エンジェル仮面……?」
――――――――――
イリス「……って言うことがあったのよ。あれは一体誰だったのか……」
聖美「へぇーっ、気になるねぇ。男の人だったの?」
夜、イリスと聖美は同じ部屋で暮らしているため、そんな会話をしていた。
イリス「わかんないのよ。背的には少年とも少女とも言えるっていうか……声もどっちにも聞こえるし。でもあれは正義の心よね。何の見返りも求めずにただあたしを助けて立ち去っていって……格好はともかく、なかなかかっこよかったわ」
聖美「へぇ……五人少女ちゃんたちの他にもそんなヒーローがいるんだねぇ」
イリス「……あいつらはヒーローではないでしょ。エンジェル仮面の方がよっぽどヒーローっぽかったわよ」
聖美「そうだね、五人少女ちゃんたちはヒロインだった!」
イリス「そうじゃなくて……まぁいいわ。エンジェル仮面、また現れることがあるんだったら次はお礼を言わなきゃ……」
どこの誰かは知らないけれど、誰もがみんな知っている。エンジェル仮面はよい人よ。女装してない時に困った友達を見つけて現れた誰かではない。エンジェル仮面は誰でしょう。
今日は月光仮面登場の日。




