2020年2月22日 にんにんにんで忍者の日!
2020年2月22日
大江戸・日めくり街。そこには一般市民として暮らしながら、くノ一という裏の顔を持つ3人の少女たちがいた……
イリス「聖美、今日の依頼は?」
聖美「うん、東香さんっていう人から依頼状が来てるよ」
アンジー「どんな依頼?」
彼女たちの名前は味姫好主。ふりいらんすと呼ばれる彼女たちは誰かから受けた依頼を遂行し、そうして生計を立てていた。これは彼女たちに降りかかる、人生で最も難しかった任務の始まりの記録。
聖美「ええっと……五人少女……という家に住む、ある三人の弱味を探って欲しい、って依頼だよ!」
イリス「諜報系の依頼ね。わかった、早速取り掛かるとしましょうか」
アンジー「よーっし! 皆で頑張ろう―!」
彼女たち、最高のくノ一にとって諜報など容易い仕事の一つである。
変化の術の使い手、アンジー。老若男女問うことなく、なんにでも变化を可能とする変身術を体得した見目麗しい少年である。その見た目は既に男女の境界になく、その有り様は美少女そのものだった。
そう、この日もまた……。
アンジー「(ボクの仕事はここに住む真凛ちゃんという子の情報を盗むこと……宵闇に紛れて、夜の真凛ちゃんの弱味を握るぞ……! あっ)」
パキッ、暗闇で見えなかった小枝を踏み折ってしまったのだ。
真凛「むむっ! 何奴ですか!!」
アンジー「(しまった!)」
茂みに隠れるアンジー。しかしこのようなときにこそ、彼女、いや彼の変化の術が唸るのだ。
真凛の部屋の窓が開かれ、その目は動くものを見逃さないという光を持っていた。
真凛「でてきなさーい! そこにいるのはわかっているのです!」
アンジー「……みゃ、にゃにゃ~ぁん♡ にゃんにゃん☆」
真凛「むむっ! 可愛い猫ちゃんの声……! どこですかぁー? 撫でたーい☆」
アンジー「(しまった可愛すぎた! ネコで騙してもこんなに可愛い声を出したらネコ好き系の人には撫でたいと思わせてしまう……! 下手を打った……!)」
真凛は窓から身を乗り出し、ぽわぽわ浮遊しながらアンジーの元へ飛んできたのだ。もう姿が見られるまで二秒、一秒……! しかしアンジーの変化術は単なる見た目、声色だけにとどまらないのである。
アンジー「にゃっ……」
真凛「わぁっ、可愛い猫さん! 迷い込んじゃったんですかぁ? あっ! 逃げないでー!」
アンジーは駆けて逃げ出した。ちなみにアンジーは人間の姿から変わっていたわけではないのだ。しかし真凛は完全にアンジーをネコだと認識していた。これはどういうことか。
アンジーの変化術、それは魂すらなりきってしまうレベルで行われる、真の変化術なのだ。
長いこと可愛い女の子として過ごすうちに、彼女、いや彼は真の美少女の心を宿している。そう、変化にはその心持も非常に重要になってくるのだ。すごく似合うけどやりたくないコスプレと、細かい意匠が違うけど、大好きなキャラのコスプレをするのとでは完成度は後者に大きく傾く。
それは変化の術にも同様。所作の一つひとつ、魂の色合いまでも模倣することで、心の変化を遂げる。それこそがアンジーが変化の術を最大限使いこなす理由なのだ。
アンジー「(ふぅ……真凛という子が生物を魂の色で判断する系の人で良かった……失敗しちゃったけど……)」
变化のアンジー。任務失敗。だが仲間たちはまだ任務についている。続いて聖美である。
彼女は相手を調べることについて類まれなる才能を持っていた。プライベートはともかく、相手の町での振る舞いや過去などを調べ尽くす諜報のプロだ。そうした下調べを持つことで、より深い情報に切り込んでいく。今回のような諜報活動には素晴らしい能力を発揮する。
聖美「(衣玖ちゃん……はぁはぁ、調べすぎて好きになっちゃった……)」
その度合いは時にクレイジー。匂いの一つも逃さない。
聖美「(んっ……? 衣玖ちゃんの匂いがする……これは……侵入者警告用のカラクリ! さすが衣玖ちゃん! 時代を感じさせない最先端てくのろじいで警戒してるんだ……! あっ、あっちからも衣玖ちゃんの作った近未来あいてむの香り……!)」
まさに無敵。まさにクレイジー。こうして聖美は対人装置の隙をかい潜り、ついに衣玖の部屋の窓にへばりついた。
聖美「(はぁはぁ、衣玖ちゃん寝てるかなぁ……! 寝顔……写真に収める……ちゃんす!!!)」
興奮しながら戸に耳を押し付ける聖美の背後から声がかけられた。
衣玖「あの」
聖美「わぁっ!?」
衣玖「さっきから息遣いが聞こえてきて……なにやってるの……?」
聖美の諜報能力に欠点をあげるとすれば、周りが見えなくなることがあることだろうか。
聖美「あっ、あっ、こっ……(どうしようどうしよう、衣玖ちゃんに怪しまれないように、嫌われない言葉……!)」
聖美は目一杯考えた。聖美の諜報能力で調べ上げた相手の趣味嗜好から、適した言葉を導き出す……!
聖美「ここに監視の脆弱性があったから報告に!!」
衣玖「えっ、あっ、えっ? ありがとう……」
衣玖は脆弱性という言葉にりすぺくとを持っているのである。誰も知らないせきゅりてえほぉるを見つける快感は得も言われぬことを知っているのだ。
衣玖「助かったわ。誰か知らないけど。あなたもプログラムの欠陥を探すのが好きな人なの?」
聖美「あっ、うっ、ごめんなさーい!」
衣玖「あ……行っちゃった……仕方ない、巡回ドローンを一つ増やすか」
聖美、任務失敗。今回の任務はすこしばかり厳しい。リーダー格のイリスもまた苦戦しているようだった。
イリス「(くっ、なんなのこいつ。足が速い……! 生身だと言うのに!)」
イリス。忍術を極めた最強のくノ一だ。
イリス「(風遁・八艘飛びを使ってもついていくのがやっとだなんて……! あの留音って女、一体何者……!)」
イリスは今、最後の対象者である留音を追っていた。
留音「(あいつ、まだついてくるのか。本人は隠れながら追ってるつもりみたいだけど、あんなに忍気をだだ漏れにして……ちょっと脅かしてやるか)」
イリス「(消えたっ! ……どこ?)」
突如視界から消えた留音の姿に戸惑うイリス。江戸の町の木造の屋根の上からは死角も多い。その何処かの道に入ったのだろうと、イリスは息を殺して曲がり角などを覗き込む。だが次の瞬間。
留音「おい」
イリス「ぎゃーっ! わ、わっ」
背後から突然現れた留音に驚き、屋根の瓦を踏み外してしまうイリス。そのまま地面に真っ逆さまに落ちていく。
イリス「(風遁! だめ、間に合わない……!)」
だが地面に当たる瞬間、イリスに伝わった衝撃はただ二つ。背中と膝の裏を支えるように受け止められたというものだった。
留音「っとと、大丈夫か?」
キュッと目をつむっていたイリスが状況を認識するため、その声に合わせてすこしずつ目を開けた。そこには先程まで追っていたはずの留音の顔。
イリス「な、お、お前、留音……っ」
留音「まさか落ちるとは思わなくて。ごめんな。でもなんであたしのこと追っかけてたんだ?」
イリスはバッと留音の手を振り払って着地すると、覚えてろー! と風の術を使って飛んでいくのだった。
イリス、任務失敗。初めての全員での大失敗だ。しかしここから、みにいずの3人は大きな陰謀と謀略の戦いに巻き込まれていくこととなる。
――――――――嘘次回予告―――――――――
みにいずの三人はふとしたことをきっかけに、調査に失敗した真凛、衣玖、留音と知り合うことになる。その三人らは、自分たちの暮らす家にいる裏切り者の誰かに地位と名誉とお金を狙われているという。
その策謀の渦に、みにいずたちもいつの間にか巻き込まれていることを知る事となる。
果たしてその陰謀とは。そしてみにいずに依頼をした東香とは一体誰なのか。
次回、にんにんにんで忍者の日、第二話。
その女、名を西香。
にんがみっつで、さんにんじゃ!!




