2020年2月21日 魚介系家族日常漫画の最後の日
2020年2月21日
五人少女の家の扉を、強く叩く者がいた。ダンダンダンと、その叩き方は何か緊急性を感じさせるものである。
アンジー「みんなぁ! 誰かぁ!」
扉を叩いているのはアンジーらしい。そこに現れたのは真凛だった。
真凛「んん? どうしたんですか? なんだか焦っているみたいですけど……」
アンジーは息を切らしながら、涙目になって真凛にこう説明した。
アンジー「じ、実は……っ、聖美ちゃんが……聖美ちゃんが突然どこかへ消えちゃったんだ! イリスちゃんがいつものようにどうやって皆のところに入っていくかっていうのを考えて……その時からなんだか様子がおかしくて……っ」
アンジーは顔を青くして、聞いている真凛は眉を八の字にしながら首を傾けてよくわかっていない。
アンジーは一つずつゆっくり、落ち着いて解説を始めた。まずイリスがここ数日出番がなかったから派手に登場したいと話を始めた。久しぶりの登場と共に何か大魔法を持って登場し、五人少女共を葬り日めくりを乗っ取りたいところだ、なんて感じで。
その時にはもう聖美の表情は暗く、アンジーが大丈夫か尋ねるも表情を固めて何かの不安と戦っているように見えたという。
そうして話を続けていく中で、聖美は突然立ち上がり、涙を流しながら走り去ってしまったというのだ。
真凛「そうなんですか……何があったんでしょう?」
アンジー「うん……もう耐えられない! って言って……皆のところに来てないかなって思ったんだけど違うみたいだし……他の皆は?」
真凛「今はちょっと出かけててわたししかいないんですよぅ。しかし心配ですねぇ、聖美さん……」
アンジー「うん、あんな聖美ちゃん見たことなくて……イリスちゃんが飛び回って探してるんだけど……ねぇ、真凛ちゃんにも一緒に探してほしいんだ、聖美ちゃん、きっと何か辛いことがあったんだと思う……」
真凛「そうですね、わかりました。わたしも一緒に探しましょう!」
アンジー「ありがとう真凛ちゃん……! じゃあどこから探そうっ?」
真凛「大丈夫! 今この瞬間に一度世界を破壊して聖美さんを見つけて来ました! 今は川辺にかかった橋の下で一人佇んでいます!」
アンジー「あっ……えっ? ボク今の瞬間に一度滅んでるの……?」
真凛「世界が☆」
アンジー「……まぁいいや! じゃあ聖美ちゃんのところ行こう!」
―――――――――――
川にかかる橋の下、夕日がさせば絵になりそうなその場所で、聖美は橋の影に隠れ、一人壁に持たれてため息を付いていた。
イリス「聖美!」
真凛とアンジーはここに向かう途中、魔法でぴょんぴょん飛んでいたイリスと合流し、聖美を見つけ出すことが出来た。
聖美「あ……二人共、真凛ちゃんも……」
聖美はやはり表情が暗く、声音もどんよりと落ち込んでいるようだった。
真凛「聖美さん、どうしたんですか? なんだか暗いですねぇ」
聖美「……ぐしゅっ、真凛ちゃん……」
聖美は真凛に声をかけられ、涙を流すのを服の袖口で拭き、鼻をすすっている。
聖美「真凛ちゃぁぁん……」
それから真凛に駆け寄った聖美は真凛に抱きついてしまった。
真凛「わっ、どうしたんですか聖美さん。よしよし……」
イリスもアンジーも状況はよくわかっていない。聖美が抜け出したと思ったら、次に見つけた今、真凛に抱きついているのだから。
真凛「訳を話してみてください。ちゃんとお話聞きますから……」
みんなはすこし場所を移動し、川辺のベンチに横並びに座った。アンジーが可愛いハンカチを聖美の下に敷いてあげて、それに座らせている。
聖美「あのね、今日がどんな日か調べたら……今日、磯の一家の漫画の連載が終わった日だったの……アニメはずっと続いてるよ? でもあんなに長く続いている作品でも、原作の終わりが来た日……それが今日だったんだ……それを知って私……すごく怖くなっちゃって」
アンジー「この日めくりにいつか来る終わりが来るから、ってこと……?」
聖美「うん……磯の家族のお話も終わっているんだって思ったら……それがとっても怖くなっちゃって……きっと耐えられない。ずっと日めくっていたいよ」
イリス「聖美……」
聖美は真凛の手を子供のようにきゅっと握っている。真凛は子供でも見るように聖美に言った。
真凛「大丈夫ですよ、聖美さん……」
落ち着かせ、安心させるようにこんな話を始めた。
真凛「だってこの『日めくれ! 五人少女!!』はね、続いているかに思えて毎日終わっているんです。毎日連載開始、毎日連載終了……そういうモノなんですから」
アンジー「んっ?」
真凛「だって考えてみてください、聖美さん、たまに突然世界観が変わったり、特に言及なく星が無くなったり、以前の設定が活かされている事もあれば忘れ去られている事もあったり。それはどうしてだと思いますか?」
聖美「ぐすっ……怖いよぉ……」
聖美は真凛の言葉に怯え始めていた。
真凛「それはね、毎日違う世界観を持って生み出される新しい世界だからなんです。だからね、本当は連載じゃないんです。日はめくってますけど、でも実は毎日別のカレンダーを日めくっていた……それがこの『日めくれ!』なんです。だからもうおよそ240回、毎日作品が終了して、また新しい作品が始まっているんですよ^^ だから今更の事です、聖美さんのは自分が生きていた事を知ってしまって怖い、程度の悩みです^^v」
イリス「そ、そうだったのね……なんて事……」
聖美「ふ……はふっ……ふふっ……」
アンジー「あっ、あっ、聖美ちゃんが……」
聖美「そっか……じゃあ今日も、このまま終わったらまた……」
真凛「はい^^ 今日の日めくりは終了し、また新しい日めくりが始まるんですよぉ^^ だから磯の家族さんのように、終わってしまう心配をする必要はありません。って今更だから☆ わたしたちは常に終わって、そしてまた始まっているんです☆」
聖美「私が知らなかっただけなんだぁ……なぁんだ……そうだったんだぁ……ふふ、ふふふ」
アンジー「聖美ちゃぁーん!」
常に始まる事を続ける。それが美少女、五人少女なのである!




