表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
237/414

2020年2月21日 魚介系家族日常漫画の最後の日

2020年2月21日


 五人少女の家の扉を、強く叩く者がいた。ダンダンダンと、その叩き方は何か緊急性を感じさせるものである。


アンジー「みんなぁ! 誰かぁ!」


 扉を叩いているのはアンジーらしい。そこに現れたのは真凛(まりん)だった。


真凛(まりん)「んん? どうしたんですか? なんだか焦っているみたいですけど……」


 アンジーは息を切らしながら、涙目になって真凛(まりん)にこう説明した。


アンジー「じ、実は……っ、聖美(きよみ)ちゃんが……聖美(きよみ)ちゃんが突然どこかへ消えちゃったんだ! イリスちゃんがいつものようにどうやって皆のところに入っていくかっていうのを考えて……その時からなんだか様子がおかしくて……っ」


 アンジーは顔を青くして、聞いている真凛(まりん)は眉を八の字にしながら首を傾けてよくわかっていない。


 アンジーは一つずつゆっくり、落ち着いて解説を始めた。まずイリスがここ数日出番がなかったから派手に登場したいと話を始めた。久しぶりの登場と共に何か大魔法を持って登場し、五人少女共を葬り日めくりを乗っ取りたいところだ、なんて感じで。


 その時にはもう聖美(きよみ)の表情は暗く、アンジーが大丈夫か尋ねるも表情を固めて何かの不安と戦っているように見えたという。


 そうして話を続けていく中で、聖美(きよみ)は突然立ち上がり、涙を流しながら走り去ってしまったというのだ。


真凛(まりん)「そうなんですか……何があったんでしょう?」


アンジー「うん……もう耐えられない! って言って……皆のところに来てないかなって思ったんだけど違うみたいだし……他の皆は?」


真凛(まりん)「今はちょっと出かけててわたししかいないんですよぅ。しかし心配ですねぇ、聖美(きよみ)さん……」


アンジー「うん、あんな聖美(きよみ)ちゃん見たことなくて……イリスちゃんが飛び回って探してるんだけど……ねぇ、真凛(まりん)ちゃんにも一緒に探してほしいんだ、聖美(きよみ)ちゃん、きっと何か辛いことがあったんだと思う……」


真凛(まりん)「そうですね、わかりました。わたしも一緒に探しましょう!」


アンジー「ありがとう真凛(まりん)ちゃん……! じゃあどこから探そうっ?」


真凛(まりん)「大丈夫! 今この瞬間に一度世界を破壊して聖美(きよみ)さんを見つけて来ました! 今は川辺にかかった橋の下で一人佇んでいます!」


アンジー「あっ……えっ? ボク今の瞬間に一度滅んでるの……?」


真凛(まりん)「世界が☆」


アンジー「……まぁいいや! じゃあ聖美(きよみ)ちゃんのところ行こう!」


―――――――――――


 川にかかる橋の下、夕日がさせば絵になりそうなその場所で、聖美(きよみ)は橋の影に隠れ、一人壁に持たれてため息を付いていた。


イリス「聖美(きよみ)!」


 真凛(まりん)とアンジーはここに向かう途中、魔法でぴょんぴょん飛んでいたイリスと合流し、聖美(きよみ)を見つけ出すことが出来た。


聖美(きよみ)「あ……二人共、真凛(まりん)ちゃんも……」


 聖美(きよみ)はやはり表情が暗く、声音もどんよりと落ち込んでいるようだった。


真凛(まりん)聖美(きよみ)さん、どうしたんですか? なんだか暗いですねぇ」


聖美(きよみ)「……ぐしゅっ、真凛(まりん)ちゃん……」


 聖美(きよみ)真凛(まりん)に声をかけられ、涙を流すのを服の袖口で拭き、鼻をすすっている。


聖美(きよみ)真凛(まりん)ちゃぁぁん……」


 それから真凛(まりん)に駆け寄った聖美(きよみ)真凛(まりん)に抱きついてしまった。


真凛(まりん)「わっ、どうしたんですか聖美(きよみ)さん。よしよし……」


 イリスもアンジーも状況はよくわかっていない。聖美(きよみ)が抜け出したと思ったら、次に見つけた今、真凛(まりん)に抱きついているのだから。


真凛(まりん)「訳を話してみてください。ちゃんとお話聞きますから……」


 みんなはすこし場所を移動し、川辺のベンチに横並びに座った。アンジーが可愛いハンカチを聖美(きよみ)の下に敷いてあげて、それに座らせている。


聖美(きよみ)「あのね、今日がどんな日か調べたら……今日、磯の一家の漫画の連載が終わった日だったの……アニメはずっと続いてるよ? でもあんなに長く続いている作品でも、原作の終わりが来た日……それが今日だったんだ……それを知って私……すごく怖くなっちゃって」


アンジー「この日めくりにいつか来る終わりが来るから、ってこと……?」


聖美(きよみ)「うん……磯の家族のお話も終わっているんだって思ったら……それがとっても怖くなっちゃって……きっと耐えられない。ずっと日めくっていたいよ」


イリス「聖美(きよみ)……」


 聖美(きよみ)真凛(まりん)の手を子供のようにきゅっと握っている。真凛(まりん)は子供でも見るように聖美(きよみ)に言った。


真凛(まりん)「大丈夫ですよ、聖美(きよみ)さん……」


 落ち着かせ、安心させるようにこんな話を始めた。


真凛(まりん)「だってこの『日めくれ! 五人少女!!』はね、続いているかに思えて毎日終わっているんです。毎日連載開始、毎日連載終了……そういうモノなんですから」


アンジー「んっ?」


真凛(まりん)「だって考えてみてください、聖美(きよみ)さん、たまに突然世界観が変わったり、特に言及なく星が無くなったり、以前の設定が活かされている事もあれば忘れ去られている事もあったり。それはどうしてだと思いますか?」


聖美(きよみ)「ぐすっ……怖いよぉ……」


 聖美(きよみ)真凛(まりん)の言葉に怯え始めていた。


真凛(まりん)「それはね、毎日違う世界観を持って生み出される新しい世界だからなんです。だからね、本当は連載じゃないんです。日はめくってますけど、でも実は毎日別のカレンダーを日めくっていた……それがこの『日めくれ!』なんです。だからもうおよそ240回、毎日作品が終了して、また新しい作品が始まっているんですよ^^ だから今更の事です、聖美(きよみ)さんのは自分が生きていた事を知ってしまって怖い、程度の悩みです^^v」


イリス「そ、そうだったのね……なんて事……」


聖美(きよみ)「ふ……はふっ……ふふっ……」


アンジー「あっ、あっ、聖美(きよみ)ちゃんが……」


聖美(きよみ)「そっか……じゃあ今日も、このまま終わったらまた……」


真凛(まりん)「はい^^ 今日の日めくり(せかい)は終了し、また新しい日めくり(せかい)が始まるんですよぉ^^ だから磯の家族さんのように、終わってしまう心配をする必要はありません。って今更だから☆ わたしたちは常に終わって、そしてまた始まっているんです☆」


聖美(きよみ)「私が知らなかっただけなんだぁ……なぁんだ……そうだったんだぁ……ふふ、ふふふ」


アンジー「聖美(きよみ)ちゃぁーん!」


 常に始まる事を続ける。それが美少女、五人少女なのである!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 何かですね。 ぼのぼのの「こわい考えになってしまった」と思いだしたのは私だけでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ