2020年2月19日 美少女強制収容
2020年2月19日
留音「まさか収容されてしまうとは思わなかったな……」
大統領令366号、発令。これはブサイ大統領が発令したものである。内容は極単純、美少女を拘束し、この美少女収容施設に収容すること。しかし何故そんな事になったのかは誰にもわからない。多分今日がかつてあった強制収容を忘れない日だからだ。
真凛「しょうがないですよ、わたしたちは真の美少女ですから……」
先んじて収容されたのはやはり五人少女達であった。あまりにも可愛すぎるため、当然の収監であった。
今は囚人に与えられた僅かな自由時間。収容所の中にあるグラウンドのベンチに座り会議中というわけである。五人少女達の他、一般アイドル級の美少女たちも皆収監されており、一様に礼儀正しく過ごしていた。
ここに入っているのは美少女の子たちのみ。それにあの子までいるのだから、収容所内の空気は非常に明るく、誰もが前向きで建設的に過ごしている。集まりすぎた美少女力により、昼には何故か虹がかかり、夜には何故か天の川が見える。そんな場所になっていた。
そこに情報を集めんとしていた西香が戻ってくる。
西香「はぁ……だめですわね。誰もわたくしの話を聞いてくれません。何の情報も集まりませんでしたわ」
留音「そうか……これじゃブサイ大統領がどうしてあたしたちを敵視しているのかがわからない」
西香「えぇ、そのとおりですわ。ですからブサイに通じるものからなんとか話を聞き出さなければならないのに……ちょっと、そこのあなた。あなたブサイの犬ですわね。どうしてわたくしたちをこんな目に合わせるのです!」
西香は近くを通りかかった囚人に突然そんな風に声をかけた。声をかけられたのは人気アイドルグループの一人だったようだ。その美少女は「え、何この人……」とそそくさ立ち去ってしまう。
西香「やはりだめですわね……ブサイの忠犬はなかなか口が堅いですわ……」
留音「いや待て待て、今のはどう見たってあたしたちと同じ囚人側だろうが。囚人服も来てたし」
西香「えぇっ!? そうなんですの!? わたくしてっきり監視のために送り込まれている人たちなのだと……だって真の美少女ってわたくしとこの子だけですし……」
留音「お前、ずっとその感じで情報集めしてくるって気合入れてたの?」
真凛「あの、ところで衣玖さんが静かですけど……」
衣玖は他の3人のやり取りなどどこ吹く風かというように、のんびりと本を読んで過ごしていた。
留音「どうしたんだよ衣玖、いつものお前だったらこんなところすぐに抜け出そうとかしそうなものなのに……」
衣玖は本を読みながら答えた。
衣玖「別にここでもいいじゃない。今の所不自由はしていないし。私はここの刑務作業も苦じゃないわよ。スイッチひとつで完了する完全自動化システムを作ったしね」
西香「えぇっ! なんてことを……衣玖さん! あなた頭ブサイクになってしまったのですか!?」
衣玖「そんなわけないでしょ。私達美少女は常に世界を変え続けている……でもそれは別にここからでも出来る事ってことよ。そもそも人間という時点で人は皆社会という檻に囚われているのよ。ほとんどの人は気づいていないけどね。だから物理的な場所についてはそう大した問題にはならない。心が自由であればいい」
留音「今回はそういう感じのテイストなのか? 何言ってるのか全然わからないけど」
衣玖「幸い、ここの治安はとんでもなくいいわ。なんたってみんな美少女だから。さっき私がお茶をこぼしたら知らない子が二人も片付けを手伝ってくれたからね……」
西香「なんですって……? わたくしが話しかけてもだぁれも相手にしてくださらないのに……!」
真凛「みんないい子ですよね☆ わたしもさっき刑務作業でクッキーを焼こうとしたら何人かの子たちがすごいすごいって見に来てくれて、出来たのも美味しいって食べてくれました☆」
西香「わたくしもらってないですわ!」
留音「じゃあ衣玖、あたしたちは焦ってここを脱出する必要はないってことか……?」
衣玖「そうね。自由というものは求めだしたら際限ないけど、ここでも私達は十分に私達らしくいられる。だったら問題はないんじゃない?」
真凛「で、でも……ここにいたらわたし達の使命が果たせないかもしれませんよ……? 日めくりの記念日を使い、世界にニコニコの光をもたらすという大事な使命が……」
衣玖「ふ、心配いらないわ。あそこを見て」
衣玖はこの収容所のグラウンドの一部を指し示した。そこでは美少女囚人が三人がかりでブサイ刑務官を取り囲んでいた。これはリンチ……美少女リンチだ。
西香「あ、あれは……」
留音「髪を引っ張って……結んであげている……?」
そう、美少女リンチでは美少女がお化粧の仕方や、その人にあった髪型などを模索する。美少女囚人の一人が刑務官に対して可愛い髪型を試し、新しい化粧法を伝授していたのだ。そこでされる会話は「あっ、これ可愛くない?」「あ、いぃ! いぃ! 超似合う! あとはチーク乗っけて、目元もちょっと足してみよう」「あと刑務官さん、髪質ちょっと固めだから、あとで使うといいシャンプーとか教えてあげるね」「えっ、嘘……これが私……? かわいい……」というようなものである。
衣玖「美少女は世界を変え続ける。仮にブサイ大統領がそういうのを嫌って私達を押し込めたつもりであるのならば……下手をうったわね。美少女を一所に押し留めて世界が変わらないわけがないのよ。こうしてブサイクさんたちはすこしずつ美少女に感化され、自分も美少女にと……革新の道を歩むことになる」
西香「それは無駄な努力でしょうが……」
衣玖「だから私達はここで焦る必要はないわ。むしろね。こうして気ままにいること、それもまた美少女らしさに繋がっていくのだから」
衣玖がこう話した数日後、大統領令は解除された。世界の変革はあまりにも早かった。
美少女たちを欲した世界は、美少女たちへの面談を求めて刑務所に殺到したのである。このままでは檻の外でこそ暴動が起こってしまう。美少女たちを収監した檻の中だけが唯一の楽園になってしまう……そのような状況が予測されたため、ブサイ大統領の辞任を持って世界は再び元の世界に戻っていったのだ。
真の美少女を収容することは出来ない。人の心よ、常に五人少女のように自由な美少女たれ。




