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2019年8月9日 形状記憶合金の日

2019年 8月9日


西香(さいか)「というわけで、今日はグルメな日らしいんですの。ハンバーグの日で、クレープの日で、薬膳の日。今日のご飯は決まりですわね。わたくし今日はがっつりお肉行きたいですわ」


 食卓には西香(さいか)留音(るね)が対面に座り、その二人の横に衣玖(いく)が座っている。どうやら衣玖(いく)の"日めくり出禁"は解除されたようである。三人は今日の日めくりネタを広げるべく、デパートのチラシを広げて会話をしている。デパートのレストランフロアが 8月9日のキャンペーンとして、ハンバーグや薬膳などを取り上げていたのだ。


留音(るね)「あたしも~、でっかいハンバーグにかぶりつきてぇなぁ。なぁ衣玖(いく)、お前はどうだよ?」


 留音(るね)はチラシを前にしてこれが美味しそうだとか、食べたいだとかというかしましい会話に参加してこなかった衣玖(いく)を気遣うように声をかけた。


衣玖(いく)?「……」


西香(さいか)「はぁ……衣玖(いく)さんったら。らしくないですわよ、そんなふうに黙って拗ねるなんて。いくら自分が持ってきた企画で出禁になったからって。それもたった3日で解除されたんですから、むしろ積極的に参加してくれないと」


 西香(さいか)は呆れたようにそう言ったが、衣玖(いく)は表情一つ変えない。


留音(るね)「……随分不機嫌そうだなぁ。まぁそんな事もあるだろ、いくら天才つってもこいつも人間だし。あたしらで進めようぜ。そうそう、薬膳で思い出したけど、8と9でヤクってなるだろ?で、語呂合わせで薬草の日なんだけどさ、面白いことに今日の誕生花、煙草なんだよ」


西香(さいか)「煙草?あのぷかぷか煙をふかすタバコの話ですの?」


留音(るね)「そうそう、ちょっと意外だけど、あれってちゃんと花咲かすからキレイな花言葉も持ってるんだよ。"ふれあい"ってな。ちょっとおもしろくないか?ヤクの日に薬に使う薬草とタバコが同居しててさ。なぁどうだ衣玖(いく)?」


 留音(るね)衣玖(いく)に対し、よくされる『つまんない』というツッコミを期待したのだが。


衣玖(いく)?「……」


 衣玖(いく)はやはり反応を示さなかった。


西香(さいか)「全く。この人ピクリともしませんわよ。留音(るね)さんは衣玖(いく)さんと幼馴染でしたよね?機嫌悪くなるといつもこんな感じなんですの?」


留音(るね)「いや、衣玖(いく)らしくは無いかな……でもまぁ、天才つってもこいつも人間だし、今日はいつもよか不機嫌なんだろ。……ってかこいつを出禁にしてる間にのび太くんの誕生日とスタンド・バイ・ミーの公開日が終わっちゃったって言ってたし。とくにのび太くんの話題からドラ○もんの話はしたかったらしい。あたしらの究極目指すところにある日常チック作品の王者だからな、願掛けもありきでそういう話を持っていこうとこいつなりに考えてたんだろうな……」


 留音(るね)は少しだけ悪かったかなと思い、その感情は声音に溶けている。だが西香(さいか)の方はそれが不機嫌な理由なら下らないと、一蹴するように言う。


西香(さいか)「はぁ。もう衣玖(いく)さん、過ぎたことを言っても仕方ないじゃありませんか。少しくらい反応しなさないなっ」


 西香(さいか)が片手で軽く衣玖(いく)を揺すった、というか、揺すろうとした。微動にも揺れなかったが。


西香(さいか)「あら……衣玖(いく)さん、あなた出禁食らってる間に体がずいぶん重くなりましたわね。それにめちゃくちゃ固いですわ」


 西香(さいか)が握った手の甲でノックするように衣玖(けいじょうきおくごうきん)の肩を叩く。カンカンと音がする。


留音(るね)「まぁ重くて固くもなりたい日なんだろうな、天才つってもこいつも人間だし。それでさ、更に今日は針・灸の日でもあるんだよ。だから全体的に見るとすっげー体に良いことばっかり記念日になっててさ、でも誕生花は煙草っていうね。まぁ花言葉は多分観賞用の煙草の花の話なんだろうけど」


西香(さいか)「それに……あら、パクチーの日でもあるんですのね。わたくしパクチー嫌いじゃないですわ」


留音(るね)「あぁパクチーな。最近あんま見なくなったけど……あれも栄養価高いんだっけか。あたしもあの辛味は嫌いじゃないよ。衣玖(いく)は辛いのどうだっけ?」


 そうして留音(るね)は相変わらず気遣うように話題を振る。だがやはり衣玖(けいじょうきおくごうきん)は反応しない。


衣玖(けいじょうきおくごうきん)?「……」


留音(るね)「なぁなぁ、もう機嫌直せよぅ……って冷たッ!衣玖(いく)、お前大丈夫か!?体めちゃくちゃ冷たいじゃねぇか!」


 留音(るね)が冷たさに驚いてパンパンと叩くとカンカンという反響音がした


留音(るね)「おいおい!衣玖(いく)!まさかお前凍ってるんじゃないのか?!」


西香(さいか)「ほほほ、留音(るね)さんたらおバカなこと言いますわね。人間が凍るわけ無いじゃありませんの。ほら留音(るね)さん、衣玖(いく)さんの顔をよく見てくださいな、本当に凍っていたらこんないつもどおりの血色じゃいられませんよ」


 覗き込む衣玖(いく)の顔色は健康的な鈍色をしていた。まるでチタンのように光を反射させるおでこ、業務用のコイルのように弾力のありそうなほっぺ、髪は細い針金のように綺麗にまっすぐ伸びている。


留音(るね)「まぁそうだな。全く衣玖(いく)……今日はすげぇ頑固だな、まぁたまにはそんなことあるのわかるよ、天才つってもお前も人間だしな。そうだ、衣玖(いく)、今日薬草の日だぞ?ほら、ドラクエの話とかに繋げられるんじゃないか?」


衣玖(けいじょうきおくごうきん)?「……」


西香(さいか)「ゲームの話を振ってもダメなんですの?」


留音(るね)「まぁしょうがないよ、3日間出禁だもんよ、こいつ内向的なくせに喋りたがりなところあるし。拗ねちゃったなぁ、悪かったよ衣玖(いく)、明日からは思う存分喋れ、な?」


衣玖(けいじょうきおくごうきん)?「……」


西香(さいか)「じゃあ、今日の日めくりは終わりですの?」


留音(るね)「まぁ衣玖(いく)もこんな感じだし。煙草の話題はもう少し広げられたかもしれないけど……今日はしょうがねぇなぁ」


西香(さいか)「もう。じゃあ衣玖(いく)さん、拗ねるのは勝手ですけど、さっさと機嫌直しておきなさいな」


衣玖(けいじょうきおくごうきん)?「……」


留音(るね)「しばらく一人にさせとこうぜ」


西香(さいか)「そうですわね」


衣玖(けいじょうきおくごうきん)?「……」



 8月9日は形状記憶合金の日です。1982年の今日、発表されたことから制定されました。


 ここで豆知識!身近な形状記憶合金の使い道の一つにブラのワイヤーに使われたりもするが、衣玖(いく)ちゃんには必要ないぞ!何故なら装備に必要なステータスに素ステが追いついていないからだ!ドラクエみたいにレベル上げ頑張れ、衣玖(いく)ちゃん!!

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