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2020年2月12日 チョコを用意しておこう

2020年2月12日


 明後日はバレンタインデー。少女たちはチョコを用意するようだ。


―――――――――


真凛(まりん)「しゃかしゃかーっと☆」


 真凛(まりん)は刻んだチョコをバターなんかと一緒に泡立て器を回している。


真凛(まりん)「そっちはどうですか?」


 問いかけられたのはあの子だ。メレンゲを作っているらしい。二人は仲睦まじく台所に立ち、手際よく作業を分担していた。


 よく混ぜて、薄力粉を入れた後はさくっと混ぜる。それを型に入れて、次はオーブンの出番だ。二人は焼き上がるまでの数十分、仲良く観察したり、余った具材で小さいチョコを作ってみたりしながらその完成を待ちわびた。


 出来たのはガトーショコラ。表面はざくざくと割れて、甘すぎずに苦くもない、可愛いスイーツが出来上がり。


 二人が作ったのは完璧なチョコスイーツだった。


真凛(まりん)「明後日のバレンタインが楽しみですね☆」


 ……というわけで……。


―――――――――――


留音(るね)衣玖(いく)がチョコを用意する


留音(るね)「いっちょやるぞ衣玖(いく)! あたしたちも美少女で可愛くチョコが用意出来るってところを見せてやんぞぉ!」


衣玖(いく)「そうね。材料は用意した。あとは調合するだけ。切ったり混ぜたりする重労働はルーに任せるわ」


留音(るね)「よし、あたしはチョコの作り方なんて知らないからな。司令塔は頼んだぞ」


衣玖(いく)「うん。じゃあまずはこのじゃがいもを適度なサイズに丸い感じにして」


留音(るね)「……どういうことだ?」


衣玖(いく)「話合って決めたでしょ。トリュフチョコを作るって。トリュフチョコの大きさをイメージして、あんな感じの大きさにしてほしいのよ」


留音(るね)「そうだった。失念していたぜ、あたしたちが作りたいのはトリュフチョコだもんな。まずは型が必要なのは当たり前か」


衣玖(いく)「そういう事。私はこっちでチョコ味コーティングのための作業に取り掛かるわ」


留音(るね)「頼んだ!! うおおおおおおおおお!!! じゃがいも破砕拳!!!」


 留音(るね)は空中にじゃがいもを三つ放ると、じゃがいもの正中線を綺麗に三度突いた。するとじゃがいもは丁度いいサイズのゴロゴロじゃがいもに姿を変えたのだ。その角張った部分は皮むき器を使って地味に削いで丸い形を作っていった。


留音(るね)「しかし知らなかったな……トリュフチョコがじゃがいもから出来ていたなんて。でも考えてみればそうだよな、トリュフチョコってなんかとろける感じするし、あの優しい口当たりって蒸したじゃがいもだったのか……」


 衣玖(いく)はうんともすんとも言わず、アイアンアーマーを着用し、ドリルで金属音を響かせている。


衣玖(いく)「(ごめんルー。トリュフチョコはじゃがいもとは一切無関係……でも私は、久しぶりに使用を許可された台所で試してみたい……代用品で完璧にチョコだと偽ることが可能なのか。バレンタインという日は先入観もあって抜群に相性がいい……)」


留音(るね)「で、トリュフチョコの周りのチョコと、中までしっとりチョコ味を作るにはどうしたらいいんだ?」


衣玖(いく)「うん、出来た。これは形状記憶機能を導入した成分調合釜。ここにさっきのじゃがいもをベースとして、トリュフチョコにするための様々な物を入れるのよ」


留音(るね)「なるほどな……あたしは直感した。今あたしたちが作っているのは確実に通常のトリュフチョコではないことを……だって多分普通はチョコを作るのに形状記憶とか言わないはずだから……でも美味しいトリュフチョコが出来るなら良し!」


衣玖(いく)「そうね(トリュフチョコらしきものしか出来ないけど……)」


留音(るね)「で、何を入れるんだ?」


衣玖(いく)「味、食感、色味、質感……それらを形成する必要がある。味は最後に調整するの。まずは食感から行くわよ」


留音(るね)「はっ! そうだ衣玖(いく)! あたしたちが昨日参考に食べていたガーラのトリュフチョコはどうだ?! 全て完璧になるんじゃないのか!?」


衣玖(いく)「それは許されないわ。買ってきたやつでいいってなったら美少女ポイントが減少する」


留音(るね)「そ、そうか……そうだよな、数ある美少女バレンタイン回は、作る過程と渡すまでの葛藤を重点的に描いて、そして無言で食べて満足そうな男の子はほんの数コマってパターンが多い……そうか、この調理パートを長引かせるほどに美少女ポイントが上昇する……」


衣玖(いく)「そういうことよ。でももう食感は決まっている。あの食べた時の中がふわっととろけるような感覚、あれがトリュフチョコのキモよ。でも性質上あのふんわり感には限度がある。でも私の作ったこの装置があれば更にふんわり感を追求することが出来るの」


留音(るね)「で、その中身のふんわり感は一体……あの、まさかとは思うが……ここにある……」


衣玖(いく)「そう、ねぎとろよ。厳密に言えばまぐろのたたき部分ね。このふんわり感こそトリュフチョコに一番ふさわしいはず。さぁルー、ねぎの部分は取ってまぐろのたたきを装置に入れて。」


留音(るね)「わかった。我ながら恐ろしいが……チョコの甘さのねぎとろを想像しただけでなんだか喉の奥サイドが嫌な感じになってきたけどやるぜ……なんたってチョコを作ってる美少女なんだからな」


衣玖(いく)「ご苦労さま。まぐろのたたきは内部を構成する設定にした。続いて外の質感ね。外は少し硬いのに中がとろけるようにやわらかいというのはトリュフチョコの求めるところ。だから外壁部分にはこのおでんしたしたになった昆布がちょうどいい」


留音(るね)「だ、大丈夫なのか衣玖(いく)……しっかりしょっぱいのが染み込んだ昆布だぞ……出来たときに湿ってるトリュフチョコになるんじゃ」


衣玖(いく)「大丈夫。引き継がれるのは食感だけよ」


留音(るね)「じゃあ投入っと……で、次は色味か。黒っぽい茶色っぽい感じだよな……」


衣玖(いく)「それなんだけど、相談があるのよ。バレンタインのチョコ、ピンクだったら可愛いと思わない? そういう調整も出来るんだけど」


留音(るね)「おっ、いいね。じゃあピンクにしよう、美少女ポイント上昇待ったなしだな、それは」


衣玖(いく)「うん決定。じゃあ次は味ね」


留音(るね)「えっ、なんか入れないのか?」


衣玖(いく)「もういれてるじゃない。まぐろのたたきは綺麗なピンク色をしているわ」


留音(るね)「そうか。あたしたちのトリュフチョコには魚介類のエッセンスが二度使われるんだな」


衣玖(いく)「で、味……ここが一番むずかしい。旨味の部分ではもうまぐろのたたきがいい味出していると思うのよ」


留音(るね)「三度使われていたか。トリュフチョコを語る上でまぐろをいい味とは表現しないと思うけどな」


衣玖(いく)「あとは甘みね。最も甘みがあるのは果糖と言われている。だからコクもあるフルクトースをふんだんに入れるのが良いと思う。チョコの甘みに近づけるまで果物のエキスを入れまくるわよ」


留音(るね)「よし、あたしの出番か。その辺の果物こっちにやってくれ、片っ端から潰してエキスを投入するから」


 こうして二人は協力して作業を行い、最後に装置のスイッチオン。見た目はほぼ完璧な、ピンク色の可愛いトリュフチョコが誕生した。


衣玖(いく)「出来たわね……うん、形も香りも完璧にトリュフチョコね。味見してみましょうルー」


留音(るね)「お、おう……なんか喉と鼻の奥が生臭さを警戒してるんだが……」


衣玖(いく)「大丈夫。そういうのは完璧に消してあるわ。……あ、美味しい」


留音(るね)「ホントだ……なぁ衣玖(いく)、これであたしたちもバレンタインチョコつくっちゃう系美少女としてポイント上がったよな?」


衣玖(いく)「そうね。バレンタインが楽しみ」


留音(るね)「……上がってるよな……?」


――――――――――


西香(さいか)がチョコを用意する?


西香(さいか)「(うーんむむ……チョコ……皆さん交換するとおっしゃってましたし、でも交換するためには手元になくてはなりませんわ……)」


西香(さいか)「(どうしましょう……あっ、真凛(まりん)さんのガトーショコラ。大きいの作ってましたわね。あれをもらったらそれを更に三等分して皆さんに渡すのがいいでしょうか。でもそうなるとどちらにせよあの子のために何かチョコを用意しなくては……)」


西香(さいか)「……(あ、ファンクラブでチョコデーにしましょうか。わたくしが高級チョコを貢いでもらう日として……でもそれだと味もわからないバカ共に高級チョコを食べさせる羽目になってしまいます。あの子にはそれでもいいかもしれませんが……)」


西香(さいか)「(そうですわ、高級チョコはあの子と食べて、わたくしは駄菓子屋で5円チョコを買っていけばいいじゃありませんか。おバカ共にはそんなので十分ですわね)」


 明後日はバレンタインデー。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回は衣玖ちゃん・留音ちゃんコンビですね。 何が出来上がったのだか。
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