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2020年2月11日 わたくし記念の日

2020年2月11日


西香(さいか)「こほん、皆さん?」


 機を見て立ち上がり、皆を見回して言った西香(さいか)の言葉にいち早く反応したのは留音(るね)だった。


留音(るね)「はぁ~~……」


衣玖(いく)「……」


真凛(まりん)「あっ、そういえば買い物が……」


 特大のため息で対応した後、衣玖(いく)は視線をすこし西香(さいか)と違う方向に反らし、真凛(まりん)は立ち上がってそこを離れようとする。西香(さいか)の言葉を聞こうとしたのはあの子くらいのものである。


西香(さいか)「ちょっと? なんですのその感じ。一言投げかけただけなんですけど?」


留音(るね)「だってさ……」


衣玖(いく)「前例がないから」


西香(さいか)「前例? わたくしがこうして日めくりを始めることはよくあることではありませんか」


真凛(まりん)「全部ろくでもないってことですよぉ……」


西香(さいか)「まぁ失敬な。そんなことが一度でもありますか。そもそもですね、今日はわたくしを記念した日ですわよ? そのわたくしにその態度はないのではないですか?」


留音(るね)「お前の記念日~? それらしき日なんてあったか……?」


衣玖(いく)「多分だけどね、何であれ『ほらろくでもない』って言うことになると思う」


西香(さいか)「皆さん、今日が何の日かご存知でない? 今日は建国記念の日ですわ」


衣玖(いく)「ほらろくでもない」


西香(さいか)「いいですか、記念日ではありませんわよ。記念の日です。これが意味するところをご存知?」


留音(るね)「おんなじじゃねーの?」


西香(さいか)「わたくしもよくわかりません。なんでも確かな建国の日がわからないので、一応記念する日を設けた、みたいな感じだったような……よくわかりません。でもですね! そんな感じなのです、記念の日というのは! つまりよくわからないけどお祝いしたいということにつける日ってことですわ」


衣玖(いく)「ほらろくでもない」


西香(さいか)「ですから! わたくし今日はわたくし記念の日にしたんですの! とりあえず記念する日を設けられる制度にはわたくし、目からウロコというヤツですわ。今日はもちろんですが、明日も明後日もわたくし記念の日を設けることにしましょう! ねっ?」


衣玖(いく)「ほらとんでもなくろくでもない」


真凛(まりん)「でも西香(さいか)さん、今日の建国記念の日って、日本のお誕生日のお祝いってことですよね? 今日の記念日を決めた方が日本のお誕生日を知らないのは仕方がないですけど、西香(さいか)さんの誕生日はみんなわかってるじゃないですかぁ」


留音(るね)「確かに。わかんないなら記念の日に出来るかもしれないけど……いや出来ねぇよ」


西香(さいか)「でもわたくし、誕生日ありませんから。記念の日の条件にはあってると思うのです」


留音(るね)「いやつい先日じゃねーか。1月30日、お祝いしただろー」


西香(さいか)「あれをお祝いしたと言い張る神経にはため息が出てしまいますわ。はぁ~。でもですね、これはわたくしたちのような美少女には一生ついて回る問題です。果たして、誕生日が来ても年を取らないわたくしたちに、誕生日が来たと言えるのでしょうか?」


衣玖(いく)「ほらろ……ぇん?」


西香(さいか)「誕生日は確かに来ますわ。でもこのまま仮に数年、毎年誕生日のお話をやるとしましょう。ですがその末にわたくしたちは年を取るのでしょうか。数多くの作品で、年月が過ぎる描写があるにも関わらず登場人物が歳を重ねないのは常識のように蔓延しています。ではわたくしたちは?」


留音(るね)「お、おい……」


西香(さいか)「仮に聖美(きよみ)さんの誕生日が来て、現在17歳と言っている聖美(きよみ)さんが18歳になるでしょうか? わたくしはならないと思います。なぜなら美少女だから。そう、わたくしたちにとって誕生日とはそれこそただの記念日に過ぎないのではないでしょうか。制定されている、そして知っている人だけが少し考える……それだけのもの」


真凛(まりん)「も~何を言ってるんですかぁ……」


西香(さいか)「わたくしはね、皆さん。それについて『誕生日が来た』とはどうにも思えないのですよ。つまりわたくしたちに来たのは誕生日ではなく訪れたのは誕生記念の日なのではないでしょうか。これはそのまま日本という国のありかたにも繋がります! そう、わたくしは国と同じく『記念の日』を持つのです! 実質わたくしが国とも言えますわ!」


衣玖(いく)西香(さいか)はたまに自分がちやほやされたすぎて全く意味がわからない謎の発言をして、よくわからない揺さぶり方をしてくるわね……ちょっと面白くなってくる……!」


西香(さいか)「どうですか皆さん!! 衣玖(いく)さんをも黙らせる納得行く根拠を提示しました!! この日本が記念される日、それはそのままわたくしにも対応しているのです! ですから今日はわたくし記念の日ですわ!! さぁ! わたくしをお祝いしなさい!!」


留音(るね)「……難しく考える必要はないぞ、衣玖(いく)。こんなのな、一言で済むんだ」


真凛(まりん)「そうですよ。小難しいこと言ってますけど……」


西香(さいか)「さぁ! わたくしをお祝いし……」


留音(るね)「い・や・だ!」


西香(さいか)「もー! なんでですのぉー!」


―――――――――


スーパーショート今日の日めくり


西香(さいか)「(ふふふ、今日はわたくし記念の日にしますわよ)こほん。皆さん?」


留音(るね)「い・や・だ!」


西香(さいか)「もー! なんでですのぉー!」


 記念の日ってすごく便利。

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― 新着の感想 ―
[一言] 凄い。西香ちゃん凄い。 大物です。
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