2020年2月8日 スティックマスターの日
2020年2月8日
留音「なぁあんたは楽しいと思わないかい? 日々誰かに決められた記念日の中に、こうして達人同士が競い合う機会が生まれるなんて……」
留音は何者かと対峙している。その相手は真っ赤な鬼の面のような顔立ちをしており、留音を前に両先端が赤く光る長い棒の中心を持ち、独特構えを取りながらそれをくるくると回して牽制していた。
留音「本当にいい音するよな、そのセーバー……回す度に聞こえてくるそのブォンって音……滾るぜ……」
ジリジリと距離を測る留音。暗く、戦うにはやや狭い空間は二人に逃げ場を与えない。
そんな場所の外から二人を見守る衣玖が声をかけた。
衣玖「ねぇルー……一応確認なんだけど、どうして突然その人と戦いたくなったの? ……まぁ、前にもこんな事あったから想像はつくんだけど……」
留音「そりゃあ今日がスティックマスターの日だからに決まってるだろ。最高の棒術使いと言ったらまずこのモールさんに、悟空だろ。光るセーバーと伸びる棒、どっちとやるのも楽しみだったんだ……!」
というわけで、今日もかつての『ボクシング・デー』同様、勘違いしまくりの留音がスティックマスターとの戦いのため、衣玖の架空人物召喚装置を借りて勝負の真っ最中である。当然レギュレーションは棒対棒だ。
留音「しかしイカしてるよな……カンフーマスターの日もニンジャマスターの日も無いのに、どうして突然スティックマスターの日は制定されているのか……それはやっぱりあんたの存在感があると思うんだ。敵ながら戦闘シーンかっこよすぎるからな……!」
留音は懐に飛び込む。手にはある得物をくるくると回しながら。ちなみに得物とは綿棒である。耳の穴かっぽじる時に使うあれだ。
衣玖「棒術対決がしたいって言ってたけど……」
留音「以前の戦いでわかっただろ? 同じルールの中で戦うとあたしの圧勝だ。モールさんには悪いが、大ハンデとしてあたしは綿棒で戦う……一度撫でられたら終わりの光るセーバーをかいくぐり、この綿棒で達人を倒すッ!」
モールさんに向かって綿棒五月雨突きを放った。綿棒の柔らかいコットンから伝わる衝撃によってモールさんの体は吹き飛ばされる。留音の攻撃に綿棒自体が耐えられず、既に折れてしまっていた。
しかしその折れた綿棒を人差し指と親指でちょこんとつかみ、それを相手に突きつけて戦う。
留音「オラオラァ!! 綿棒重連撃!!」
衣玖「それはもう素手と同じなんじゃないの?」
留音「棒術ってのは棒状のモノで戦えばもう棒術なんだよ! それがたとえ折れた綿棒でもな!」
モールさんの鮮やかな回転攻撃をかいくぐり、留音は綿棒でも圧勝する。それは次に戦った悟空相手でも同じ事。如意棒がいくら長かろうが、懐に入ってしまえば留音の綿棒の敵ではなかった。
留音「やはり圧勝してしまったか……スティックマスターの日も制してしまったわけだけどさ……なぁ衣玖、棒術ってこんなにかっこいいのに、なんで達人があんまり描かれないんだろうな」
流した良い汗を拭きながら、留音はドリンク片手にベンチに座ってそう言った。
衣玖「確かにそうよね、二番手三番手以降のキャラの武器ってイメージかも」
留音「真ん中を持てば変幻自在の連撃、端っこを持てば薙刀みたいに振り回して広い範囲を攻撃出来るだろ。それになんたって基本的には非殺傷ってのも主人公にあってると思うんだよ。このスティックマスターの日を盛り上げて、少しでも棒術の達人が現れてほしいよな」
衣玖「……あのねルー、ここまで引き伸ばしておいて言うのもアレなんだけど……スティックマスターの日っていうのは……」
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ミニーズ、お出かけ中
聖美「あのおばあさん、階段上るのかな……」
聖美が杖をついたおばあさんを見ながら言った。足取りが細かく、ついた杖を頼りに少しずつ進んでいるという感じである。
アンジー「ん、んー、ちょっと怖いね。手伝ってあげよっか」
イリス「任せて。『浮遊魔法』! ……浮かすほどじゃないけど、体は軽くなったはずよ」
聖美「すごーい! おばあさん、肩貸しますね!」
アンジー「ほら、ボクにも掴まってください」
イリス「へぇ、良い杖ね。あたしが持っておこうか?」
おばあさん「あらあら、お嬢さん達親切にどうも……」
今日は歩行に使う杖の知識をより多くの人が知ることで、介護や健康に役立てるきっかけにする日なんだそうだ。




