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2020年2月7日 ニキビに悩まないデー

2020年2月7日


聖美(きよみ)「あ、またニキビ出来ちゃった……」


 鏡を見ながら年頃の聖美(きよみ)は表情を曇らせていた。


聖美(きよみ)「うーん、こんなときは美少女クリニックだよね!」


 そうして足を運んだ美少女クリニック。ここはニキビの根本的な治療をしてくれると評判の店だ。


聖美(きよみ)「すいません、私ニキビで悩んでて……」


 受付の子はニッコリ微笑んで、聖美(きよみ)をある先生のところへ案内した。


留音(るね)先生「なるほど、ニキビね。ちゃんと夜は眠れてる? 睡眠不足が原因だったりするからね」


聖美(きよみ)「あ、うーん……まぁ……毎日楽しいことがあるから夜ふかししちゃって……」


留音(るね)先生「あーそうなんだ。ちなみに毎日平均で何時間くらい寝てるんだ?」


聖美(きよみ)「えっと、4時間か5時間」


留音(るね)先生「ダニィ!? こんなところに来てる場合じゃない! もっと寝ろ! それで治んなかったらまた来な! 喰らえ発勁!!」


 留音(るね)先生の処方は完璧だ。一瞬で聖美(きよみ)の背後に回り込み、背中をととんとついて意識を落とした。こうした患者のためを思ってされる技術はこのクリニックのサービスの一つである。


留音(るね)先生「お前はもう、10時に寝る」


 留音(るね)先生は聖美(きよみ)の秘孔を突き、夜の10時からしっかり7時間は眠る体に改良したのだ。


 そうした留音(るね)先生の努力のおかげで、聖美(きよみ)のニキビは完治したかに思えた。しかしまたニキビが生まれてしまったのだ。


 そのためもう一度クリニックを訪ねた聖美(きよみ)。今度は別の先生に紹介された。


西香(さいか)先生「なるほど……そうなると、ホルモンバランスの乱れ、という可能性もありますわね。わかりました。では患者さん、こちらへどうぞ」


 西香(さいか)先生は聖美(きよみ)を奥の部屋につれていく。オペ室などを通り過ぎて、聖美(きよみ)は少し不安に感じたが、大きな扉を開けた先には……。


『わーーーーー!! L・O・V・E・西香(さいか)サマー!』


 ひび割れんばかりの野太い大歓声があがった。


聖美(きよみ)「あ、あのこれは……」


西香(さいか)先生「いいですか、ホルモンとは女性ホルモンとかそういうやつの事ですわ、多分。でしたらこうして男たちを魅了する事でその女性ホルモンのパワーを加速させるのです。そうすればホルモンバランスの乱れという感じはなくなるでしょう?」


聖美(きよみ)「え……? よくわからないですけど……」


西香(さいか)先生「さぁ聖美(きよみ)さん! ここにいるわたくしのファンを魅了しなさいな! 女性ホルモンを加速させるのです!」


聖美(きよみ)「……」


 状況に疑問を思った聖美(きよみ)。だがそれでニキビが治るなら……聖美(きよみ)は自分の武器を考えた時やはりこれしかないと思った。


 そう、特大の変顔である。顎が下方一メートルまで落ちるような、そして更に目玉は飛び出し、ベロは階段を作る。アニメのような変顔を作る能力。


西香(さいか)先生「ぶっふ!! いやなんでですの!?」


 もうこの能力は封印しても十分キャラが濃いのではないか。そんな疑問も吹き飛ばすような清々しいまでの変顔に会場も笑いに包まれた。聖美(きよみ)は満足そうだ。


聖美(きよみ)「先生、ありがとうございました。なんだか気持ちが落ち着きました!」


西香(さいか)先生「あっ、そうですか? わっかんないですわねぇ最近のJKは……」


 まぁ診療費が貰えればいいのですが……と送り出す西香(さいか)は会場の西香(さいか)コールに応えるでもなく扉を締めて自室に戻っていった。


 しかしニキビというのはしつこいものである。一個治してもまた一個と出来てしまう。長い戦いになるものなのだ。聖美(きよみ)は再び美少女クリニックへと足を運んだ。


聖美(きよみ)「あのぅ、またニキビが出来ちゃって……」


 受付のニキビ一つすら出来たことがなさそうな天使の肌を持つその子は聖美(きよみ)に「ちょうどよかった、今すごい先生が来てるんだ」というような事を言って、新しい先生のところに案内した。


真凛(まりん)先生「あっ、こんにちは~^^ 患者さんですね? 今日はどうしましたかぁ☆」


聖美(きよみ)「実はニキビがなかなか治らなくて……」


 ニコニコしていてふわふわで可愛い先生だ。聖美(きよみ)はこのひとがすごい先生なの? と少し疑問混じりに対面する。


真凛(まりん)先生「うんうん、そうですよねぇ。お悩み多そうな年頃ですしねぇ……ニキビの原因はね、最初こそ清潔が大事なんですけど、大人になってくるとストレスだったりするんですっ。聖美(きよみ)さんくらいの年齢くらいからはそういうのが原因で出来るんだよ~」


聖美(きよみ)「はぇ~……」


 やっぱり専門家なんだなと聖美(きよみ)は関心している。この先生はどういう治療をしてくれるんだろう。


真凛(まりん)先生「じゃあ聖美(きよみ)さん、よかったら最近悩んでる事があるんじゃないかな? よかったら聞いてあげるから、ちょっとお話してみましょうかぁ☆」


 そうして引き出されるままに、聖美(きよみ)は最近の悩みを話した。例えば学校が大変だとか、男の子に手紙をもらっただとか、活動しているミニーズの活躍がもっと欲しいとか、変顔を自分の特技にこのまましておくのが正しいのかなど、そんな事を。


真凛(まりん)先生「うんうん、わかりますよぉ。やっぱりそうですねっ、聖美(きよみ)さんのそのしつこいニキビの原因はストレス! ストレスですよぉ☆ 根本治療しましょう~!」


聖美(きよみ)「根本治療っていうと……?」


真凛(まりん)先生「ストレスを無くすんですよぉ☆ ストレスを生むものを全部無くすと人はのびのび生活出来るようになりますから! だからこう! えーい!」


 地球崩壊の兆し。このままストレスの源である人間が消えることで人同士の悩みがなくなり、ニキビを作る根本は根絶されるだろう。しかしそれではニキビの概念そのものが消え去ってしまう。今日という記念日ベースで考えたときに、それでは本末転倒なのだ。


衣玖(いく)先生「待って真凛(まりん)先生!!」


真凛(まりん)先生「あっ、衣玖(いく)先生☆」


衣玖(いく)先生「真凛(まりん)先生、その方法だと今日の『ニキビに悩まないデー』が消えてしまう。あくまで悩む前提と、その解決が提示される日じゃないと。人間が消えてしまったら『人はニキビに悩んでいた』という歴史も消えてしまうわ」


聖美(きよみ)「(残すほど価値があるのかな……?)」


衣玖(いく)先生「人間が存在し、なおかつ人の歴史が残る方法で解決する方法を開発したの! これを試してからにして!」


真凛(まりん)先生「うーむむ、衣玖(いく)先生の全自動食器洗い機には感銘を受けましたからね……わかりました。どうぞ」


衣玖(いく)先生「ありがとう。さぁ人類よ! これでもうニキビに悩まない!!」


 衣玖(いく)先生はボタンをポチッと押すと、世界各国で暗い緑の粉末が散布され始めた。


真凛(まりん)先生「あの、これは?」


衣玖(いく)先生「皮膚が腐り落ち、人は腐臭を漂わせて歩き回ることになる。そう、ゾンビ化薬よ。これでもうニキビの悩みとはおさらば。みんなの顔は肌荒れを超えるし、そもそもそんな事を考える脳もなくなる」


真凛(まりん)先生「わーすごいですー! ストレスの根本治療にもなってるんですね!」


衣玖(いく)先生「まぁね。ゾンビ化というのは人間の歴史が起こすことっていうのもポイントよ、ニキビに悩んだ末にこうなったという歴史にも記せるし、いいでしょ?」


聖美(きよみ)「ゔぁー……」


 皆の悩みは五人少女におまかせ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 留音ちゃん、さすが。西香ちゃん、面白い。真凛ちゃん、それはダメ。そいて、衣玖ちゃん・・・
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