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2020年2月4日 西の日

2020年2月4日


 ひらひらパジャマを着ている西香(さいか)がリビングに現れる。


西香(さいか)「ふぁあ……おはようございます……」


 まだ目が覚めていないのか、目元をぐしぐしと擦ってあくびの涙を拭いながらソファに倒れ込んだ。


あの子「おはよう西香(さいか)ちゃん、よく眠れた?」


真凛(まりん)「もー、西香(さいか)さんったらお寝坊さんなんですからぁ。みんな西香(さいか)さんが起きてくるのを待っていたんですからねぇっ」


留音(るね)「そうだぞ西香(さいか)。まったく、お前がこの家の中心なんだって認識を持ってほしいよな」


西香(さいか)「はいはいはいはい、ごめんなさーーい。だってわたくし眠かったんですものーー」


衣玖(いく)「ふふ、反省してなさそうな言い方してるのにホント憎めないわね。そうだ、西香(さいか)、先日発表した論文が今学会でとんでもないことになってるわよ。西香(さいか)に会いたいって教授が続出してる」


西香(さいか)「は……何の話でしたっけ?」


衣玖(いく)「ふふ、忘れてしまってホント憎めないわね。ほら、西香(さいか)が何故こうも素晴らしく接しやすい友達だらけの美少女なのかという論文を200枚の原稿用紙にまとめて提出したじゃない」


留音(るね)「そうだぞ西香(さいか)。まったく、お前のいいところが多すぎてまとめるのが大変だったって認識を持ってほしいよな」


西香(さいか)「そういえばそんな事してましたわね。衣玖(いく)さんったら本当に野暮ったい研究がお好きなこと。そんなのまとめずともわたくしを学会に連れ出してくだされば二秒で証明出来ますのに」


真凛(まりん)「もー、西香(さいか)さんったら朴念仁なんですからぁ。そんな事をしたら西香(さいか)さんのお友達がまた急増して世界のネットワークが大変なことになってしまうじゃないですかぁ」


西香(さいか)「そうでした。あのときは大変でしたわね。まさかインターネットそのものがあそこまで急激に重くなるなんて思いませんでしたわよ。でも無理もありませんわよね。わたくしが出歩いた情報があらゆるSNSに拡散され、わたくしの姿を捉えた写真のいいね数が世界人口を超えてしまうほどの影響を出したのですからね」


留音(るね)「そうだぞ西香(さいか)。お前のためだったら世界の多くの人がスマホとパソコンで超効率的なサブアカウントの作り方を実践してあらゆる手段でお前の写真にいいねしようとする事に認識を持ってほしいよな」


あの子「そこで崩れたネットワークを戻すために衣玖(いく)ちゃんがすごく頑張ってたよね……そのために世界の失業者約3億人を雇ってwsw(ワールド・サイカ・ウェブ)を設立してしまうんだもん」


西香(さいか)「でもそのおかげでわたくしの課金もスムーズになりましたわ。でもwswは扱いづらいんですのよね。いたるところにわたくしの広告が貼られていて、ついつい見とれてしまって時間を取られてしまいますから。だからわたくしもう使ってませんの」


衣玖(いく)「ふふ、私の頑張りを否定されてもそんな可愛く言われたんじゃホント憎めないわね」


 そしてその時、家に呼び鈴の音が響いた。


あの子「あ、今日も来たみたいだね?」


西香(さいか)「またミニーズの皆さんですわね」


 あの子がトトトっとインターホンで返事をし、玄関に迎えに行く。だが首を傾げて帰ってきた。


西香(さいか)「どうしたんですの?」


 返事をまたず、なぜだかキッチン脇の裏口の扉がノックされ、西香(さいか)は首を傾げながらその扉を面倒くさそうに開けた。


イリス「ぎゃー!!!」


西香(さいか)「なんなんですの? 騒がしいですわね……」


聖美(きよみ)「西から来た! 西から来たぁ!!」


アンジー「西香(さいか)ちゃんはぁはぁ! 西香(さいか)ちゃんかわいいはぁはぁ!」


西香(さいか)「相変わらず意味がわからない三人ですわね」


あの子「あ、きっと今日が西の日だから……西に向かうと幸運になれて、西から来た人と仲良くなれる日なんだって。だから西香(さいか)ちゃんに西方向から迎えられて嬉しかったんだと思う……」


西香(さいか)「はぁ。もう本当にやれやれ仕方ないってな人たちですわ。わたくしの事好きすぎですわよ」


 西香(さいか)は肩をすくめ、フフンと笑いながら髪を艷やかにそよがせた。


真凛(まりん)「もー、西香(さいか)さんったらハーレム系主人公なんですからぁ。そんなの当たり前じゃないですかぁ」


留音(るね)「そうだぞ西香(さいか)、お前が世界の中心であるという認識を持ってほしいよな」


衣玖(いく)「ふふ、そういう高飛車なところもホント憎めないわね」


――――――――――――


衣玖(いく)「はぁはぁ……間に合った……」


 衣玖(いく)は声を殺しながら、眠る西香(さいか)の頭に何かの装置を押し当てながら言った。


留音(るね)「……これで今日一日寝っぱなしなんだな……?」


 脇に立っていた留音(るね)も小声で訊ねる。


衣玖(いく)「良い夢見てるわよ……。それにしても憎たらしいほど良い寝顔ね……」


真凛(まりん)「起きてたら絶対面倒でしたもんねぇ……衣玖(いく)さん流石ですぅ……」


衣玖(いく)「いいのよ、被害被るのは私達だし、なんなの西の日って……」


留音(るね)「北も東も南の日も無いのにな……なんで西だけあるんだろうな……」


真凛(まりん)「もー、西香(さいか)さん並にろくでもないですよぉ……記念日の説明に『仲良くなれる』なんてワードまで使って……」


留音(るね)「安易にそんな説明入れてさ、世の中にはお近づきになっちゃいけないタイプの人もいるって認識を持ってほしいよな……」


西香(さいか)「ぐーすぴー」


あの子「(´・ᴗ・`;)」


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― 新着の感想 ―
[一言] その昔、DPS(ドリーム プログラミング システム)という好きな夢を見られるというエロゲーがありましたが、おやすみいい夢を。
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