表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
217/414

2020年2月3日 鬼はそこ

2020年2月3日


 町中でざわめきが起こっている。その中心には五人の少女たち。とはいえ、うち三人はミニーズである。


イリス「ふふふ、どう? 自分が今どういう状況に置かれているか理解し、そして恐怖しなさい……!」


 不敵に笑うイリス。指には魔法の残滓が漂っている。どうやら魔法を行使した直後であるようだ。


 そしてその魔法を受けたのは他でもない、五人少女のうちの、ここにいた二人。


留音(るね)「……うおっ!? なんじゃこりゃ!? 寒っ!!」


 まるで水着のような格好になった留音(るね)と。


西香(さいか)「なっ……なんでメイド服なんですの!? わたくし仕えられる側ですわよ!?」


 すっかりメイド服をまとった西香(さいか)である。


イリス「今からあんたたちは鬼よ!」


アンジー「いいなーかわいいなー」


聖美(きよみ)「ねー……写真撮っておこ……」


 留音(るね)は虎柄の水着に、髪の色が緑を中心とした虹色に変化している。西香(さいか)は青い髪がぱっつんで、あざとさマックスのミニスカートのメイド服である。その二人を見た待ち行く人々が感嘆の声をあげているのである。


イリス「聖美(きよみ)もアンジーも憧れては駄目よ。あいつらには今属性『鬼』を付与(エンチャント)したの。……くっくっく、怯えるがいい……今日は一日、日本中から蔑まれ、豆を投げつけられることになるのよ……さぁ家にも帰れないでしょう! なんたって鬼は外なんだから!」


 つまるところ、留音(るね)西香(さいか)は鬼化したのである。彼女たちに最も適した形での鬼属性の付与は単に角を生やすだけではなかった。日本的な意味での鬼はこんな感じなのである。


イリス「さぁ民衆たち! こいつらに存分に豆をぶつけるが良いわ!」


 イリスの号令に合わせ、主に男性たちがざわめきが強くなる。


「ま、まじっすか……」「いいの? まじでいいの?」「それより自分も写真いいですか」「ラムレムやんけ!」「むしろぶつけてもらいたい」


西香(さいか)「なんだか空気が悪いですわね……」


留音(るね)「ちょっと怖いな……撤退するぞ! (さみ)い!」


 西香(さいか)留音(るね)はダッと駆け出し、その場を離れて家に戻ることにした。


イリス「はーはっは! 今回こそ勝てるわ! 追うわよ聖美(きよみ)! アンジー!」


 炒った大豆を片手に追いかける三人。イリスはオラオラーと豆を投げながら前の二人を追従する。聖美(きよみ)も「今日はそういう日だから!」と豆を投げつけている。アンジーは二人のサポートに豆の袋を開けては二人に適度な量の豆を取って渡している。


 留音(るね)西香(さいか)も豆が当たる度に静電気が走ったような感覚を味わう。どうやら豆に込められた霊力が二人に付与(エンチャント)された鬼属性に反応し、的確にダメージを与えているようだ。


 鬼の二人はなんとか家に辿り着き、滑り込むように玄関へ入って戸をしめた。その様子に顔を見せた衣玖(いく)が驚いていた。


衣玖(いく)「うぅゎっ、二人共なんて格好してんの」


留音(るね)「知らねーよ! いきなりイリスが鬼だとかなんとか……」


西香(さいか)「豆投げてくるんですのよあの人達! なんか痛いですし! 大体これのどこが鬼なんですのぉ!? こんな俗っぽい服着て……」


イリス「おらおらー! さっさと鬼は外ってされなさい! 出てこい留音(るね)ー! 西香(さいか)ー! 負けを認めたら解呪してやるわよ!」


聖美(きよみ)「もしあれだったらうちで迎えるよ―!?」


 家の外からそんな声が聞こえてくる。


衣玖(いく)「なるほど、イリスの魔法か。しかし私は『鬼は内』もアリ派なのよね」


留音(るね)「そんなことよりうちに大豆って無いかっ?」


衣玖(いく)「あるわよ」


留音(るね)「こんな寒い格好で外走らせやがって……応戦してやる!!」


西香(さいか)「わたくしもやり返さないと気が済みませんわね……」


 留音(るね)は台所から炒った大豆の袋を見つけるのだが、直接持つと静電気が流れるような痛みがあった。


留音(るね)「持てねぇなこれ……衣玖(いく)ー! 大豆的なのなんか無いか!?」


衣玖(いく)「大豆的なの? 納豆とか豆腐?」


 意図を理解しかねる衣玖(いく)がそう言うと、「なるほど!」と留音(るね)は豆腐を一丁取り出した。西香(さいか)は納豆をかき混ぜ始める。


留音(るね)「あんま食材を無駄にすると真凛(まりん)が怒るからな……これで勘弁してやる!」


 留音(るね)は芸人が持つパイのように豆腐を平皿にのせて持ち、西香(さいか)は納豆をしっかり糸が引けるようになったのを確認している。


イリス「出てこないわね……この家は鬼をも受け入れるというの?」


アンジー「あっ、でもあの子がいるから……鬼なんてすぐに浄化しちゃうのかも……」


イリス「くっ、しまった、計算に入れていなかったわ。そうよね、あの子が住む家に鬼なんていないか……」


 そんなところで玄関の扉が開かれた。


留音(るね)「お返しだオラァァァァ!!」


 留音(るね)はイリスに瞬時に近づくと、その顔に豆腐皿を押し付けた。


イリス「ぶへっ!!」


西香(さいか)「これはわたくしの分!!」


 西香(さいか)もスプーンからちょっとずつ納豆をすくい取り、ピッピと眼の前にいる4人に投げつけている。


聖美(きよみ)「うわっ! 納豆! ネバネバしてる!!」


アンジー「あー! やめてよー! やだー! ネバネバー……顔に飛んだぁっ」


 ちょっと色っぽいアンジー。


留音(るね)「ってあたしにも飛んでんだろうが!」


 皿をどけられたイリスの顔は豆腐まみれになっている。「つめった!」と豆腐を拭って今度はそれを留音(るね)に投げつけている。それを避けると今度は西香(さいか)に当たったり、家の壁に付着したり。


 その騒ぎを聞きつけて。


真凛(まりん)「あの……皆さん^^」


留音(るね)「あっ」


西香(さいか)「あっ」


アンジー「あっ」


聖美(きよみ)「あっ」


イリス「何!? お前も食らうかあたしの新しい……」


真凛(まりん)「何やってるんですか? お豆腐? 納豆? えっ、ホントに何やってるんですかぁ?^^^^^」


 真・鬼降臨。この鬼は絶対に撃退出来ないのである。


 鬼は外。でも豆を投げても怒らせるだけかも知れない。話せるならば共存の道を考えるべきだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] はははは、ラムレム! 「うる星やつら」と「Reゼロ」両方知らないと・・・ みなさん知ってるかな? なろうに来る人は知っているか。 そして、最後は真凛ちゃんの管理人さんネタ(^_^;)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ