2020年1月30日 西香ちゃん誕生日
2020年1月30日
西香「おーーーーーーっほっほほほ! 今日はわたくしのお誕生日ーー! みなさ~ん!!! さぁ存分に……」
今日は西香の誕生日である。昨日の日めくりでそんなようなネタが書かれていたが、実は本当にかつて設定していた誕生日とタイミングが偶然合致してしまい、奇跡的タイミングで日めくりとなって展開されることになったのだ。
西香「って……」
というわけで、本当にちょうどよく誕生日を迎えた西香だが。
西香「なんで皆さんいませんのぉーーーー!?」
家にはほとんど誰もいなかった。一応あの子だけはお祝いにケーキを用意して残ってくれていたが、他の面々は全員外に出ている。全員この瞬間の回避のためである。一応真凛も美味しいご飯を用意してくれてはいるのだが、勝手に食べておけ状態だ。
西香「まぁいいですわよ……別にね、ケーキが食べられてプレゼントが貰えれば。そもそも期待なんてしていませんけどね、あの方たちのプレゼントなんて。ふんっ。あなたがいてくれること、それだけが最高のハッピーバースデイの条件ですからね」
あの子「(;´^_^`)」
じゃあ二人で食べましょうと、もそもそ二人でご馳走を食べ始める二人。なんともまぁ寂しいものだが、祝って貰える人がいるだけ幸せなのだ。
しかしそこに、プルルと電話のコール音が響いた。西香がこんな時になんだと少しイラつきながら電話をとった。
西香「はいもしもし。こんな忙しいときに一体どちら様っ?」
聖美『あっ、もしもし西香ちゃんっ? あ、あの、一応今日はおめでとうって……』
電話の向こうでは更に別の声もしている。アンジーが「物好きだよねぇ」とつぶやき、イリスが「熱心なのはいいけど、真似はしないわよね」と聖美の電話についての所感を話していた。
西香「あらあら、おめでとうコールでしたのね。もっと存分にどうぞ。なんならプレゼントを持ってこちらに顔を出してくださいな。ご馳走は出せないのですぐに帰っていただくことになりますが、ミニーズさんからでもお言葉とプレゼントは笑顔でお受け取りしますわよ?」
聖美『あ、うん、一応プレゼントを郵送はしておいたんだけど……多分後で届くと思うから、気に入ってくれるといいなって……えっと、それだけなんだ。お誕生日おめでとう西香ちゃん。これからも頑張ってね』
西香「まぁ……っ。あいつらと違って聖美さんは誰に媚びを売るべきかわかっていますわ。今日はわたくし、お誕生日でちょっとゴキゲンですわ。今ならお友達にしてあげてもよろしいですが」
聖美『う、うーん、それは……今日はおめでとうだけ言おうと思って……』
西香「まぁまぁそうおっしゃらず。そうですわ、お電話の向こうからでもわたくしのお誕生日会に参加なさってください。わたくしがケーキを食べる音を聞いてるだけで、あとは適当に歌でも歌ってくださればいいですわよ。受話器から聞こえるように大きな声で」
聖美『あっ、ごめん、時間があるの! もう切らなきゃ……おめでとう! ばいばーい!』
そこで通話は切られてしまった。受話器から聞こえるツーツーという無機質な音を消すと、西香は再び席についた。
西香「まったく。お祝いの仕方を知らないんでしょうか。わたくしプンプンしちゃいますわよっ」
あの子「(٥ σ .̫ σ)」
それから数分後、また電話が鳴る。
西香「はいもしもし!」
留音『あっ、西香? 今何やってんの?』
西香「何って……あの子と一緒にとおおおおおおおおおおっても美味しいケーキを食べているところですが」
留音『じゃあ丁度いいや。誕生日おめでとう。一応お祝いの電話をしといた』
西香「ありがとうございます……ってなりますか! どうして一緒に住んでる人がわざわざ今日出かけて電話でお祝いなんですのぉ!」
留音『だって……なぁ?』
真凛『はい……なんか面倒くさいなーって……』
西香「ちょーっと! 真凛さんと一緒にいるじゃありませんの! そこはわたくしを連れていって楽しませるところでしょうが!」
衣玖『えっ? 私もいるわよ』
西香「キイイイイイーーー!」
留音『まぁいいじゃん。こうして電話しただけさ』
真凛『そうですよぉ。それにあの子が一緒なんだからいいじゃないですかぁ』
西香「ぐぬぬぬぬ……ちゃんと祝いなさいよぉ!」
衣玖『もう切るわよ。3分経ってしまうし』
西香「はぁっ? 3分? これスマホですわよね?」
真凛『今日は3分間電話の日ですからね~、日めくり的にすぐ切らなきゃいけません☆』
西香「あ? それで聖美さんも……って、人のお誕生日を祝う電話にそのルール適応は無慈悲すぎませんか!?」
衣玖『あっ、もう座れるみたいね。上映前のCMもみたいから早く行きましょ』
留音『じゃあ切るぞー』
西香「みんなで映画行ってるじゃありませんか……わたくしを誘いなさッ!」
ツー。ツー。西香の言葉はまたもその音に遮られた。
西香「もう! 本当に信じられませんわね! あの方たち! でもあなたは本当に優しいですわ。あいつらに誘われたでしょうに、断ってわたくしを選んでくれたんですのね……あーんもう、あなただけがわたくしの心の親友ですわ!」
というところで、今度はピンポーンと呼び鈴が鳴らされる。西香は「もーー!」と邪魔ばかりされることに腹を立てつつ荷物を受け取った。
西香「……なんですのこれ、あっ、変顔さんからのプレゼントかしら」
その時再び電話が鳴る。
西香「……もしもし」
衣玖『あっ、西香? 荷物来るから受け取っといてっていうの忘れてた。中は開けないでね、爆発するわよ。じゃ』
よく見ると西香の手元の荷物は衣玖宛らしいことが伺えた。
西香「もーーーー! わたくしのお誕生日ーーっ!! この子以外もちゃーんと祝いなさいよぉ!!」
日頃の行いである。とはいえ、流石に映画組はちょっとした西香にプレゼントを買って帰ってきた。それを「こんなのもらって嬉しい方います? 誕生日ですわよ? わたくしの日。もっと頑張れませんでした?」なんて言うものだから祝われないのだが、本人は自覚なしだった。
おめでとう西香ちゃん。だが本人の前で祝ったら負けなのだ。それだけは肝に銘じておこう。




