2020年1月24日 ゴールドラッシュデー
2020年1月24日
西香「ねぇねぇぇねぇえええええ!! いいじゃないですかぁ! わたくしがこんなにお願いしてるのにぃいいい!」
聖美の家の前で西香が駄々をこねている。聖美にすがりついて、アンジーにすがりついて、今はイリスにすがりついている。
イリス「やだったらやだって言ってるでしょ!!」
西香「やだって言わないでくださいな! わたくしその言葉ヤダ!」
聖美「西香ちゃん、もう諦めてよ~……」
西香が何を言っているかと思えば、どうやら今日の記念日をやりたくてお願いに来ていたようだ。
西香「諦めるものですか! 諦められるものですか! だってゴールドラッシュデーですわよ!? 今日は奇跡の起こる日です!! なぜ誰もそれがわからないのです!!!」
アンジー「衣玖ちゃんとかに頼んだら~……?」
西香「そんなのもうとっくに頼んでますわよ!! でもぜんっぜん当てになりませんの! うちにいる連中はみぃんな興味ないだの面倒くさいだの忙しいだの! まぁあの子だけは用事があるそうなのでお誘い出来ませんでしたが……ですからこうやってあなた達に協力を仰ぎに来てるんでしょうが!」
イリス「協力を仰ぎにっていうか……」
アンジー「駄々っ子っていうか……」
聖美「近所迷惑だからもうちょっと静かにして欲しいっていうか……」
西香「ねぇぇぇぇぇ! じゃあどうするんですの? 結局行くんですの行かないんですの? よく考えてくださいね。返答次第でわたくしのあなた達への態度が今後変わってきますからね!?」
イリス「行かないわよ、別にどうでもいいし……」
アンジー「西香ちゃんは距離おいて見ているのが一番可愛いから……」
聖美「それに西香ちゃんはもう金塊くらい持ってるんでしょぉ?」
聖美のその言葉に西香は信じられないという表情を作る。
西香「ありますけど……はぁぁぁぁぁぁ。……金の希少価値を考えるとより多くの金を入手しておくべきですわよね? 少し考えたらわかりますわよね? だって世界に総量が決まっている物質ですわよ? それをわたくしが抑えないでどうするんです? そういうところから説明しないと今日という記念日の重要性がわかりませんか???」
西香は本気で呆れて、やれやれと肩をすくめながらそう言った。
イリス「あぁもう鬱陶しい。行かないから。帰んなさい、こっちだって忙しいの!」
西香「鬱陶しいとはなんですか! これまであまりしっかりと絡んだことの無いミニーズさんたちに、せっかくわたくしからこうしてゴールドラッシュデーなんていう、本来ならわたくしが利益を独り占め出来るような日にわざわざ出向いてあなた方の為に絡む機会を作ってあげているのに! そんな態度がありますか!」
アンジー「でも……さっき西香ちゃん、金が取れたら利益は9.1:0.9とか言ってたよね……」
西香「そりゃあわたくしが企画と提案を行ったのですから、わたくしがいなかったら入らなかった儲けをわたくしが一番受け取るのは当然の事でしょう? それにあなた方の事を考えてしっかり3で割れる計算をしてあげたのです。わたくしの善意をちゃんと汲んで返事をしてほしいものですわね」
ちなみに0.3にしなかったのは、その他金鉱石からの金生成、換金などの作業代金も含めているからである。つまり自分は何もする気がないのである。
聖美「でも本当に、多分そう簡単に取れないよ……? カリフォルニアの金鉱山なんて掘り尽くされちゃってるだろうし……」
西香「そこはほら、イリスさんの魔法で人が入ったことのない区画にだって侵入出来ますでしょう? それにワープも出来るそうじゃありませんか。ピューンとカリフォルニアまで飛んでいただいて、パパっと金鉱石を採って帰ってくるだけでいいですから。ね?」
イリス「やーだー。いーかーなーいー」
西香「またそんな事言って……あーもう。じゃあどうしてくれるんですの? このまま金を採れなかった場合はわたくしに日めくり的損害を出したということですわよ。今日のゴールドラッシュデーで金が取れる場所に行かないなんて大馬鹿者にもほどがあります。あなた方は連れて行ってくれる力があるのにそれをしなかった。わたくしへの損害ですわ。損害賠償を請求します。いいんですわね?」
イリス「あーもうわかった。じゃああんただけその鉱山に送るから。それでいいでしょ? そこで思う存分金でもなんでも採ってきなさいよ」
西香は大きなため息とともに首をゆっくり横に振る。
西香「はぁぁぁぁぁ。イリスさん、なんて無責任な事をおっしゃいますか。わたくしのようなか弱い人間を一人鉱山に? あなたね、一歩間違えれば人殺しになりますわよ。わかっているんですの? 鉱山ってなんだか汚そうですし、空気も悪そうですし、崩れたら死んじゃいそうですし、なんか怖いじゃありませんか。そんなところにわたくしを一人で送る? あなたね、いくら日めくりメンバーに入りたいからってそういう風に人を殺してどうにかしようっていうのは好かれませんわよ。例えそれでメンバー入りしたってわたくしが祟って殺害しますわ」
アンジー「じゃあみんなで行こうって言ってるのぉ?」
西香「わたくしは計算がしっかりできますから。最低でもイリスさんはいないと。何かあったときにイリスさんがいれば生き残れますでしょう。それにゴールドがラッシュするくらいですので、運び手がいるなら多いほどいいですわね。ですからアンジーさん、聖美さん、あなた方も誘ってるんですの。わたくしとたくさんお話ができるチャンスですわよ?」
聖美「もうお腹いっぱいになってきたよぉ……」
西香「あっ、そうですわよ聖美さん。あなた日めくりへの熱い情熱を持っているようですわね。ならいいのですか? わたくしに同行することでゴールドラッシュデーという日めくりを完遂することができますわ。どうです? 尊敬するわたくしとお話が出来る。日めくりも出来る。いい事ずくめではありませんか。ねぇ? 行きたいですわよね? 行きたくなってきたでしょう?」
聖美「あー、日めくり……そっかぁ……」
イリス「ちょっと聖美! 考え込んじゃ駄目!!」
アンジー「そうだよ! つけこまれちゃうよ! 適当にあしらって遠くから見てることにしようよっ……!」
聖美「でも日めくり出来るのは魅力的で……でもなぁ……」
聖美は西香をちらっと見て考えた。あんまり西香だけと一緒にいたくはないなぁ、他の五人少女ちゃんがいればなぁ。そんな事をだ。そこでアンジーがパッと閃いたらしい。みんなの顔を寄せさせて、ひそひそ話である提案をすると、みんな頷いてそれに乗った。
イリス「悪いわね西香。そう言えば今日は国を跨ぐような長距離ワープ魔法を使えないんだった。今日は国内だけだわ」
西香「えっ。そんな事あります? 自称すごい魔法使いだったのでは? でも国内だけの距離でも十分ですわ。国内なら1000㎞位の距離は飛べるのでしょう? 多分何十回か繰り返せばカリフォルニアは遠くありませんわよ」
イリス「鬼畜か。そうじゃなくて、国内までのワープにして。今日は調子悪いの」
聖美「あっ、あーっ。だったら私、国内でも金が取れるところ、知ってるー(棒)」
西香「あら。じゃあそこでもいいですわよ」
アンジー「じゃあそこにしよっか。そこでは西香ちゃんの取り分でいいからね。でも西香ちゃんが飽きたら帰ることにしようね」
西香「あらっ、わたくしに好条件。いいですわよ。素晴らしい提案ですわね。もしたくさん採れたら分前とは別にわたくしのポケットマネーからジュースを奢って差し上げますからね。サンジュースってご存知?」
サンの付くジュースは1本50円しないくらいで買えるシリーズである。
ミニーズはそれには全く期待せず、ある場所へ西香を連れて行った。そこは確かに金の取れる場所として形が整っており西香は目を輝かせた。しかし3分後にはもう帰ろうと言い始めることになる。
聖美「本当にもういいの?」
西香「こんなところ二度と来ますか!! なんですの砂金採りって! しかもこんな寒い中に川の中に手を突っ込むなどと……おバカじゃありませんか!?」
イリス「そもそものバカはあんたよ」
西香「金が採れるならおバカにもなりますわよ! でもですね! 埋まっているかわからない、採れたとしても金箔ほどにもならない……そんな事がありますか!」
アンジー「そっかー。でも日めくりも出来たし、ボクたちは満足かな」
西香「はぁ……もういいですわ。ゴールドラッシュデー……今の時代じゃ起こり得ないのでしょうか……いいえ諦めてはいけませんわ……わたくしはいつか必ず世界経済を牛耳るのですから……!」
聖美「たくましいなー」
今日はゴールドラッシュデー。億万長者の始まりは農業開拓者の一人が川沿いで見つけた金の欠片からだったという。世の中どこに何が落ちているのか。夢を見るにはいい日なのかもしれない。