表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/414

2020年1月23日 ワンツースリーの日

2020年1月23日


 今日も今日とて勝負に来たのはミニーズの三人。


イリス「あっ! いた! 勝負よ留音(るね)!! いざ勝負!」


 イリスが先陣をきって進み出て、リビングで集まっている五人少女たちに早速宣戦布告したのだが。


西香(さいか)「おかえりなさいませ、お嬢様」


 なんだか様子が違っているようだ。ひらひらのメイド服、そしてひらひらのホワイトブリムを着用した西香(さいか)がペコリとお辞儀をして出迎えている。


聖美(きよみ)「えっ? あ、どうも……ど、どうしたの西香(さいか)ちゃん……?」


アンジー「(いいよいいよ! 怖いから放っておこっ?)」


 戸惑う聖美(きよみ)の腕を引っ張り、小声で下がるように声をかけるアンジー。


西香(さいか)「見てくださいお嬢様、メイド服を新調したんですの。似合っています?」


聖美(きよみ)「う、うん、すっごく可愛い……」


西香(さいか)「嬉しいですっ。お嬢様のために着て待っていたんですの」


 西香(さいか)から闇を感じない微笑みにぽやぽやした表情で応える聖美(きよみ)


イリス「こんなのいいから。おらおら留音(るね)! ハーフを迎えて早い段階であんたらを倒そうと思って気合入れてきたわよ!」


 イリスはさっきから背中を向けたままの留音(るね)に食って掛かった。するとこれみよがしにため息を付き、イリスに振り返る。


留音(るね)「なんだね君たちは。全く騒々しい。あたしの研究の邪魔をしないでもらえるか」


 留音(るね)はカチャリとツリ目メガネをかけ直すような動作をして見せた。入ったときからおかしいと思っていたが、似合わない白衣を身につけてどこか高慢な雰囲気を感じさせている。


イリス「い、一体なんのつもりよ……? ちょ、ちょっとそこの真凛(まりん)留音(るね)は一体どうなってるの?」


真凛(まりん)「……知らない」


 真凛(まりん)は無表情で冷たくそう言うのみで、いつもの真凛(まりん)の雰囲気は一切感じられない。


聖美(きよみ)「なんかみんなおかしくなってるよね……?」


留音(るね)「まったく。君たちのせいであたしが新たに発見した数式への集中が途切れてしまったじゃないか。次の学会で発表しようと思っていたのに……どうしてくれるんだね?」


 ホワイトボードを前に苛ついたような口調でそう言った留音(るね)。ホワイトボードにはこう書いてあった。


『いちばん気持ちいい掛け算の段は 11の段←確定

 特に11×7=77はすごい。なんか得した気分になる。でも7×11は違う。11の段を義務教育に取り込むことを提唱すべき』


イリス「めちゃくそにバカみたいな事書いてある……」


留音(るね)「失敬な。11の段をバカにするのかね? 今の義務教育では9の段までしかやらないから知らないかもしれないが、11の段はとても素晴らしいぞ。掛けた数字がをそのまま2個並べるだけで答えになるのだ。こんなに簡単で爽快なのにどうして小学校の先生は教えようとしないのだろうか」


アンジー「どうしよう、なんて言って教えたらいいのかわからない」


イリス「バカは放っておきましょう」


西香(さいか)「ねぇところでお嬢様方、お茶の方は何を飲まれますか? 実は良いローズマリーが入ったんですよ。お淹れしますか?」


聖美(きよみ)「あ、あのでも、お金全然持ってきてなくて……」


西香(さいか)「もう、お嬢様ったら何を言っているのですか。わたくしメイドはお嬢様に仕えることが仕事。お金なんていりませんわ」


 その言葉に背中を震わせて鳥肌を立てるイリス。


イリス「この変貌ぶり……でもなんかこいつら弱そうね……今なら制圧出来るかも……?」


 すると部屋の明かりが落ちて、入り口の方にスポットライトが当たった。そこから扉をバーンと両手で開いた衣玖(いく)がサングラスを掛け、シルバーのファサファサがついた昭和時代のスター的な服装で登場した。


衣玖(いく)「ヘーイソウルブラザー! いらっしゃあーフォーイッ!!」


聖美(きよみ)「ああぁっ、ヤダっ!!」


 衣玖(いく)はサンバの音楽を響かせながらマラカスをシャンシャン振って登場した。それに嫌悪感を持った聖美(きよみ)が脊髄反射的に拒否の意思を表している。


衣玖(いく)「ヘイヘーイ! 冷たいねぇミニーーーズ!!(マラカスシャンシャンシャン) いっつもゴキゲンじゃないかーい! それで今日はどうしたんだーい!?(胸に刺してた薔薇ポーイ)」


真凛(まりん)「……あ。捨てないで……」


イリス「あ、あ、あ、あんた……どうしたんだーいはこっちのセリフじゃい! 何があったっての!?」


衣玖(いく)「HAAAAAHAHAHAHAHA! 何が・何が何が何が何がぁ?(人差し指フリフリ) 何があったか聞いてるのっ?(眉毛上下クイクイ) 何があったか……それはそれはそれはねっ?! フッフーーーっ! ひみちゅっちゅっちゅー! あーHAAAHAHA!(マラカスシャンシャン)」


アンジー「ア、ア……っ、なんか見ちゃいけないのを見てる気がする……」


イリス「なんだってこんな……哀れなことに……」


真凛(まりん)「それは……今日が、ワンツー……スリーの、日……だから」


 真凛(まりん)は無表情のまま冷たく、そしてか細い声を三人に届けた。


聖美(きよみ)「あっ、そうだ、ワンツースリーの日……新しいことを始めるきっかけにする日……そっか、きっと五人少女ちゃんたちは新しい事を始めるためにみんなのキャラクター性をチェンジしたんだ……っ」


衣玖(いく)「Oh NOOOOOOOO!! ババレ・バレバレ・バレちゃたネ! ぽぽぽポーウ!! 真凛(まりん)たーん! かんべんかんべんべべんべーん! あーHAHAAAHA!!(マラカスシャンシャカシャン)」


イリス「キャラ性チェンジって……他の3人はともかく、衣玖(いく)、あんたのは崩壊どころじゃないわよ……」


衣玖(いく)「発明しちゃったちゃったちゃったからー! うーらー!!」


西香(さいか)衣玖(いく)お嬢様はですね、発明した装置を目の前で起動したせいで影響をもろ受けしたんですのよね」


衣玖(いく)「だって? だってだってだって~? 天才なんだものー!(シャカシャカシャンシャン)」


聖美(きよみ)「う……半年記念の直後に登場してこれは……」


アンジー「イリスちゃん、元に戻す魔法とか無いの……?」


イリス「そうね……流石に戻してやるか……『混乱解除魔法(アュシラス)!』」


 イリスが手をパーっと横薙ぎに振った。するとひとりひとり、自分が今まで何をしていたかわからないのか、自分や立っている場所の確認をした。


衣玖(いく)「はっ……なんだか悪い夢を見ていた気がする……」


西香(さいか)「あら? なんでわたくし、こんな下々の者が着るような媚び媚びな服を?」


留音(るね)「んん? あたしはこんな難解な数式の前で何をやってんだ……?」


真凛(まりん)「あは、衣玖(いく)さん変な格好だ~」


イリス「あー良かった……」


アンジー「やっぱりこうでなきゃね~……」


聖美(きよみ)「うん……変化は大事だけど、急激な変化は体に悪いよね……見てる方も怖くなっちゃうよぉ……」


 ワンツースリーの日。いきなりジャンプをしても高く飛べないもので、ホップ・ステップも大事なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 毎日更新、本当にお疲れ様でございます。 Twitterを見たら何やら推しの衣玖ちゃんが……っ! と思い飛んできた次第ですが、衣玖ちゃんの変化には驚いてしまいました。 今日は新しい事を始める…
[一言] 最初は五人少女の人格が入れ替わったかと思ったのですよ。 西香ちゃんもインパクトあったけど、やっぱ衣玖ちゃんですね(^_^)
[良い点] 11段は3ケタになっても美しい〜♪ 先日睡眠妨害してしまいごめんなさい! 新しいことは始まりそうでしょうか? 今回はなんの日なのか知らず種明かしを楽しみに読みました! ありがとうござい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ