2020年1月20日 玉の輿の日
2020年1月20日
西香「ねぇ皆さん。皆さんには尊敬する人物っていますの?」
西香は唐突な質問に「もちろんこの子を別として考えてくださいね」と補足する。そう言わないと皆がこの子を指名するだろうから仕方がない。
留音「何だ突然……」
衣玖「私はとりあえずプレスリーかしらね。今日の音楽界、主にロックの系統にある音楽への影響について、元々の影響力を考えればもちろん他にも名前を挙げるべき人はいるけど、ロック第一人者の一人で、そのキングとしてエルヴィ……」
西香「知らない人の話しされても困りますわ。ちなみにわたくしはわたくしですわ。人が最も敬意を払うべき人物は自分ですからね。わたくしはわたくしを一番尊敬しているのです。可愛くて大人気で、そして従者にも優しく振る舞える寛容さを持ったわたくし……」
衣玖「……」
真凛「こんな話よりも今日の日めくりを始めませんかぁ?」
留音「そだな」
西香「ちょっと! わたくしが日めくりをしてる最中ですわ! そんなわたくしにもですね、ただ一人名前を覚えてる方がいるの。会ったこともないのに、それも女性ですわよ! 今日はその人の記念日にもなっているんですの……」
衣玖「今日の記念日でっていうと玉の輿の日ね。お雪という日本のシンデレラなんて呼ばれた人の事?」
西香「言われてしまいましたわね。わたくし、そのお雪さんだけはとっても羨ましいなぁと思ってるんですの……」
真凛「西香さんが憧れてるのかぁ。ろくでもない話なのかなー」
留音「でも日本のシンデレラってのは気になるな。どんな話なんだよ?」
西香「なんでもお雪さん、外国人相手の芸姑さんだったんですけどね、アメリカ人のジョージさんって方が求婚されて、冗談でふっかけたらしいんですの。自分の身請けのお金は8億円ですわと。そうしたらそのお相手さん、本当に超が付くほどの大富豪だったそうなんです。それで本当にお金を積まれて結婚してしまったと……」
留音「へー……本当にただ普通にすごい玉の輿だな……」
真凛「幸せになれたのかなぁー」
衣玖「どうかしらね。その人波乱の人生で……」
衣玖が説明をしようとしたところを、西香が机を叩きながら立ち上がり、遮って言う。
西香「幸せになれたに決まってるでしょう!! この話にはまだ続きがあるんですの。なんとですね、そのジョージさん、たった10年でお亡くなってるんですのよ!!」
留音「うわ……」
留音の声は可哀想なジョージさん、という気持ちと、やっぱりロクでもねぇなこいつ、という気持ちが混じり合っている声である。
西香「遺産相続、お雪さんに60万ドルおりたそうですわよ!? 当時の60万ドルって今の円相場でおいくら!? 兆にも届くんじゃありませんの!? お雪さんはその後……なんと翌年にはまた新しい恋人を作ってるんですの! その人も10年ちょっとで死ぬ!!」
バンバン! と机を叩いて興奮する西香。
真凛「遺産の話で盛り上がらないでくださいよぉ」
少しずつクールダウンして再び席につく西香は声のトーンを落としながら、自分はお雪になれないことを知りつつこんな事を言った。
西香「なんという人生……お金に愛されし人生の第一人者としてですね、わたくしはお雪さんという方を妬み、尊敬しているのです……死んだ後にもこうして記念日となってしまっていますし、歴史にまで名を残して……あぁっ、わたくしも第二のお雪になりたい……」
留音「本当にろくでもない尊敬の仕方だな」
西香「ちなみにお雪さん、8億積まれた当時は恋人がいたんですのよ。ジョージはそこから買い取ったんですの。あぁっ……やっぱり愛は幻、お金こそ真実……わたくしお金になりたい……」
真凛「価値なさそうですね☆」
衣玖「無機物になりたいならいつでも協力するわよ」
留音「すげーなー。でもあたしはやっぱ好きになった人と結婚したいかなぁ」
もちろん王子様でもいいんだけど。と夢見がちな留音だった。
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ミニーズの玉の輿の日
イリス「あら、伝書梟だわ」
魔法界からの便りは動物を介して届く事が多い。聖美やアンジーは最初こそ驚いていたが、今では普通に受け入れている。
アンジー「手紙にしては大きいね? なんて来たの?」
イリス「……む、また見合い話みたい。写真が入ってるわ。パパもママもいちいち送ってこなくていいのに……あたしには早すぎると思わない?」
聖美「わぁ、でもお見合い話なんてすごいね、どんな人?」
イリス「……魔法銀行のエリートみたい。えっと……『そっちで遊んでるのもいいけどこっちで恋人を……』はぁ。パパったら余計なお世話よ。だいたい遊んでるなんて心外ね、本気の勝負に来てるのに」
アンジー「きっと心配してるんだよ。……わーっ、かっこいい人だねー!」
イリス「そう? でもあたし、まだ誰かと結婚するつもりなんて無いし。パパに返事はいつものように返して、って返事を書いとこっと」
聖美「いつものようにって?」
イリス「あぁ、ただごめんなさいと断るだけじゃ芸がないかなと思ってね。あたしと結婚したいならルネリアスドラゴンの爪、イクルッサマンモスの牙、大魔道士マーリンの毛髪、紫サイカソウの種と、あたしが惚れてしまうような、限りない愛を持ってきなさいと返事をしているの」
アンジー「なんか魔法界っぽいワードだけど……かぐや姫かな?」
聖美「で、でも断るならちゃんと断ったほうがいいよ! 世の中には嘘だと思うことを本気でやって、本当に結婚にこぎつける人だっているんだから……今日の記念日見てよ、冗談で言ったお金を本当に用意して結婚した人がいるんだよ……?」
イリス「あぁ、大丈夫大丈夫。ありえないことなのよ。ルネリアスドラゴンは魔法界最強の生物とされてて、歴代の最強の魔法使いが束になっても勝てないと言われるほどよ。あたしでも難しいでしょうね。それこそ最強の一歩上を行くような規格外の強さを持っていないと駄目。それにイクルッサマンモスなんて5千年前に滅んでるから時間でも遡れないと入手できないし、大魔道士マーリンはオルバ界面……こっちで言う宇宙に出てしまったから絶対見つけられないと言われてるし、紫サイカソウは人の心を持っていると形すら見えないとされてるの。そして最終的に決めるのはあたしの好みってオチだしね。つまりね、これはちょっとおちゃめな断り文句ってわけよ」
聖美「そ、そっかぁ。それなら安心だね……突然イリスちゃんが結婚するからいなくなる、なんてやだよ?」
イリス「ならないわよ。ここであなた達と天下をとるまではね」
アンジー「……(あれ? 集められる人達いるんじゃない……?)」




